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一度目の人生
出会いは最悪でした(1)
しおりを挟む「初めまして、私の名前はクリスティーナ。クリスティーナ・フォリスよ! 先日8才になったの!よろしくね、フィンセント君」
私はそう言ってにっこり笑って、目の前で不貞腐れている少年⋯⋯フィンセント・マースリーに話しかけた。
今日私はお父様に連れられマースリー伯爵家に来ていた。始めてくる場所に私は両目を輝かせて周りをキョロキョロと見ていたら、何故かお父様とマースリー伯爵に目の前にいる少年と二人きりにさせられたのだ。
「あの⋯⋯フィンセント君?」
反応がなかったのでもう一度話しかけて見る。
しかし彼は一向にこちらを見ようとはしない。
「⋯⋯」
(もしかして私、無視されているの?)
私は部屋の隅に両膝を抱えて俯いている少年の前に座り込みじっと彼を見た。そして大きく息を吸って先程よりも大きな声で言った。
「初めまして! 私の名前はクリスティーナ! よろしくね! フィンセント君!」
もしこれでも何も言ってくれなかったら、“無視”されているで確定だろう。私は、聞こえなかっただけだよね?という期待を込めてじっとフィンセントからの返事を待った。
「⋯⋯」
しかし、彼から帰ってきたのは沈黙。
(うん。これではっきりしたわね。
私、無視されているんだわ。)
優しい両親の元で育ったクリスティーナは誰かに無視されたのは初めてのことだった。だからだろうか、この時クリスティーナは心がチクチクと痛むのと同時にこの目の前の少年に意地悪をしたくなったのだ。
「無視しないでッ!」
クリスティーナは頬を膨らましながらフィンセントの手を掴んでそういった。しかし、クリスティーナの掴んだ手はフィンセントによって振り払われてしまった。
(もう、絶対許してあげない!泣いたって知らないんだからッ!)
クリスティーナは未だ顔をあげようとしないフィンセントを最後に睨みつけて、部屋から飛び出した。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
部屋から飛び出してクリスティーナが向かったのはマースリー伯爵家の庭だった。
そこでクリスティーナは草原に座り込みお目当てのものを探した。落ち葉の裏や石の裏。時には手で土をかき分けて、クリスティーナは“虫”を探した。
そして、ミミズやダンゴムシなどの虫を持っていたハンカチに入れて包んだ。
「うふふ。待ってなさい!フィンセント!これで絶対ビックリさせてやるんだから!」
私はフィンセントの虫を見て驚いた顔を想像しながらフィンセントの元へ戻った。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
────バタンッ!
そう大きな音を立てながら扉が大きく開け放たれる。その音に思わずフィンセントの肩はビクリとはねがあがった。
チラリと音がした方を見てみれば、先程出ていった少女⋯⋯クリスティーナが満面の笑みでこちらへ歩いてきた。
フィンセントはすかさず俯き、視線を合わせないようにした。そして冷たく言い放った。
「いい加減、ほっといてよ」
父親に仲良くするように言われたのか、目の前の少女は先程フィンセントに話しかけてきた。フィンセントはそれを沈黙をもって無視した。やがて少女は部屋から出ていった。
はず、だったのに。
なんでまた戻って来るの?
今はほっといて欲しいのに。
それは完全なフィンセントの八つ当たりだった。元々、ひねくれた性格をしているフィンセントは、優秀な兄に嫉妬し、自分を優先してくれない両親に対し不満を持っていた。
そしてそんな所に自分の遊び相手にと、同い年の女の子を宛てがわれたことでフィンセントは不貞腐れていた。
「⋯⋯」
ほっといて、と突き放したはずの少女からの返事がない。もう、部屋から出ていったのだろうか。フィンセントは顔を上げると目の前には綺麗なハンカチがあった。
「ふふっ。驚きなさい!フィンセント君!」
「⋯⋯え?」
(なにか、包まれてる?)
何が包まれているんだろう? と、そんなことを思っていると、クリスティーナによってそれは明かされた。
僕の目の前に姿を現したそれは大量の“虫”だった。気がつけば細長いうねうねとした物体が僕の鼻に落ち口の端についた。
「う、うわぁぁぁああああ!」
僕は初めて見る大量の虫を目の前に悲鳴をあげ気を失った。
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