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第四章~④
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志穂は頷いて顔を伏せ、再び嗚咽し始めた。
時々尊は志穂の傍を離れていた日もあった為、彼女が家に一人でいる時、どうしているかをずっと見てはいない。だが寂しそうに過ごしている姿は目にしていた。
それでもマスコミ等の誹謗中傷に晒されていた時など激しく怒り悲しんでいたが、ここまで酷く泣いてはいなかった。本当は涙を流したかったのかもしれない。ただ死んでいない為、彼女は希望を持ち続けようと自分の心を鼓舞し続けていたと思われる。
それでもやはり辛く寂しかったのだろう。弱った義父の姿を見たからかもしれないが、久しぶりにじっくり親子で過ごす時間を持ち、張り詰めていた心の箍が緩んだらしい。幼い子供に戻ったかのように泣きじゃくっていた。
彼らが病室に来た時には、意識がないとはいえ尊がいた。病室の外へ出ても周囲の目がある。よってここまで緊張が解ける環境では無かったのだろう。思わぬ真実を知ってしまったとはいえ、やはり実家に帰ったのは正解だったようだ。
新たな心配の種が増えたとはいえ、支えてくれる存在がいると改めて気づかされた点は大きい収穫だったと言える。あのままだったら、志穂の心は壊れていたかもしれない。そうなる前に防げたのだ。そう考えると、義父達には感謝しかなかった。
そこで尊の気分はまた落ち込んだ。志穂と結婚した時、彼女を守り二人で幸せになろうと誓った。それが叶わなくなった今、己の無力さに心が折れそうになる。そしてまたこうした事態を招いた犯人への怒りと、怨みの感情が湧き出てくるのだ。
この無限ループから抜け出せないものか。何度そう考えてきただろう。時には刑事達について行き、彼らの捜査がどの程度進んでいるかを確認してきた。被疑者に挙がった人達の様子も、事情聴取の際に出来る限り探った。
それでも制約があったせいで十分とは言えない。尊の病室へ見舞いに訪れなかった彼らには、直接取り付けなかったからだ。
その上死んでしまった和喜田や宇山には、もう近づくことさえできない。野城も刑務所の中なので同じだ。唯一出来るようになったのは、事件から一年半近く経ってから見舞いに来た里浜だが、彼女には確実なアリバイがある。よって完全に手詰まりとなっていた。
さらに今後志穂が実家に戻り尊の体が静岡の病院へ転院すれば、捜査している愛知県警からも遠ざかる。そうなれば彼らがこちらに訪れるか、または志穂から出向かない限り取り付けないので、情報も得難くなるだろう。
結局犯人探しに関しては、警察に任せるしかないと諦めざるを得なかった。今尊に出来るのは、志穂達を見守りながら義父の最期を看取ることだ。後は元の体に戻り、目を覚ます時が来るのを引き続き待つしかない。残念ながらそう腹を括るしかなかった。
志穂はその日剛志の帰りを待ち、四人で今後について再度話し合い、最終結論を出した。そうして久しぶりに揃って夕飯を食べ、彼らと同じく早めに就寝をした。また農家の朝は早い為、一緒に起きて朝食を取り剛志が畑に出ると同時に、車で名古屋へと向かったのだ。
彼女は早速実家から戻ったその日の午前中に病室へ顔を出し、担当医師を掴まえて家庭の事情を伝え、転院の打診を行っていた。医師は渋い顔をしていたが、事情を理解したのだろう。
「今の容態を維持したままの転院は、全くリスクが無いとまで言い切れない為にお勧めできません。ただ可能かと質問されれば、できなくはないとお答えせざるを得ないでしょう。先程説明された実家のご住所を伺った限り、転院するならやはり静岡市内の病院がベストだと思われます。もっと近くとなれば、設備が充分でない病院しかありません。ただ問題は先方が引き受けてくれるかどうか、です」
「先生から打診して頂けませんか。お願いします」
「分かりました。静岡市内であればここと同じ系列の病院があります。もしそこが駄目でも、他にいくつか候補は見つかるでしょう。とにかくやってみます。あとは会社とどう話されるかは、そちらにお任せしてよろしいですか」
