ブックテイマー~トップクランを追放されたので相性最悪な奴と成りあがります~

他支店

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第一話 初仕事

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「もう出て行ってくれ」

 酒場のカウンター、店主はスキンヘッドの頭をポリポリと掻くと、先ほどまでの酔っぱらいを相手するようなトーンではなく低い声で言い放つ。

「お客のためでもある」
 
 クレムとミレアはお互い顔を合わせる、確かに先ほどから客が減っていっている。お金をカウンターに置き席を立つ。縦に木目の入った扉を引こうとし手をかけると、先に反対から押される。

 左腕に見える王国軍の腕章、ミレアの腕を引くようにして扉の陰に隠れる。

「よぉ店主、今日もしけてんな!」

 入ってきた五人ほどの男たちは、当たり前のようにカウンターに入り、酒を勝手に飲み始める。最初に入ってきた男が魔法なのだろう火の玉を手に持ち店主を脅す。

「バレる前に宿に行こう」

 ミレアの耳元で囁く。外に出ると、すでに日は沈み大粒の星が輝く。人と足元に気を付けながら近くの宿までをしながら歩く。

「何、勝手に手つないでるのよ!」
「仕方ないだろ、こっちの方が自然なんだから夜男女が歩いてんのなんてそういうことだろ」
「だったらこっちのほうが良いでしょ……」

 そういうと、手を離し恋人腕組をしてくる。昔に比べ成長したそれが腕に当たるが平然を装う。表情は暗くて見えない。

「じゃあ行くぞ……」

   *   *   *

 宿に着くと、すぐに腕を離す。いつかの日と同じ、質素なベットが横並びに二つあり、間には木の古びたサイドチェストが置いてある部屋に入ると道中の話の続きをする。

「じゃあ、俺たちの目標は①、五大クランと国王に復習すること。②、あちこちで横暴を働いている国王一派を粛清すること。これでいいな?」
「もちろん!」
「そのためにも、まずはが必要になる」
「本でしょ、わかってるよずっと一緒なんだから」

 そう言いながら、直径三十センチほどの円形のを空中に作り、異空間から柔らかそうな枕を取り出す。ミレアの異空間魔法だ、入口以下のサイズであれば重さに関わらず、ほぼ無限に物を収納することができる。

「でも、不便よねあんたの魔法も一つの本から一匹までしかテイム出来ないなんて、しかも制限時間付き」
「お前も小っちゃいのしか無理だろ」

「お互いそれのせいで追放された」と笑いながら言う。

「明日はとりあえず、情報収集、変装道具、本だな!」

 そういうと、二人はベットに入る。

   *   *   *

 アルジャ王国の王都、国内外から様々な物、人が集まる。中央に大きく王宮があり北には、貴族の住宅や高級商店などの街。東には、冒険者ギルド筆頭に冒険者の街。西には一般市民の住宅や商店などの街。南には、貧困層のスラムや裏稼業、奴隷市といった、ものがある。

 南側、かび臭くごみが散乱している路地裏の店に入る二人。店の中にはすぐに鉄格子があり奥は暗く見えない。

「マスク、マント、国王一派についての情報……後、本はあるか?」

 端的に欲しいものを言う、二人が昔から使っているなんでも屋だ。

「ふぅん、嬉しいよ君たちがまた活躍するのは……」

 しゃがれた低い声で暗闇から話しかける。

「ほれ、マスク、マントだ、本は無い。文字の読めないような客しか来ないからな」

 鉄格子上部から投げられ床に落ちる。マントは黒を基調とし、バリの付いた銀色の鳩の留め具が付いている。マスクは何の装飾も施されていない黒単色だ。

「高いんじゃないか?」鳩を見ながら暗闇に話しかける。

「餞別だよ、それより国王一派についてだ、一年前トルタ国王が病死すると、直ぐに長男タリタが国王にそれからというもの、国中で国王軍の横暴が目立ち始め、五大クランの悪い噂も立ち始める。」

「分かっているのはこれだけだ」そういうと乾いた笑いを上げる。

「本についてだが、に行くと良いこの世の本が全部ある。噂で申し訳ないが過去現在未来、この世のことが全て書かれた本なんてものもあるらしい。そうそう、奴らは夜が更けたら人通りの少ない路地裏から来る……」

「じゃあ」短く返事をすると隙間から金をいくつか投げる。

「復活祝いの準備をしとくよ……」

   *   *   *

 異空間に物をしまうと南側にある宿に戻り、得た情報を元に作戦を立てる。

「まず、手元にある本は実質二つジャンボボタルタルと小熊がテイム出来る本だ、スカンクは一度使ってるせいでバレるから使えない」
「何ができるの?」
「何もできん、だから小熊を大熊にする。いたずらでよく使ったあれ覚えてるか?」
「?」
「ジャンボボタルの光で小熊の影を大きく見せる、暗い路地裏だビビらせる事は出来る」

 ミレアは飽きられたように言う

「そんな子供だましでビビらせるだけ?」
「そう、これだけだとビビらせる程度だ、だから度数の高い酒を大量に撒くビビったあいつらは、絶対に魔法を使う狭い路地裏で」
「あいつが使ってた炎魔法?」
「狭い路地裏、アルコール、強力な炎、これが合わされば全身火傷ですぐ治療しなければ死ぬだろうな」

 悪魔は声高々に笑う。

   *   *   *

 夜が更け人通りが少なくなり始めた時間、路地裏で酒をまく二人。

「ねぇ、ちょっとかかったんだけど!」
「仕方ないだろ、もうそろそろ来るからこっちにこい!」

 声を殺しながら呼びかけ石造りの路地裏で先に魔法を使う。

「来い、ジャンボボタル、小熊!」

   *   *   *

 時間が経ち、珍しく人の声が聞こえてくる。

「おい、今日も行くぞ、タダ酒ほどうまいのはねぇからなぁ」
「それより、あの女はどうなったんだよ」
「あぁ、三日は楽しめたよちゃんと男の所にも返してやったよ、結婚するらしいからな」

 何が面白いのか、五人の男たちはけたけたと笑う。

「じゃあやるぞ」

 小熊がトコトコと歩き配置に着くと、後ろにジャンボボタルが張り付き発光し始める。

「なんだ!光?」
「おい、大熊だ!」
「はぁ?ここにいる訳ないだろ!」
「じゃあなんだよあれは!」
「うれせぇ!熊なんて焼き殺せばいいだろ人間より簡単だ。ファイアーボール!」

 そういうと、男の手に大きな火の玉が浮かび真っすぐ、アルコールが大量にかかった壁に当たる。

 爆発にも近しい発火は壁から地面へ男たちの足元へ直ぐに全身を覆う。

「あ゙ぁ゙ぁあ、あづい゙だずげでぇ」
「はぁああぁ」
「あ゙」
 
 奇声を上げながら叫ぶ、服が燃え尽き、髪もほとんど無くなっている。皮膚がただれ誰か認識ができない。全員が倒れた頃やっとアルコールが燃え尽き火が消えた。

 眼球が焼け何も見えなくなった世界で、声を聴く。

「生き残れたら伝えろ、戻って来たぞ」

   *   *   *

 夜が明け、誰が言い始めたのか噂は直ぐに広がる。と。

 死に消えた噂は息を吹き返し再び人々の口をつたっていく。
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