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8.ショタがエサやりに来てくれました
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瞼を開いた瞬間、出勤時間が頭をよぎるのは最早社畜の悲しい性である。
のろのろと目を開け、緩慢に瞬きを繰り返す。あれ、今何時だっけとぼんやり考えて、次の瞬間とび起きた。
「わーっ遅刻!!」
「うわ?!」
「うえっ?!」
他人の驚く声にこちらまでビビッて大声をあげてしまう。
ギャグ漫画よろしくのけぞって叫んで、ようやく目が覚めてくる。あれ、この薔薇の香り。見渡す限り緑。ここは……おショタ様の庭? いつの間にか眠っていたらしい。と言うか夢じゃなかったのか?
しかし、夢でない証拠に、おショタ様――ファーヴァルトがいる。のけぞりすぎて草の上にころんと転がってしまったらしく、「びっくりしたぁ」とぱちぱち瞬きしながら身を起こして、目が合うと照れくさそうにはにかんだ。何この子可愛いオブ可愛い。
ショタの可愛さを前に、俺は思考を放棄した。
「えーと、ごめん寝ぼけて……また会えて嬉しい」
へへ、とこちらも笑って誤魔化すと、彼はレモンを食べた時のように口元をぎゅっと硬くした。
「……すぐに来られなくてごめん、ヒナギ」
「え? そうじゃなくて……ん? そう言えば、忘れ物でもしたの?」
ぎゅむ、と口元がもっと硬くなる。小さい子は変顔してても可愛い。
「……ヒナギ。わたしたちがあってから、もう一日がたってるぞ」
「へ?」
……そう言えば、王子様然としたフリフリの服は前に会った時と微妙に違う。天気は変わらず快晴だし、ロケーション的に大きな変化がないから気付かなかった。
と言うことは……別れてから丸一日ちかく寝こけていたってことか? うっわ……。
やっと迎えた休日、金曜の夜に意識を失ったと思ったら目覚めた時には日曜の昼だったことを思い出した。悲しい。
「たくさんねるのはいいことだってばあやが言っていたぞ」
「あーそうですね、はは……」
心優しい少年よ、フォローありがとう。寝る子は育つって範疇はとっくに超えてるんですけどね!
「きょうはヒナギにごはんをもってきたのだ」
「えっ!」
ごそごそと懐を探ったショタが、大切そうに紙包みを差し出してくる。この光景、デジャブである。
包みを開くと、今度はチョコチップクッキーではなく、サンドイッチが入っていた。薄切りのパンに葉物とハムを挟んだシンプルなものだ。
「あんまりもってこられなくてごめん……」
「ううん、じゅうぶんですよ。ありがとう」
つい手を伸ばして頭を撫でると、くすぐったそうにえへへ、と笑う。量とかよりその心遣いが嬉しい。
それにしても……。
ひとつの疑念が俺の胸中をよぎる。
――俺、もしかして飼われてるんじゃね?
のろのろと目を開け、緩慢に瞬きを繰り返す。あれ、今何時だっけとぼんやり考えて、次の瞬間とび起きた。
「わーっ遅刻!!」
「うわ?!」
「うえっ?!」
他人の驚く声にこちらまでビビッて大声をあげてしまう。
ギャグ漫画よろしくのけぞって叫んで、ようやく目が覚めてくる。あれ、この薔薇の香り。見渡す限り緑。ここは……おショタ様の庭? いつの間にか眠っていたらしい。と言うか夢じゃなかったのか?
しかし、夢でない証拠に、おショタ様――ファーヴァルトがいる。のけぞりすぎて草の上にころんと転がってしまったらしく、「びっくりしたぁ」とぱちぱち瞬きしながら身を起こして、目が合うと照れくさそうにはにかんだ。何この子可愛いオブ可愛い。
ショタの可愛さを前に、俺は思考を放棄した。
「えーと、ごめん寝ぼけて……また会えて嬉しい」
へへ、とこちらも笑って誤魔化すと、彼はレモンを食べた時のように口元をぎゅっと硬くした。
「……すぐに来られなくてごめん、ヒナギ」
「え? そうじゃなくて……ん? そう言えば、忘れ物でもしたの?」
ぎゅむ、と口元がもっと硬くなる。小さい子は変顔してても可愛い。
「……ヒナギ。わたしたちがあってから、もう一日がたってるぞ」
「へ?」
……そう言えば、王子様然としたフリフリの服は前に会った時と微妙に違う。天気は変わらず快晴だし、ロケーション的に大きな変化がないから気付かなかった。
と言うことは……別れてから丸一日ちかく寝こけていたってことか? うっわ……。
やっと迎えた休日、金曜の夜に意識を失ったと思ったら目覚めた時には日曜の昼だったことを思い出した。悲しい。
「たくさんねるのはいいことだってばあやが言っていたぞ」
「あーそうですね、はは……」
心優しい少年よ、フォローありがとう。寝る子は育つって範疇はとっくに超えてるんですけどね!
「きょうはヒナギにごはんをもってきたのだ」
「えっ!」
ごそごそと懐を探ったショタが、大切そうに紙包みを差し出してくる。この光景、デジャブである。
包みを開くと、今度はチョコチップクッキーではなく、サンドイッチが入っていた。薄切りのパンに葉物とハムを挟んだシンプルなものだ。
「あんまりもってこられなくてごめん……」
「ううん、じゅうぶんですよ。ありがとう」
つい手を伸ばして頭を撫でると、くすぐったそうにえへへ、と笑う。量とかよりその心遣いが嬉しい。
それにしても……。
ひとつの疑念が俺の胸中をよぎる。
――俺、もしかして飼われてるんじゃね?
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