「はい。まずはこちらの考えを、今の内に先方へ伝えておきます。転院が可能かどうかのやり取りを待っていたら遅くなるといけませんので」
「分かりました。病院側としてもご本人があのような状況ですから、まずはご家族の意思を尊重したいと思います」
「そう言って頂けると助かります。ではお手数を掛け、勝手を言いますが、できるだけ早く回答を出して頂けるようお願い致します。余り時間がありませんので」
医師にそう答えた彼女は、次に会社へと連絡を入れて新支社長にこちらの事情と要望を同じく伝えた。相手も初めてのケースだからだろう。困惑しながらも即答は出来ないので、本社などと相談して折り返し対応の可否をお伝えすると言い、通話を終えた。
こうなれば後はどちらも相手の反応を待つしかない。彼女はベッドの脇に座り、目を覚まさない尊の手を握って話しかけていた。
「尊さん、ごめんね。勝手な真似をして」
尊は彼女の頭上で首を振った。謝る必要なんてない。志穂の判断は間違っていないよ。こっちこそ、面倒な手間をかけさせて申し訳ない。おかしな恨みを買ったのかどうかは分からないけれど、そのせいで嫌な思いをもさせた。何度頭を下げたって足りない。
また気分が落ち込み、腹を立てた。本当にどうかしている。ボカーソウルもそうだが、一体何の意味があってこんな目に遭わなければならないのか。
人は死に方にもよるだろうが、多くは未練を残しながらこの世を旅立つはずだ。何の心残りもないまま死ねるのはかなり悟り切った人物か、余程生きることが嫌で早くこの世との関係を断ちたいと思う人くらいではないか。いや例え自ら死を選んだとしても、少しは心のどこかで悔しさが残っていたりするのではないだろうか。
今のところ自殺や自然災害で亡くなる、または病死や単なる事故死の場合でボカーソウルとして現れる例は、世界中どこを探してもないという。
何故か犯罪被害者と呼ばれる人物でなければならないらしい。それもほぼ五割の確率だという点も不思議だ。悔いなどがあり、生への執着が強いというだけでは説明がつかない。
それに尊は犯罪被害者だが、辛うじて命を取り留めている。それなのにこうして魂だけ浮遊している意味が分からない。刺した犯人を目撃していたなら、多少理解できただろう。しかしそうではないし、未だ犯人の目星すらついていないのだから。
堂々巡りの思考は続く。それでも何の糸口もないまま時だけが過ぎていった。やがて病院側から転院の許可が下り、受け入れ先も系列病院に決まった。そこならこれまでと同様、二十四時間の看護体制が取れるという。それを聞いて志穂は胸を撫で下ろしていた。
移動は高速を通り二時間半ほどかかる道程を、救急車で少し急げば二時間弱程度までは短縮出来るらしい。万が一容態が急変すれば、サイレンを鳴らすなどしてもっと早く走行することも可能だという。
ただ容態が安定しており、無理をせずかつ体に負担をかけない走行を心がける為、二時間程度と見ておく必要があるようだ。
またその間、会社からも回答が来た。新支社長がわざわざ病室を訪れ、書類を持って説明をし始めた。
「本来なら休職期間中はあくまで復帰後を見据え、元の所属の近くで管理職による担当医師との面談を定期的に行い、休職の延長手続きを行わなければなりません。ただ芝元さんの場合は特殊事情を抱えていますし、転院を止める権利までは会社に無いと判断しました」
「退職しなくていいのですか」
「はい。元々退職の場合、本人が委任状のように代理を任せる書面を書き、自筆の退職届を出すか会社側と電話で通話して退職届を代筆、代理提出したり伝えたり、何らかの方法で本人の意思で退職すると示せれば手続きが取れます。つまり本人の意思によると分からない、あるいは本人の意思ではないと分かる場合、例え奥様が代筆されても無効となってしまいます。ですから芝元さんの場合は意識が戻られるまで、または休職期限が来るまでは、会社も勝手に退職させられないのです」
あれから彼女もネットなどで調べ、恐らくそうなるはずだと思っていたはずだ。それでも正式に会社からそう伝えられ、安堵したと思われる。表情をやや崩しながら、それでも話の続きを促していた。
「それではどういう手続きをすればいいですか」
