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第三話 分かり合えない

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朝起きて、私がまずやることと言えばストレッチだ。

「いち、に、さん、しー」
「王女殿下っ!?」

今日で前世を思い出して五日目。相変わらず隣でセリィが何やら騒いでいるがもう日常茶飯事だ。

「ふぅー。   セリィ、水を持ってきて」
「はい、こちらに」

そう言ってセリィは私に水を差し出す。「ありがとう」そう一言お礼を言って受け取った。





「王女殿下は何故、最近になって運動を始めたのですか?」

セリィがずっと気になっていたのですが、と控えめにそう聞いてきた。

「耐えきれなかったからよ」
私は酷く真面目な顔で応えた。

「え?」
「この身体によっ!!   こんな姿じゃ、もうどこにも行けないわ! 」

手や足、そして何より腹にでっぷりと着いた脂肪をつまみながら私は嘆いた。

しかし、セリィはそんな私に意味がわからないと言うふうに顔を顰めた。

「王女殿下。失礼ですが、お熱を測らせて貰っても?」
「熱なんて無いわよっ!」

私は全力で拒否した。

「王女殿下。では、何か問題でもありましたか?   誰かに何か言われた、とか」
「いいえ、無いわ」

キッパリと言い放つ私にセリィは少し狼狽えた。

「そ、そうですか。  なら、何故・・・」
「なぜって、決まっているじゃないっ!   私がブスだからよっ!! 」

どうして分からないの?と私はただをこねる。

(こんなの、こんな、ブサイクが、私だなんて・・・)

前世。  トップモデルとして周りにもてはやされた私には高いプライドがあった。

前世の記憶を思い出した時、そのプライドは半壊したが。

(どうして、自分のことを美しいだなんて勘違いをしていたのかしら)

有り得ない、有り得ないわ!  と私は内心叫んだ。

「王女殿下?   やはり熱が・・・」
「もう、いいわ。  下がって頂戴」

しばらく一人で考えたかった私はそう言った。

その言葉に「失礼します」そう言ってセリィは大人しく部屋を出ていった。





「これからどうしようかしら」

あれから私は何かをしていないと落ち着かない気分になり、庭まで出てきた。

とぼとぼと王宮の裏手にある、あまり人が寄り付かない場所を歩く。

──その時

「王女殿下?」と、自分のことを呼ぶ声がして振り返る。


「アシュレイ様?」

   そこに居たのは私の婚約者候補の一人である、アシュレイ・ライト様だった。
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