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第5章 ホラムでの決戦
cys:89 ギリギリな奴ら
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「くっ……」
「やべっ!」
思わず顔をしかめたレイとジーク。
ただこうなった以上、逃げるのも隠れるのも何か違うと感じた2人は、アッシュ達の前に堂々と姿を現した。
それを見て、一瞬軽く動揺しながらも嗤うアッシュ達。
「あ~~ぁ、聞かれちゃったみたいだネ♪」
「ったく、タイミング悪ぃ奴らだな。けど、お陰で手間が省けたぜ」
「アハッ♪ 楽しみーー」
サロメが嗤うと、アッシュはレイとジークに向かいニタリと嗤い両手を斜め下へ向けた。
「キミ達、飛んで火に入るなんとやらだネ♪」
「あら、それはアナタ達でしょ」
「ったく、レイの言う通りだ。大概にしろよテメェら」
レイとジークが冷静に怒りの眼差しを向けると、アッシュはニイッと嗤い片手で顔を覆い軽くうつむいた。
瞳の奥が不気味に光る。
「クックックッ……アーッハッハッハッ♪」
片手で顔を覆ったまま胸を張り高笑いを上げたアッシュに、ジークは訝しむ顔を向けた。
アッシュから立ち昇る邪悪なオーラに薄気味悪さを感じながら。
「おいお前さん、何がオカシイ?」
「いや、キミ達は力しか見ないのに、単純な計算すら出来ないんだもん♪ それがおかしくてサ」
「計算だぁ?」
ジークが顔をしかめると、アッシュはパチンと指を鳴らした。
すると、バロンとサロメがクリスタルを輝かせ武器を起動させた。
もちろんアッシュもだ。
そしてそれだけではない。
彼らそれぞれの部隊の側近達も、同じように魔力クリスタルと武器を起動させ、レイとジークに構えたのだ。
「分かるかい? いかにキミ等がSランクでも、これだけの数には敵わないよネ♪ 個の力なんて、科学の力と数が圧倒的に凌駕するんだからサ♪」
アッシュがニヤけながらそう言うと、バロンやサロメ達もニタニタと笑みを浮べた。
けれど、レイとジークは呆れた様な顔を向ける。
「ハァッ、バッカじゃない。そんなので私達が倒せる訳ないでしょ」
「だな。まぁ……やらなきゃ分かんねーなら、やってやるけどよ!」
「クスクスクス……」
「何がオカシイんだよ? イカレちまったか」
すると、アッシュはニタァっと下卑た笑みを浮べた。
「キミ達、さっきの話聞いてたんでしょ♪ いいのかナ? ここで暴れても」
「くっ……」
「チッ……」
その事を思い出し、悔しさを零すレイとジーク。
向こうに非があっても、ここで暴れたらノーティスが我慢した事を無駄にしてしまうからだ。
そんな2人の悔しそうな顔を見て、満足気に笑うアッシュ。
───これだよ♪ ボクより強い2人が苦しそうにしてるのは堪らないネ。
「2人共そういう事だヨ♪ ボク達はキミを逃さないけど、キミ達は戦う事が出来ない。そこで、いい提案があるんだ♪」
アッシュはそこまで言うと、再びニタァっと嗤った。
「そのレイっていう魔道士をボク達にくれたら脳筋くん、キミは見逃がしてあげる♪」
「テッメェ……ざけんなよ!!!」
ジークが怒声を上げると、サロメが笑いながらレイを見つめてきた。
「でも、アナタその方がいいんじゃないかしら♪」
「ハッ? 何を言ってるの……」
「だってアナタ苦しんでんだもん♪ 2人の男に恋しちゃって」
「だ、黙りなさいっ!」
「アハッ♪ モテると辛いわよねー。でもレイ、心のどこかで、そんな自分を罰して貰いたいと想ってるでしょ」
サロメに心の裡を晒されたレイは、ギリッと歯を食いしばり体を震わせながらサロメを睨んだ。
その瞳には追い詰められている色が、ありありと浮かんでいる。
「そんな事……無いわ!」
「アハハ♪ 震えちゃって、無様ねーーー。でも、そんなアナタが救われる方法が1つだけあるわ♪」
そこまで告げると、サロメは冷酷な表情に変えてレイを見下ろした。
「かーんたんよ。犯されればいいの。それがアナタへの罰であり、諦める事の出来る救済なの……」
「うっ……そ、それは……」
苦しく辛そうに顔を歪めるレイに、サロメはグイッと顔を近付かせて目を大きく開く。
「美しくいる為には罰が必要……そうでしょ!!」
「くっ……!」
サロメに心を抉られガクッとうなだれたレイの肩を、ジークはレイの肩を正面から強く掴み、必死の形相で見つめた。
「レイ、しっかりしろ! あんなデタラメ信じてんじゃねぇ!」
けれど、レイは暗くうつむいたままジークの手をそっと払い除け、スッとジークに背を向けた。
そのレイの背中から、悲壮なオーラを感じたジーク。
「レイ……お前さんまさか」
ジークが固まる中、レイはハイヒールの音をカツカツとゆっくり鳴らしながらアッシュの元へ行くと、ジークに顔を振り返らせ、その美しい瞳からツーっと涙を零した。
「ジーク……ごめんね。でも、嬉しかったわよ」
「レーーーーーーーーーーーイっ!!!」
ジークの悲痛な叫びも虚しく、レイは悲しみに覆われた瞳でアッシュを見つめる。
「彼は、許してあげて……」
「アハハ! もちろんだヨ♪」
アッシュはそう言ってニタァっと笑い、バロンやサロメも下卑た笑みを浮かべながら、レイの体に触れようとした。
が、その瞬間だった。
アッシュ達は側近も含め、その場にドッと膝をつき崩れ落ちたのだ。
そして、大量の汗をダクダク流しながら目をかっぴらき、ガタガタと震える。
壊れたようにバクバク動く心臓の音と共に。
レイとジークを除く、その場の誰もが感じた。
今、一瞬でバラバラに斬り刻まれたと!