「まずこちらの先生に、休職が必要な期間を休職期限末までと診断書に書いて頂く必要があります。これまでは容態が安定しいつ目を覚まされるか分からない為、三カ月ごとに延長してきました。ですがそれだと現在直属の上司である私は、その度に静岡の病院を訪問しなければいけなくなります。それは余りにも非効率で現実的ではありません」
「なるほど。期間の延長手続きをしなくて済むように診断書を書いて頂く訳ですね」
「はい。ただし途中で意識が戻りかつ復職できるようになった場合も考えておかなければいけません。ですから診断書には、そうした但し書きを記入して頂きます。それを転院先の担当医にも引き継いで頂き、意識が戻られたら会社と改めて復職に関する確認を行うことと記載して頂ければ問題ないそうです。これは本社の人事部や法務部に確認を取り、先方から指示されたことなので間違いありません」
「意識が戻っても後遺症が残っていたりすれば、直ぐ復職できるかどうか分かりませんからね。それも休職期間中のいつになるかは、誰も予測できないようですし」
「はい。もし目を覚まされたら、その時はもう一度ご連絡頂けますか。ただご存じのように、私も転勤族ですからいつ異動になるか分かりません。ですから担当上司が別の者になる可能性もある点はご了承ください。もちろん後任の支社長には引き継ぎをしておきます」
「分かりました。そうさせて頂きます」
「それでは転院に伴って、転居もされますよね。社宅を出られる手続きなどがありますから、こちらで用意した書類にサインを頂けますか。これは奥様が代理でされても構いません。但し通常の異動に伴う引っ越しの場合、会社から費用の全額負担に加え補助金が出ますが、今回は違うので全て自己負担になることをご了承下さい。また意識を取り戻し復職されるとなった時は、一度こちらの部署に戻って頂かなければなりません。そうした際、改めて転居が必要となるでしょう。しかしそこでかかる引っ越し費用も自己負担となります。また部屋の賃料はこれまでと違い、再び借り上げ社宅への入居ができませんので、個人的に探し借りるなりして頂きます。その場合、家賃の一部補助は出ますが今と比べればかなり少ない額なので、自己負担額が増えます。その点もご了承ください」
時々尊は志穂の傍を離れていた日もあった為、彼女が家に一人でいる時、どうしているかをずっと見てはいない。だが寂しそうに過ごしている姿は目にしていた。
それでもマスコミ等の誹謗中傷に晒されていた時など激しく怒り悲しんでいたが、ここまで酷く泣いてはいなかった。本当は涙を流したかったのかもしれない。ただ死んでいない為、彼女は希望を持ち続けようと自分の心を鼓舞し続けていたと思われる。
それでもやはり辛く寂しかったのだろう。弱った義父の姿を見たからかもしれないが、久しぶりにじっくり親子で過ごす時間を持ち、張り詰めていた心の箍が緩んだらしい。幼い子供に戻ったかのように泣きじゃくっていた。
彼らが病室に来た時には、意識がないとはいえ尊がいた。病室の外へ出ても周囲の目がある。よってここまで緊張が解ける環境では無かったのだろう。思わぬ真実を知ってしまったとはいえ、やはり実家に帰ったのは正解だったようだ。
新たな心配の種が増えたとはいえ、支えてくれる存在がいると改めて気づかされた点は大きい収穫だったと言える。あのままだったら、志穂の心は壊れていたかもしれない。そうなる前に防げたのだ。そう考えると、義父達には感謝しかなかった。
そこで尊の気分はまた落ち込んだ。志穂と結婚した時、彼女を守り二人で幸せになろうと誓った。それが叶わなくなった今、己の無力さに心が折れそうになる。そしてまたこうした事態を招いた犯人への怒りと、怨みの感情が湧き出てくるのだ。
この無限ループから抜け出せないものか。何度そう考えてきただろう。時には刑事達について行き、彼らの捜査がどの程度進んでいるかを確認してきた。被疑者に挙がった人達の様子も、事情聴取の際に出来る限り探った。
それでも制約があったせいで十分とは言えない。尊の病室へ見舞いに訪れなかった彼らには、直接取り付けなかったからだ。
その上死んでしまった和喜田や宇山には、もう近づくことさえできない。野城も刑務所の中なので同じだ。唯一出来るようになったのは、事件から一年半近く経ってから見舞いに来た里浜だが、彼女には確実なアリバイがある。よって完全に手詰まりとなっていた。
