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第8章 反逆の狼煙
cys:191 ルミの意志と贖罪の答え
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「まさか奴は……!」
クリザリッドは、泣きじゃくるノーティスを闇を通じて見ていた。
そして、静かな部屋で一人驚愕に目を見開く。
決して忘れられぬ記憶と共に。
───あの女に、ナターシャと同じ事を……!
クリザリッドの脳裏に浮かぶ、どこまでも冷たく深い悲しみの記憶。
それにより魂を凍てつかせたクリザリッドは、覗き見ている闇をサッと閉じると、暗い部屋でギラリと瞳を光らせた。
「許さん……エデン・ノーティス! 貴様は、やはりあの男、イデア・アルカナートと同じだ!」
クリザリッドは怒りの声を上げると、必ず殺すという決意を胸に、全身から漆黒の闇のオーラを立ち昇らせ部屋を後にした。
◆◆◆
「ぐっ……うっ……ル、ルミ……うあ、ああ……ぐうっ……!!」
嗚咽を漏らすノーティスの瞳から、涙が雨のようにボタボタと零れ落ちている。
瞳を閉じたままのルミの顔に。
そんな中、メティアはあまりの悲しさに光を失った瞳を向けたまま、呆然とした顔でフラリ、フラリとノーティスに近付いた。
「ノ、ノーティス……」
「うっ……ぐぐっ……あぁぁっ……」
ルミを抱きかかえたまま、ひたすら嗚咽を漏らすノーティスの側に来たメティアの瞳に、生気が失われたルミの顔が映る。
胸からも口からも血を滲ませているのに、ルミの顔は微笑んだままだ。
「ルミ……さん……」
それがメティアの心をザクリと抉る。
愛を貫いたルミが死んだという名のナイフによって。
それによりメティアはその場にドシャッと両膝をつき、瞳にブワッと大粒の涙を浮かべた。
「うわぁぁぁぁっ!!! ルミさーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
そこから堰を切ったようにメティアは泣きじゃくった。
広間いっぱいに鳴き声を響かせながら。
そのあまりにも悲しい悲鳴が皆の心を大きく揺さぶり、皆の瞳にも涙を浮かばせた時だった。
メティア達とロウ達の間に突然漆黒の渦がブワッと現れた。
「なっ?!」
「ニャンじゃ?!」
「何でぇコイツは?!」
「何なの一体?!」
ロウ達が驚愕に目を見開き警戒心をビリビリと張り巡らしていると、その渦の中からスッと出てきた。
まるで、黄泉の国の太陽に照らされたかの如く、漆黒の艶で輝く鎧を纏ったクリザリッドが。
「愚かな者共よ……」
クリザリッドは、絶大な力と魔力が宿ると一目で分かるその瞳でロウ達を見据えた。
それと共に、皆に圧倒的なプレッシャーが襲いかかる。
瞳から放たれている、狂気に彩られた漆黒の光と共に。
その瞬間、ロウ達は一瞬で悟った。
ノーティスの言っていた事は全て真実だったと。
「くっ、なんて圧倒的な力だ……!」
「ちっ、マジだったみてぇだな。くそったれが」
「あの子の言う通り、信じる方が美しかったわね……」
「ニャッハ~~。確証がやって来たの」
ロウ達の心に、激しい後悔と警報がけたましく鳴り響く。
そんな中、ノーティスは泣くのを止め、悲壮なオーラを立ち昇らせながらユラリと立ち上がると、クリザリッドの方へサッと振り返った。
「クリザリッド!」
「哀れだな、エデン・ノーティスよ」
「なんだと!」
怒りを滾らすノーティスを、クリザリッドは断罪するような瞳の色で見下ろす。
「その女が死んだのは、お前のせいだ」
「なっ……!」
「お前が信じて貰えなかったせいで、その女は死んだ」
「くっ……」
「そう、その女を殺したのはお前だ! エデン・ノーティス!」
クリザリッドからあまりにも辛辣な言葉で心を抉られたノーティスは、思わず息を詰まらせた。
ショックで、体がフラッと倒れてしまいそうになる程に。
先程からずっと自身の心の中で感じながらも、決して認めたくない事だったから。
けれど、全身にググッと力を込めて耐える。
「そうだよ……ルミを死なせてしまったのは、俺のせいだ。俺がもっとみんなに信じて貰えてたら……」
「フンッ、分かっているなら死ぬがいい。それがお前に出来る、唯一の贖罪だ!」
