婚約者は醜女だと噂で聞いたことのある令嬢でしたが、俺にとっては絶世の美女でした

朝比奈

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ルーア・キャリル伯爵令嬢

世間から醜女と噂される私が恋に落ちたのは 第十話

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ギュッと握られた手の温かさに勘違いしてしまいそうになる。

ルーカスさんが本心から私のことを好ましく思っていると言ってくれのでは無いか──と。


──────────────


ルーカスさんと私は両親を待たせてあるカフェに戻ってきた。その間、ルーカスさんはずっと手を握っていてくれた。

恥ずかしさと、嬉しさ、それからこれから起こるであろう事に不安を抱きながらも、私はそれに甘え、ギュッと手を握り返した。



「あらあら、もう帰って来たの?」

「もっと、ゆっくりして来ても良かったのに・・・」

戻ってくるなり、私のお母様とルーカスさんのお母様がこちらに顔を向け、それぞれ話しかけれくれた。

実を言うと私も、もう少し二人きりの時間を過ごしたかったな、と思ったのだけれど。

「そろそろ戻りましょうか」

そう言って手を差し出してくれたルーカスさんの手を半ば無意識に取ってしまったものだから、途中で離すこともできなかったし、したくなかった。

どう反応すべきか迷った私の耳に、甘い声が聞こえる。

「別に今じゃなくても、これからたくさん、二人でいる時間はありますから」

「!」

げ、幻聴かしら!?
今なにか私にとって凄く嬉しい言葉が聞こえた気がしたのだけれど!!

ルーアは仮面のしたで目を大きく見開きルーカスさんの横顔をみた。そしてその瞬間、ルーカスさんはルーア手を引き、そのまま丁寧に席に座らせてもらった。


──ありがとう。
ルーアは顔を真っ赤にしながらも、そう素直にお礼を言おうとした。

けれど、そのままストンっと、ルーカスさんがルーアの隣に腰を下ろしたのを見て心臓がはねた。


色んな意味で、周りを見る余裕のないルーアはこの時、ルーアとルーカス以外の人がそんな二人の様子を嬉しそうに、また、ニヤニヤと眺めていることに気づかない。




「うふふ。少し心配してたけど、大丈夫だったみたいね。流石、ルーアの選んだ殿方、かしら? 」

お母様のその言葉に、まだルーカスさんの前で仮面を外すことの出来ていなかった、ルーアは、ビクッと肩を揺らした。

「ルーカス様、どうぞルーアのことをよろしくお願いしますね」

「いえいえ!お、わ、私の方こそ、まだ未熟者ではありますが、キャリル伯爵令嬢の事を幸せするために頑張りますので、よろしくお願いします!」


──どうすれば。そう冷や汗をかくルーアの気など知らず、二人は会話を交し、微笑みあっている。


普通であればお母様とルーカスさんが仲良くするのを見て嬉しくなるところなのにルーアは素直に喜べなかった。



「ルーア、・・・良い人を見つけたわね。」

しみじみと呟かれたその言葉に胸が痛い。けれど、ルーカスさんの事を褒められたのは嬉しい。

私は無意識のうちに、まだ、繋がれたままの手に力を込め、小さく返事をして頷いた。


「ルーカス様、ルーアは自身の容姿のせいで、たくさん傷ついて来ました。貴方のような、ルーアの見た目ではなく、中身を見てくれる方が、息子になってくれるのはとても嬉しいわ、ありがとう。」

お母様の私への愛情のこもったその言葉に、私は、心臓をギュッと掴まれた気がした。

(ごめんなさい、お母様。ルーカスさん。)

ルーアはつい先程の自分を恥じた。

私は、母との約束を破り、ルーカスさんに自分の姿を偽った。・・・最低ね。

お母様からの言葉に直ぐに頷かないルーカスさんを見て、私の心臓はまた嫌な音をたて始める。

お母様はそんなルーカスさんを見て、私に、視線を投げる。私はお母様の方をしっかりと見れなくて、顔を俯かせた。


そしてその瞬間、理解したのでしょう。
お母様は、まさか!と声を上げた。

「ルーア!まさかあなた、ルーカス様の前でずっと仮面をつけていたのッ!?  」


私は何も言えずにただ、頷いた。


「ルーア、約束を忘れたの?  私は、ルーカス様がルーアの顔を見ても尚、普通に接してくれるならと、言ったのよ?  ちゃんと二人で話して、決めなさいと」

「・・・はい」

申し訳なくて、または、罪悪感から涙がたまる。

「はぁ、全く・・・。ルーカス様、ルーアとの婚約は、貴方がルーアの顔に嫌悪感を出さなければ、認めますわ。私は娘に辛い結婚なんてして欲しくありませんもの」


お母様はそう言って私に仮面を外すように言った。途中から蚊帳の外になってしまったルーカスさんのご両親は突然落ちた空気に動揺しているようだけれど、黙ってことの成り行きを見ている。


ルーアはもう逃げられない、と、覚悟を決めた。



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