さらに今後志穂が実家に戻り尊の体が静岡の病院へ転院すれば、捜査している愛知県警からも遠ざかる。そうなれば彼らがこちらに訪れるか、または志穂から出向かない限り取り付けないので、情報も得難くなるだろう。
結局犯人探しに関しては、警察に任せるしかないと諦めざるを得なかった。今尊に出来るのは、志穂達を見守りながら義父の最期を看取ることだ。後は元の体に戻り、目を覚ます時が来るのを引き続き待つしかない。残念ながらそう腹を括るしかなかった。
志穂はその日剛志の帰りを待ち、四人で今後について再度話し合い、最終結論を出した。そうして久しぶりに揃って夕飯を食べ、彼らと同じく早めに就寝をした。また農家の朝は早い為、一緒に起きて朝食を取り剛志が畑に出ると同時に、車で名古屋へと向かったのだ。
彼女は早速実家から戻ったその日の午前中に病室へ顔を出し、担当医師を掴まえて家庭の事情を伝え、転院の打診を行っていた。医師は渋い顔をしていたが、事情を理解したのだろう。
「今の容態を維持したままの転院は、全くリスクが無いとまで言い切れない為にお勧めできません。ただ可能かと質問されれば、できなくはないとお答えせざるを得ないでしょう。先程説明された実家のご住所を伺った限り、転院するならやはり静岡市内の病院がベストだと思われます。もっと近くとなれば、設備が充分でない病院しかありません。ただ問題は先方が引き受けてくれるかどうか、です」
「先生から打診して頂けませんか。お願いします」
「分かりました。静岡市内であればここと同じ系列の病院があります。もしそこが駄目でも、他にいくつか候補は見つかるでしょう。とにかくやってみます。あとは会社とどう話されるかは、そちらにお任せしてよろしいですか」
「はい。まずはこちらの考えを、今の内に先方へ伝えておきます。転院が可能かどうかのやり取りを待っていたら遅くなるといけませんので」
「分かりました。病院側としてもご本人があのような状況ですから、まずはご家族の意思を尊重したいと思います」
「そう言って頂けると助かります。ではお手数を掛け、勝手を言いますが、できるだけ早く回答を出して頂けるようお願い致します。余り時間がありませんので」
医師にそう答えた彼女は、次に会社へと連絡を入れて新支社長にこちらの事情と要望を同じく伝えた。相手も初めてのケースだからだろう。困惑しながらも即答は出来ないので、本社などと相談して折り返し対応の可否をお伝えすると言い、通話を終えた。
こうなれば後はどちらも相手の反応を待つしかない。彼女はベッドの脇に座り、目を覚まさない尊の手を握って話しかけていた。
「尊さん、ごめんね。勝手な真似をして」
尊は彼女の頭上で首を振った。謝る必要なんてない。志穂の判断は間違っていないよ。こっちこそ、面倒な手間をかけさせて申し訳ない。おかしな恨みを買ったのかどうかは分からないけれど、そのせいで嫌な思いをもさせた。何度頭を下げたって足りない。
また気分が落ち込み、腹を立てた。本当にどうかしている。ボカーソウルもそうだが、一体何の意味があってこんな目に遭わなければならないのか。
人は死に方にもよるだろうが、多くは未練を残しながらこの世を旅立つはずだ。何の心残りもないまま死ねるのはかなり悟り切った人物か、余程生きることが嫌で早くこの世との関係を断ちたいと思う人くらいではないか。いや例え自ら死を選んだとしても、少しは心のどこかで悔しさが残っていたりするのではないだろうか。
今のところ自殺や自然災害で亡くなる、または病死や単なる事故死の場合でボカーソウルとして現れる例は、世界中どこを探してもないという。
何故か犯罪被害者と呼ばれる人物でなければならないらしい。それもほぼ五割の確率だという点も不思議だ。悔いなどがあり、生への執着が強いというだけでは説明がつかない。
それに尊は犯罪被害者だが、辛うじて命を取り留めている。それなのにこうして魂だけ浮遊している意味が分からない。刺した犯人を目撃していたなら、多少理解できただろう。しかしそうではないし、未だ犯人の目星すらついていないのだから。
