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ルーア・キャリル伯爵令嬢
世間から醜女と噂される私が恋に落ちたのは 第十四話
しおりを挟む「ルーカス様」
驚いて固まっている互いの両親の中。先に口を開いたのは私のお母様だった。
「一度、この石を握って貰えるかしら?」
そう言ってお母様が取り出したのは、キラキラと輝く美しい魔石。今は透明な色をしているけれど、魔力を受ければ色んな色に変わる、不思議な石だ。
「・・・?」
突拍子もない事にルーカスさんは首を傾げる。
その様子を見て「悪く思わないでちょうだい」と、前置きをしてお母様は続ける。
「ルーカス様に何か特別な魔法がかかっていないか、調べたいだけなの」
「「!」」
その言葉に、皆が目を見開く。
「お母様・・・」
私の呼び掛けにお母様はゆっくりと首を振る。
「私は何もしてません!」
それでもそう言い切れば、お母様は「ルーアを疑ってるわけじゃないの」といい困ったように眉を下げた。
今。お母様がしようとしてる事。それは、ルーカスさんに何か精神的な魔法がかかっていないか、調べるという事。
この魔石は、魔力を受ければ色を変える。その使い方は、呪いや精神系魔法にかかっているか否かの判断にも使えるのだ。
つまり、お母様は、ルーカスさんの私への反応を見て、呪いや魔術の関与を疑っているという訳だ。
私は、本当に、何もやっていない。けれど、ルーカスさんは冒険者。もしかしたら、どこかで呪いをかけられたりしたのかもしれない。
もしそうなら、今日、ルーカスさんから貰った言葉は、呪いのせいになってしまう。
せっかく見えた光が消えて無くなっていくような恐怖に私は縋るようにルーカスさんを見つめる。
「分かりました」
ルーカスさんはそう言って困ったように笑うと、私たちの目の前で魔石を握った。
・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・・・。
たった数秒が長く感じた。
30秒くらいたった時、ルーカスさんはパッと手を開き皆に見えるように魔石をテーブルの上に置いた。
色が、変わっていない?
てことは・・・。
「実は俺もこれ、持ってるんです。 職業柄、持ち歩かないと、不便ですから」
そう言ってルーカスさんはポケットから魔石を取り出した。それは、お母様がルーカスさんに渡したものよりも一回り大きくて、今握ったものよりも高値で高品質なのだと伺える。
「安心してください。呪いや魔術には、かかっていませんよ。 俺・・・私がキャリル伯爵令嬢にたいして持っている好意は、俺自身の感情です」
ルーカスさんは私のお母様にそう言って微笑むと私のほうとちらりと見てまた顔を赤くした。
魔石の色は、変わらなかった。
つまり、ルーカスさんは操られている訳では無い。
その事実から、これまでの言動が嘘では無いと確信を得られ、また心臓がうるさくなった。
「疑ってごめんなさいね」お母様がそう謝罪する。そして感謝を述べた。
「───ありがとう」
それは、たった五文字。けれど、その一言にお母様の気持ちが入っていて、凄く重く感じた。
「いえ、私は別に」
そう言ってまだ赤い顔を振りながら恥ずかしそうにルーカスさんが首を振る。
───ありがとう
そんなルーカスさんにお母様はもう一度そう言うと、涙ぐみながら今度は私に話しかける。
「ルーア、本当に、いい人を見つけたわね」
「はい」
先程聞かれた時よりも自信を持って、しっかりと答えた。
「うちの子を、ルーアをよろしくね。ルーカスさん」
「はい。必ず、幸せにします」
ルーカスさんが真剣に、そして少しだけ気恥しそうにそう言うと、お母様は満足そうに微笑んだ。
私も夢みたいで、嬉しくて、自然に頬が緩んだ。そんな私の表情を見たルーカスさんはボンッと顔を真っ赤に染めると口元を隠し何かを呟く。
そこに、ルーカスさんのご両親も加わり、話に花がさく。ついでに夜ご飯も一緒にとることになった。
私は優しくて素敵な婚約者を得たこの日を、人生で一番“幸せな日”にし、幸せな気持ちで、夜、眠りにつきました。
けれど、その幸せはまだ始まりに過ぎなかったと、この先の長い人生で沢山思い知らされるのでした。
───────────────
~完~
ルーアさんのお母様強し。そして、その他の人がほぼ空気に・・・。
とりあえず、短編のルーア視点はこれで終わりです。 後日。番外編またはその後の話を投稿予定です。
ここまで読んで頂きありがとうございました!
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