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一度目の人生
出会いは最悪でした(2)
しおりを挟む私は目の前で大きな叫び声をあげ気を失った少年⋯⋯フィンセントの前に座り込みつんつんとその頬をつついた。
「やりすぎちゃったかしら⋯⋯」
いくら意地悪をしたかったと言ってもまさか、気を失うとは思っていなかったのだ。
(まさか、虫を見せただけでこんなにビックリするなんて⋯⋯)
いつも、フォリス男爵家の近くにある森に行っては木に登ったり、虫を捕まえたりしているクリスティーナからすればダンゴムシやミミズは小さなお友達だったが、それらが一般的に気持ち悪がられるのも知っていた。
「もう、嫌われちゃったかしら⋯⋯」
クリスティーナは初めてお友達になれそうだった子を目の前に、もう謝っても怒って友達になってくれないかもしれない、と目に涙をにじませた。
そもそもクリスティーナはショックを受けていたのだ。目の前の少年に無視された事に傷ついていた。
やがて、とうとうクリスティーナの我慢していた涙はぽたぽたと床に落ちた。
そしてちょうどその時、部屋の扉が開きクリスティーナの見慣れた顔が現れた。
「お父様ッ!」
「クリスティーナ!? それに、フィンセント君もどうしたんだい!?」
クリスティーナは思わず父親に抱きついた。
後から、フィンセントの父親⋯⋯マースリー伯爵も部屋に入って来て急いでフィンセントにかけよった。そして、近くに落ちてる大量の虫に目を向けた。そして小さく驚いていたが、クリスティーナ達には聞こえていなかった。
フォリス男爵は涙を流している娘を抱き上げて事情を聞いた。
「どうしよう⋯⋯お父様。私、フィンセント君に嫌われたかもしれないわ」
「クリスティーナ。何があったんだい?」
クリスティーナはやっと落ち着いてきた涙を手で拭いながら、父親とマースリー伯爵に事情を説明した。
要約するとこうだ。
────普通に話しかけても無視されたので、ちょっとだけ意地悪しようと思って虫を集めてみせたらびっくりしたフィンセントが気を失った。
最初は倒れているフィンセントと泣いているクリスティーナに何事かと心配していた二人は事情を聞くと顔を見わあせて笑った。
「じゃあ、クリスティーナはフィンセント君が心配で泣いていたのかい?」
クリスティーナはその質問に首を横に振った。
「いいえ、お父様。フィンセント君が私の事を嫌いになったから⋯⋯、もう、お友達になれないって思ったら、悲しくなったの⋯⋯」
「それはフィンセント君から聞いたのかい?」
「え⋯⋯?」
「大丈夫だよ。クリスティーナがきちんと謝れば、きっとフィンセント君も許してくれる」
「⋯⋯ほんとに? お友達になれる?」
「ああ。きっとなれるよ」
その言葉にクリスティーナの顔はパァっと明るくなった。
「じゃあ、私、フィンセント君に謝るわ!そして、友達になってもらうようお願いするわ!」
クリスティーナが明るくなったことに、マースリー伯爵とフォリス男爵は優しい笑みを浮かべていた。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
それからクリスティーナは気を失ったフィンセントの隣に居座った。目を覚まして一番に謝ると言って譲らない娘に男爵も苦笑しながらも了承した。
隣にいるマースリー伯爵は何故かニヤニヤしていたがこの時のクリスティーナには自分がどう見られているのかは分からなかった。
やがて、フィンセントが起きるのをベットの傍に椅子をくっつけて見ていたクリスティーナはフィンセントの寝顔になんだか眠たくなってそのままベットに突っ伏したまま眠ってしまった。
そんなクリスティーナをフィンセントの隣に寝かせてあげたのは男爵か伯爵か⋯⋯。
クリスティーナは何も知らずすやすやと熟睡した。
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