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第8章 反逆の狼煙
cys:172 雷光を超える桜
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「喰らえ蛮族め! 怒りの雷光を!!」
アルベリッヒが向けた両手から鋭い雷光が放たれたが、アネーシャは軌道を見切りサッと躱し、臆する事無く睨み返した。
目の前の男アルベリッヒが自分を憎むのは分かるが、こっちもそれは同じだからだ。
「何が蛮族よ! そうやって決めつけて、私達を蹂躙してきた貴方達は違うとでも言うの!」
「黙れ! 魔力クリスタルの救いを拒み悪魔に支配されている、愚かな国の勇者が!」
アルベリッヒが怒声をぶつけると、アネーシャは悔しさにギュッと拳を握りしめて身体を震わす。
「アルベリッヒ……貴方は本当にそれを信じてるの?!」
「女……何が言いたい」
「貴方のように、自分で考えず盲信してる人がなってしまうのよ。本当の悪魔に!」
「キサマ……戯言も大概にしろ! 俺達スマート・ミレニアムの人間は魔力クリスタルにより進化した人間で、お前らはそれを拒否する愚かな蛮族! その事に一部の間違いも無い!」
そう言い放ち怒声を浴びせてくるアルベリッヒを、アネーシャは怒りと哀しみに満ちた瞳で見つめている。
昔から自分達を蛮族と決めつけ蹂躙してくるスマート・ミレニアムの人間は、やはり憎いし許せない。
けれど、同時に分かっているからだ。
その昔、カイザー達がユグドラシルを奪いアーロスを逆賊に仕立て上げ、偽りの歴史で民を洗脳した事が一番の元凶だという事を。
───アーロス、ソフィア……!
そして、それをどんなに話した所で分かっては貰えない事が、アネーシャの胸を締め付けていく。
だが、その中でアネーシャは想いを馳せる。
───ノーティス、貴方だけは分かってくれた。本当に苦しみの中で。そして、記憶を失ってからは、私は貴方の優しさに救われた。だから……
アネーシャは凛とした瞳でアルベリッヒを見つめると、両手で剣を持ち必殺剣の構えを取った。
全身から譲れない想いと共に桜色の闘気を立ち昇らせながら。
「私は、これからも自分の愛と志の為に戦う。だから、決して負けないわ!」
「ほざけ蛮族が! この俺の雷光で消え去るがいい!」
アルベリッヒがそう言い放った瞬間、アルベリッヒの前に黄色の大きな魔法陣がブワンと敷かれ、その魔法陣の上に幾つもの雷がバチバチバチッ……! と、音を立てながら出来上がった。
そして、それらが一点に合わさり大きな光になっていく。
「これで終わりだ! 愚かな国の勇者よ! 『シモス・ゲラウノス』!!」
バリバリバリッ!! と、いう音を立て途轍もない雷がアネーシャ目掛けて放たれたが、その瞬間アネーシャも剣を大きく振り下ろし必殺技を放つ。
「私も終わらせるわ! 偽りと悲しみを! 『神桜滅鬼《しんおうめっき》』!!」
振り下ろした剣から桜色の凄まじい衝撃波が地を伝い、波のようにアルベリッヒの放った雷とぶつかると、中間で大きく燻った。
けれど、すぐにアネーシャの技がアルベリッヒの技をググッと押し返していく。
「オオオオッ! くっ、なぜだ……! なぜキサマなんかにこの俺が……!」
必死に堪えながら顔をしかめるアルベリッヒを、アネーシャは凛とした瞳で見据えたまま答える。
「私は……貴方なんかに、なんて思わない」
「なんだと……!」
「貴方にも想いがある事は認めてるから。でも、私は必ず勝たなきゃいけないの。この星の未来と……愛の為に! ハァァァァァッ!!」
「ぐっ! バ、バカな……!」
そう零した瞬間、ドガァァァァッン!! と、いう爆音と共にアルベリッヒに全てのエネルギーがぶつかり、大きく上空に吹き飛ばした。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
アルベリッヒは大きな叫び声を上げ、地面にドシャッ! と、背中から叩きつけられると、ボロボロの姿で額からツーっと血を流し、上半身を僅かにググッと起き上がらせた。
「お、俺達が、間違っていたのか……」
アネーシャはそんなアルベリッヒに近づくと、スッとしゃがみアルベリッヒの手を握る。
悲しさと優しさに満ちた瞳で見つめたまま。
「違うわ、アルベリッヒ。勝ったから正しいとか、負けたから間違ってるとかじゃないの」
「なっ……なん、だと」
「そういうやり方で正しさを決めないようにする為に、私は戦ってるから。これまでも、そしてこれからも……」
アネーシャがそう告げた時、アルベリッヒはハッとした顔を浮かべた後、穏やかに微笑んだ。
「俺が勝てない訳だ……最後に貴様……いや、お前と戦えた事に礼を言う。名を……」
「アネーシャよ。メデュム・アネーシャ」
「アネーシャか……礼を言う。ありがとう。もし、生まれ変われたら、その時は……仲間として……」
そこまで話すと、アルベリッヒは瞳を閉じ首をガクッと横に倒した。
「アルベリッヒ……!」
アネーシャは静かにそう零すとスッと立ち上がり、凛とした瞳に怒りの炎を宿しスマート・ミレニアム城を見上げる。
───五大悪魔王、貴方達を決して許さない……!
改めて刻んだ誓いを胸に、アネーシャはタタッと駆け出した。
この先に、さらなる試練が待ち構えている事を魂で感じながら……!