そう言い放ったクリザリッドに、ノーティスはキッ! と、瞳に光を宿し睨みつけた。
「クリザリッド……! 俺は死ぬ事に恐れは無い」
「なんだと……?!」
「俺は昔、無色の魔力クリスタルのせいで皆から追放され迫害されてきた。メティアに出会わなければ、俺はあの時のたれ死んでいたさ」
「フンッ、何を……」
蔑んだ瞳で見下ろすクリザリッドを前に、ノーティスは続ける。
「それに、師匠やみんなに助けられて来なきゃ勇者になんて、成れてやしない。けど……」
ノーティスは、クリザリッドに澄んだ怒りの眼差しで決意をぶつける。
「さっきルミに言われたんだ。信じた道を進めと……! だから俺は戦う。もう、俺の後ろに悲しみは続かせない!!」
「貴様……っ!!」
ギリッと歯を食いしばり顔を歪めるクリザリッドの眼の前で、ノーティスは両手で剣の柄を持ち、胸の前で切っ先を上に向け咆哮を上げる。
「輝け! 俺のクリスタルよ!! 今こそ究極の位まで高まれ!!!」
ノーティスの額の魔力クリスタルから、ゴールドの輝きが溢れ出し全身を包んでゆく。
その隣で、アネーシャもクリザリッドを射抜くような瞳で睨みつけた。
燃え上がる闘志で、アネーシャの美しい髪がブワッと波打つ。
「クリザリッド……私も同じよ。ライトを失ったあの悲しみは、もう私で終わりにしてみせるわ! この星の未来の為に!!」
アネーシャは決意の咆哮を上げると同時に、片手を天に翳し闘気を燃え上がらせいく。
「ハァァァァッ! 舞い散る桜よ、狂い咲け!! 私の命と共に!!!」
その咆哮と共に白桜のオーラが、激しく乱れ散る桜の花びらのようにアネーシャの全身から立ち昇り、古代文字の呪符が体の周りを覆う。
そして、ノーティスとアネーシャはクリザリッドに向かいジャキッ! と、剣を構え見据えた。
揺るぎない決意をその胸に刻んで。
「クリザリッド、お前を倒し五大悪魔王の野望を必ず阻止してみせる!」
「決して無駄にはしないわ。シドとライトと……」
「そして、ルミの命を!」
ノーティスとアネーシャから放たれている闘気が混ざり合い、かつて無い強く美しい光に輝いてゆく。
その二人の姿を目の当たりにしているクリザリッドは直感した。
彼にとって、途轍もなく恐ろしい予感を。
───マズいな……この二人は覚醒しかけている。『神器』の力に!
クリザリッドは、泣きじゃくるノーティスを闇を通じて見ていた。
そして、静かな部屋で一人驚愕に目を見開く。
決して忘れられぬ記憶と共に。
───あの女に、ナターシャと同じ事を……!
クリザリッドの脳裏に浮かぶ、どこまでも冷たく深い悲しみの記憶。
それにより魂を凍てつかせたクリザリッドは、覗き見ている闇をサッと閉じると、暗い部屋でギラリと瞳を光らせた。
「許さん……エデン・ノーティス! 貴様は、やはりあの男、イデア・アルカナートと同じだ!」
クリザリッドは怒りの声を上げると、必ず殺すという決意を胸に、全身から漆黒の闇のオーラを立ち昇らせ部屋を後にした。
◆◆◆
「ぐっ……うっ……ル、ルミ……うあ、ああ……ぐうっ……!!」
嗚咽を漏らすノーティスの瞳から、涙が雨のようにボタボタと零れ落ちている。
瞳を閉じたままのルミの顔に。
そんな中、メティアはあまりの悲しさに光を失った瞳を向けたまま、呆然とした顔でフラリ、フラリとノーティスに近付いた。
「ノ、ノーティス……」
「うっ……ぐぐっ……あぁぁっ……」
ルミを抱きかかえたまま、ひたすら嗚咽を漏らすノーティスの側に来たメティアの瞳に、生気が失われたルミの顔が映る。
胸からも口からも血を滲ませているのに、ルミの顔は微笑んだままだ。
「ルミ……さん……」
それがメティアの心をザクリと抉る。
愛を貫いたルミが死んだという名のナイフによって。
それによりメティアはその場にドシャッと両膝をつき、瞳にブワッと大粒の涙を浮かべた。
「うわぁぁぁぁっ!!! ルミさーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!」
そこから堰を切ったようにメティアは泣きじゃくった。
広間いっぱいに鳴き声を響かせながら。
そのあまりにも悲しい悲鳴が皆の心を大きく揺さぶり、皆の瞳にも涙を浮かばせた時だった。
メティア達とロウ達の間に突然漆黒の渦がブワッと現れた。
「なっ?!」
「ニャンじゃ?!」
「何でぇコイツは?!」
「何なの一体?!」