けれど、アッシュ達が自分の両手を見ると、全くどこも斬られていない。
その代わり、手のひらに大量の汗がボタボタと零れ落ちるのが見える。
───斬られて……ない?
アッシュは一体何が起こったのか分からないまま、悪夢を見たような顔を向けた。
とてつもない殺気が放たれた方へ。
するとその瞳に、怒りを超えた冷酷な眼差しで自分を見据えているノーティスの姿が映った。
そして両隣には、ロウとメティアがいる。
「えっ……あっ……」
ただ震えて見つめる事しか出来ないアッシュに、ノーティスはゆっくり近づき見下ろすと、静かに口を開く。
「アッシュ。お前達は、ギリギリが好きなのか?」
「……えっ?」
「お前達の指が後1cmレイに近ければ、お前らは今さっき感じた通りの姿になってたぞ。危なかったな」
「うっ……くっ……」
圧倒的な力の差を体感させられ、震える事しか出来ないアッシュ。
───こ、こんなん戦うまでもないヨ。これが本当のSランクの力……
無論、アッシュの仲間達もそうだ。
───しゃ、シャレにならねぇ。スマートどころか、一瞬でやられちまう。
───なんなのよこれ……心を読む暇すら……うぅん、読んだって意味ないわ……
ノーティスはそんなアッシュ達を哀れな眼差しで一瞥すると、レイの背中を静かに見つめた。
「やべっ!」
思わず顔をしかめたレイとジーク。
ただこうなった以上、逃げるのも隠れるのも何か違うと感じた2人は、アッシュ達の前に堂々と姿を現した。
それを見て、一瞬軽く動揺しながらも嗤うアッシュ達。
「あ~~ぁ、聞かれちゃったみたいだネ♪」
「ったく、タイミング悪ぃ奴らだな。けど、お陰で手間が省けたぜ」
「アハッ♪ 楽しみーー」
サロメが嗤うと、アッシュはレイとジークに向かいニタリと嗤い両手を斜め下へ向けた。
「キミ達、飛んで火に入るなんとやらだネ♪」
「あら、それはアナタ達でしょ」
「ったく、レイの言う通りだ。大概にしろよテメェら」
レイとジークが冷静に怒りの眼差しを向けると、アッシュはニイッと嗤い片手で顔を覆い軽くうつむいた。
瞳の奥が不気味に光る。
「クックックッ……アーッハッハッハッ♪」
片手で顔を覆ったまま胸を張り高笑いを上げたアッシュに、ジークは訝しむ顔を向けた。
アッシュから立ち昇る邪悪なオーラに薄気味悪さを感じながら。
「おいお前さん、何がオカシイ?」
「いや、キミ達は力しか見ないのに、単純な計算すら出来ないんだもん♪ それがおかしくてサ」
「計算だぁ?」
ジークが顔をしかめると、アッシュはパチンと指を鳴らした。
すると、バロンとサロメがクリスタルを輝かせ武器を起動させた。
もちろんアッシュもだ。
そしてそれだけではない。
彼らそれぞれの部隊の側近達も、同じように魔力クリスタルと武器を起動させ、レイとジークに構えたのだ。
「分かるかい? いかにキミ等がSランクでも、これだけの数には敵わないよネ♪ 個の力なんて、科学の力と数が圧倒的に凌駕するんだからサ♪」
アッシュがニヤけながらそう言うと、バロンやサロメ達もニタニタと笑みを浮べた。
けれど、レイとジークは呆れた様な顔を向ける。
「ハァッ、バッカじゃない。そんなので私達が倒せる訳ないでしょ」
「だな。まぁ……やらなきゃ分かんねーなら、やってやるけどよ!」
「クスクスクス……」
「何がオカシイんだよ? イカレちまったか」
すると、アッシュはニタァっと下卑た笑みを浮べた。
「キミ達、さっきの話聞いてたんでしょ♪ いいのかナ? ここで暴れても」
「くっ……」
「チッ……」
その事を思い出し、悔しさを零すレイとジーク。
向こうに非があっても、ここで暴れたらノーティスが我慢した事を無駄にしてしまうからだ。
そんな2人の悔しそうな顔を見て、満足気に笑うアッシュ。
───これだよ♪ ボクより強い2人が苦しそうにしてるのは堪らないネ。
「2人共そういう事だヨ♪ ボク達はキミを逃さないけど、キミ達は戦う事が出来ない。そこで、いい提案があるんだ♪」
アッシュはそこまで言うと、再びニタァっと嗤った。