アルベリッヒが向けた両手から鋭い雷光が放たれたが、アネーシャは軌道を見切りサッと躱し、臆する事無く睨み返した。
目の前の男アルベリッヒが自分を憎むのは分かるが、こっちもそれは同じだからだ。
「何が蛮族よ! そうやって決めつけて、私達を蹂躙してきた貴方達は違うとでも言うの!」
「黙れ! 魔力クリスタルの救いを拒み悪魔に支配されている、愚かな国の勇者が!」
アルベリッヒが怒声をぶつけると、アネーシャは悔しさにギュッと拳を握りしめて身体を震わす。
「アルベリッヒ……貴方は本当にそれを信じてるの?!」
「女……何が言いたい」
「貴方のように、自分で考えず盲信してる人がなってしまうのよ。本当の悪魔に!」
「キサマ……戯言も大概にしろ! 俺達スマート・ミレニアムの人間は魔力クリスタルにより進化した人間で、お前らはそれを拒否する愚かな蛮族! その事に一部の間違いも無い!」
そう言い放ち怒声を浴びせてくるアルベリッヒを、アネーシャは怒りと哀しみに満ちた瞳で見つめている。
昔から自分達を蛮族と決めつけ蹂躙してくるスマート・ミレニアムの人間は、やはり憎いし許せない。
けれど、同時に分かっているからだ。
その昔、カイザー達がユグドラシルを奪いアーロスを逆賊に仕立て上げ、偽りの歴史で民を洗脳した事が一番の元凶だという事を。
───アーロス、ソフィア……!
そして、それをどんなに話した所で分かっては貰えない事が、アネーシャの胸を締め付けていく。
だが、その中でアネーシャは想いを馳せる。
───ノーティス、貴方だけは分かってくれた。本当に苦しみの中で。そして、記憶を失ってからは、私は貴方の優しさに救われた。だから……
アネーシャは凛とした瞳でアルベリッヒを見つめると、両手で剣を持ち必殺剣の構えを取った。
全身から譲れない想いと共に桜色の闘気を立ち昇らせながら。
「私は、これからも自分の愛と志の為に戦う。だから、決して負けないわ!」
「ほざけ蛮族が! この俺の雷光で消え去るがいい!」
アルベリッヒがそう言い放った瞬間、アルベリッヒの前に黄色の大きな魔法陣がブワンと敷かれ、その魔法陣の上に幾つもの雷がバチバチバチッ……! と、音を立てながら出来上がった。
そして、それらが一点に合わさり大きな光になっていく。
「これで終わりだ! 愚かな国の勇者よ! 『シモス・ゲラウノス』!!」
バリバリバリッ!! と、いう音を立て途轍もない雷がアネーシャ目掛けて放たれたが、その瞬間アネーシャも剣を大きく振り下ろし必殺技を放つ。
「私も終わらせるわ! 偽りと悲しみを! 『神桜滅鬼《しんおうめっき》』!!」
振り下ろした剣から桜色の凄まじい衝撃波が地を伝い、波のようにアルベリッヒの放った雷とぶつかると、中間で大きく燻った。
けれど、すぐにアネーシャの技がアルベリッヒの技をググッと押し返していく。
「オオオオッ! くっ、なぜだ……! なぜキサマなんかにこの俺が……!」
必死に堪えながら顔をしかめるアルベリッヒを、アネーシャは凛とした瞳で見据えたまま答える。
「私は……貴方なんかに、なんて思わない」
「なんだと……!」
「貴方にも想いがある事は認めてるから。でも、私は必ず勝たなきゃいけないの。この星の未来と……愛の為に! ハァァァァァッ!!」
「ぐっ! バ、バカな……!」
そう零した瞬間、ドガァァァァッン!! と、いう爆音と共にアルベリッヒに全てのエネルギーがぶつかり、大きく上空に吹き飛ばした。
「ぐわぁぁぁぁっ!!」
アルベリッヒは大きな叫び声を上げ、地面にドシャッ! と、背中から叩きつけられると、ボロボロの姿で額からツーっと血を流し、上半身を僅かにググッと起き上がらせた。
「お、俺達が、間違っていたのか……」
アネーシャはそんなアルベリッヒに近づくと、スッとしゃがみアルベリッヒの手を握る。
悲しさと優しさに満ちた瞳で見つめたまま。
「違うわ、アルベリッヒ。勝ったから正しいとか、負けたから間違ってるとかじゃないの」
「なっ……なん、だと」
「そういうやり方で正しさを決めないようにする為に、私は戦ってるから。これまでも、そしてこれからも……」
アネーシャがそう告げた時、アルベリッヒはハッとした顔を浮かべた後、穏やかに微笑んだ。
「俺が勝てない訳だ……最後に貴様……いや、お前と戦えた事に礼を言う。名を……」
「アネーシャよ。メデュム・アネーシャ」
「アネーシャか……礼を言う。ありがとう。もし、生まれ変われたら、その時は……仲間として……」
そこまで話すと、アルベリッヒは瞳を閉じ首をガクッと横に倒した。
「アルベリッヒ……!」
アネーシャは静かにそう零すとスッと立ち上がり、凛とした瞳に怒りの炎を宿しスマート・ミレニアム城を見上げる。
───五大悪魔王、貴方達を決して許さない……!
改めて刻んだ誓いを胸に、アネーシャはタタッと駆け出した。
この先に、さらなる試練が待ち構えている事を魂で感じながら……!
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