ロウ達が驚愕に目を見開き警戒心をビリビリと張り巡らしていると、その渦の中からスッと出てきた。
まるで、黄泉の国の太陽に照らされたかの如く、漆黒の艶で輝く鎧を纏ったクリザリッドが。
「愚かな者共よ……」
クリザリッドは、絶大な力と魔力が宿ると一目で分かるその瞳でロウ達を見据えた。
それと共に、皆に圧倒的なプレッシャーが襲いかかる。
瞳から放たれている、狂気に彩られた漆黒の光と共に。
その瞬間、ロウ達は一瞬で悟った。
ノーティスの言っていた事は全て真実だったと。
「くっ、なんて圧倒的な力だ……!」
「ちっ、マジだったみてぇだな。くそったれが」
「あの子の言う通り、信じる方が美しかったわね……」
「ニャッハ~~。確証がやって来たの」
ロウ達の心に、激しい後悔と警報がけたましく鳴り響く。
そんな中、ノーティスは泣くのを止め、悲壮なオーラを立ち昇らせながらユラリと立ち上がると、クリザリッドの方へサッと振り返った。
「クリザリッド!」
「哀れだな、エデン・ノーティスよ」
「なんだと!」
怒りを滾らすノーティスを、クリザリッドは断罪するような瞳の色で見下ろす。
「その女が死んだのは、お前のせいだ」
「なっ……!」
「お前が信じて貰えなかったせいで、その女は死んだ」
「くっ……」
「そう、その女を殺したのはお前だ! エデン・ノーティス!」
クリザリッドからあまりにも辛辣な言葉で心を抉られたノーティスは、思わず息を詰まらせた。
ショックで、体がフラッと倒れてしまいそうになる程に。
先程からずっと自身の心の中で感じながらも、決して認めたくない事だったから。
けれど、全身にググッと力を込めて耐える。
「そうだよ……ルミを死なせてしまったのは、俺のせいだ。俺がもっとみんなに信じて貰えてたら……」
「フンッ、分かっているなら死ぬがいい。それがお前に出来る、唯一の贖罪だ!」
そう言い放ったクリザリッドに、ノーティスはキッ! と、瞳に光を宿し睨みつけた。
「クリザリッド……! 俺は死ぬ事に恐れは無い」
「なんだと……?!」
「俺は昔、無色の魔力クリスタルのせいで皆から追放され迫害されてきた。メティアに出会わなければ、俺はあの時のたれ死んでいたさ」
「フンッ、何を……」
蔑んだ瞳で見下ろすクリザリッドを前に、ノーティスは続ける。
「それに、師匠やみんなに助けられて来なきゃ勇者になんて、成れてやしない。けど……」
ノーティスは、クリザリッドに澄んだ怒りの眼差しで決意をぶつける。
「さっきルミに言われたんだ。信じた道を進めと……! だから俺は戦う。もう、俺の後ろに悲しみは続かせない!!」
「貴様……っ!!」
ギリッと歯を食いしばり顔を歪めるクリザリッドの眼の前で、ノーティスは両手で剣の柄を持ち、胸の前で切っ先を上に向け咆哮を上げる。
「輝け! 俺のクリスタルよ!! 今こそ究極の位まで高まれ!!!」
ノーティスの額の魔力クリスタルから、ゴールドの輝きが溢れ出し全身を包んでゆく。
その隣で、アネーシャもクリザリッドを射抜くような瞳で睨みつけた。
燃え上がる闘志で、アネーシャの美しい髪がブワッと波打つ。
「クリザリッド……私も同じよ。ライトを失ったあの悲しみは、もう私で終わりにしてみせるわ! この星の未来の為に!!」
アネーシャは決意の咆哮を上げると同時に、片手を天に翳し闘気を燃え上がらせいく。
「ハァァァァッ! 舞い散る桜よ、狂い咲け!! 私の命と共に!!!」
その咆哮と共に白桜のオーラが、激しく乱れ散る桜の花びらのようにアネーシャの全身から立ち昇り、古代文字の呪符が体の周りを覆う。
そして、ノーティスとアネーシャはクリザリッドに向かいジャキッ! と、剣を構え見据えた。
揺るぎない決意をその胸に刻んで。
「クリザリッド、お前を倒し五大悪魔王の野望を必ず阻止してみせる!」
「決して無駄にはしないわ。シドとライトと……」
「そして、ルミの命を!」
ノーティスとアネーシャから放たれている闘気が混ざり合い、かつて無い強く美しい光に輝いてゆく。
その二人の姿を目の当たりにしているクリザリッドは直感した。
彼にとって、途轍もなく恐ろしい予感を。
───マズいな……この二人は覚醒しかけている。『神器』の力に!
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