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第四話 この世界の美
しおりを挟む「王女殿下! お久しぶりですね! 最近はあまり姿を見かけなかったので、気になっていたのです。 ところで、王女殿下はここで何を?」
人好きする笑みでアシュレイ様は私に話しかける。以前はこの顔が好きだったのよね~、なんて事を心の中で考えてハッとする。
以前は·····?
そうだわ、私、ついこの間までこの顔が好きだったじゃない·····。
前世の記憶を思い出す前、私は今目の前にいるアシュレイ様の事がかっこいいと思っていた。そして自分の事もまた、美人だと思っていた。
それが、当たり前だった。
私は誰よりも美しいと思っていた。
あの記憶を思い出すまでは·····。
前世に固執しすぎている事は分かっていた。そもそも、女性が美しくありたいと思うのは、皆に褒められたいし、認められたいからだ。じゃあ、私が今やっていることは、果たして本当に当たっているのかしら?
私はまるで冷水を思いっきり浴びせられた気分になった。何故、今までこの考えに至らなかったのか·····と。
「王女殿下?」
私がずっと黙っていたからだろう。アシュレイ様が心配そうに私の顔を覗いた。
「··········なん、でも無いわ。 今日はあまり気分が優れないの。 また日を改めて下さるかしら?」
「え、ええ。分かりました」
私の言葉にアシュレイ様はとても驚いた顔をしていた。それもそうよね、以前の私なら、アシュレイ様の前では顔を染めてまるで乙女のような反応をしていたもの。気分が悪いならそれを口実に部屋まで送って貰っていたはずよ。
でも、今はとてもそういう気分にはなれない。前世のプライドが高くて傲慢な私と今世の我儘私が変な感じで合わさって、ブサイクは絶対受け付けない体になっているんだもの。
触られたくないと思っているのよ。
私はそれ以上何も言わずに部屋へと戻った。
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