「そのレイっていう魔道士をボク達にくれたら脳筋くん、キミは見逃がしてあげる♪」
「テッメェ……ざけんなよ!!!」
ジークが怒声を上げると、サロメが笑いながらレイを見つめてきた。
「でも、アナタその方がいいんじゃないかしら♪」
「ハッ? 何を言ってるの……」
「だってアナタ苦しんでんだもん♪ 2人の男に恋しちゃって」
「だ、黙りなさいっ!」
「アハッ♪ モテると辛いわよねー。でもレイ、心のどこかで、そんな自分を罰して貰いたいと想ってるでしょ」
サロメに心の裡を晒されたレイは、ギリッと歯を食いしばり体を震わせながらサロメを睨んだ。
その瞳には追い詰められている色が、ありありと浮かんでいる。
「そんな事……無いわ!」
「アハハ♪ 震えちゃって、無様ねーーー。でも、そんなアナタが救われる方法が1つだけあるわ♪」
そこまで告げると、サロメは冷酷な表情に変えてレイを見下ろした。
「かーんたんよ。犯されればいいの。それがアナタへの罰であり、諦める事の出来る救済なの……」
「うっ……そ、それは……」
苦しく辛そうに顔を歪めるレイに、サロメはグイッと顔を近付かせて目を大きく開く。
「美しくいる為には罰が必要……そうでしょ!!」
「くっ……!」
サロメに心を抉られガクッとうなだれたレイの肩を、ジークはレイの肩を正面から強く掴み、必死の形相で見つめた。
「レイ、しっかりしろ! あんなデタラメ信じてんじゃねぇ!」
けれど、レイは暗くうつむいたままジークの手をそっと払い除け、スッとジークに背を向けた。
そのレイの背中から、悲壮なオーラを感じたジーク。
「レイ……お前さんまさか」
ジークが固まる中、レイはハイヒールの音をカツカツとゆっくり鳴らしながらアッシュの元へ行くと、ジークに顔を振り返らせ、その美しい瞳からツーっと涙を零した。
「ジーク……ごめんね。でも、嬉しかったわよ」
「レーーーーーーーーーーーイっ!!!」
ジークの悲痛な叫びも虚しく、レイは悲しみに覆われた瞳でアッシュを見つめる。
「彼は、許してあげて……」
「アハハ! もちろんだヨ♪」
アッシュはそう言ってニタァっと笑い、バロンやサロメも下卑た笑みを浮かべながら、レイの体に触れようとした。
が、その瞬間だった。
アッシュ達は側近も含め、その場にドッと膝をつき崩れ落ちたのだ。
そして、大量の汗をダクダク流しながら目をかっぴらき、ガタガタと震える。
壊れたようにバクバク動く心臓の音と共に。
レイとジークを除く、その場の誰もが感じた。
今、一瞬でバラバラに斬り刻まれたと!
けれど、アッシュ達が自分の両手を見ると、全くどこも斬られていない。
その代わり、手のひらに大量の汗がボタボタと零れ落ちるのが見える。
───斬られて……ない?
アッシュは一体何が起こったのか分からないまま、悪夢を見たような顔を向けた。
とてつもない殺気が放たれた方へ。
するとその瞳に、怒りを超えた冷酷な眼差しで自分を見据えているノーティスの姿が映った。
そして両隣には、ロウとメティアがいる。
「えっ……あっ……」
ただ震えて見つめる事しか出来ないアッシュに、ノーティスはゆっくり近づき見下ろすと、静かに口を開く。
「アッシュ。お前達は、ギリギリが好きなのか?」
「……えっ?」
「お前達の指が後1cmレイに近ければ、お前らは今さっき感じた通りの姿になってたぞ。危なかったな」
「うっ……くっ……」
圧倒的な力の差を体感させられ、震える事しか出来ないアッシュ。
───こ、こんなん戦うまでもないヨ。これが本当のSランクの力……
無論、アッシュの仲間達もそうだ。
───しゃ、シャレにならねぇ。スマートどころか、一瞬でやられちまう。
───なんなのよこれ……心を読む暇すら……うぅん、読んだって意味ないわ……
ノーティスはそんなアッシュ達を哀れな眼差しで一瞥すると、レイの背中を静かに見つめた。
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