堂々巡りの思考は続く。それでも何の糸口もないまま時だけが過ぎていった。やがて病院側から転院の許可が下り、受け入れ先も系列病院に決まった。そこならこれまでと同様、二十四時間の看護体制が取れるという。それを聞いて志穂は胸を撫で下ろしていた。
移動は高速を通り二時間半ほどかかる道程を、救急車で少し急げば二時間弱程度までは短縮出来るらしい。万が一容態が急変すれば、サイレンを鳴らすなどしてもっと早く走行することも可能だという。
ただ容態が安定しており、無理をせずかつ体に負担をかけない走行を心がける為、二時間程度と見ておく必要があるようだ。
またその間、会社からも回答が来た。新支社長がわざわざ病室を訪れ、書類を持って説明をし始めた。
「本来なら休職期間中はあくまで復帰後を見据え、元の所属の近くで管理職による担当医師との面談を定期的に行い、休職の延長手続きを行わなければなりません。ただ芝元さんの場合は特殊事情を抱えていますし、転院を止める権利までは会社に無いと判断しました」
「退職しなくていいのですか」
「はい。元々退職の場合、本人が委任状のように代理を任せる書面を書き、自筆の退職届を出すか会社側と電話で通話して退職届を代筆、代理提出したり伝えたり、何らかの方法で本人の意思で退職すると示せれば手続きが取れます。つまり本人の意思によると分からない、あるいは本人の意思ではないと分かる場合、例え奥様が代筆されても無効となってしまいます。ですから芝元さんの場合は意識が戻られるまで、または休職期限が来るまでは、会社も勝手に退職させられないのです」
あれから彼女もネットなどで調べ、恐らくそうなるはずだと思っていたはずだ。それでも正式に会社からそう伝えられ、安堵したと思われる。表情をやや崩しながら、それでも話の続きを促していた。
「それではどういう手続きをすればいいですか」
「まずこちらの先生に、休職が必要な期間を休職期限末までと診断書に書いて頂く必要があります。これまでは容態が安定しいつ目を覚まされるか分からない為、三カ月ごとに延長してきました。ですがそれだと現在直属の上司である私は、その度に静岡の病院を訪問しなければいけなくなります。それは余りにも非効率で現実的ではありません」
「なるほど。期間の延長手続きをしなくて済むように診断書を書いて頂く訳ですね」
「はい。ただし途中で意識が戻りかつ復職できるようになった場合も考えておかなければいけません。ですから診断書には、そうした但し書きを記入して頂きます。それを転院先の担当医にも引き継いで頂き、意識が戻られたら会社と改めて復職に関する確認を行うことと記載して頂ければ問題ないそうです。これは本社の人事部や法務部に確認を取り、先方から指示されたことなので間違いありません」
「意識が戻っても後遺症が残っていたりすれば、直ぐ復職できるかどうか分かりませんからね。それも休職期間中のいつになるかは、誰も予測できないようですし」
「はい。もし目を覚まされたら、その時はもう一度ご連絡頂けますか。ただご存じのように、私も転勤族ですからいつ異動になるか分かりません。ですから担当上司が別の者になる可能性もある点はご了承ください。もちろん後任の支社長には引き継ぎをしておきます」
「分かりました。そうさせて頂きます」
「それでは転院に伴って、転居もされますよね。社宅を出られる手続きなどがありますから、こちらで用意した書類にサインを頂けますか。これは奥様が代理でされても構いません。但し通常の異動に伴う引っ越しの場合、会社から費用の全額負担に加え補助金が出ますが、今回は違うので全て自己負担になることをご了承下さい。また意識を取り戻し復職されるとなった時は、一度こちらの部署に戻って頂かなければなりません。そうした際、改めて転居が必要となるでしょう。しかしそこでかかる引っ越し費用も自己負担となります。また部屋の賃料はこれまでと違い、再び借り上げ社宅への入居ができませんので、個人的に探し借りるなりして頂きます。その場合、家賃の一部補助は出ますが今と比べればかなり少ない額なので、自己負担額が増えます。その点もご了承ください」
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