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12〈ライル様side〉
しおりを挟む────いつからだろう。
いつから俺は、嫌悪や拒否感ではなく、彼女の隣に居心地が良いと思ってしまっていたのだろうか。
▽
俺には好きな人がいる。
でも。俺の好きな人には恋人がいる。
俺じゃあ、あの人には絶対に叶わない。
俺の方が先に見つけた。だとか、ずっと前から好きだった・・・・・なんて事を思ってもどうしようも無いことくらい分かっているし、今では二人の幸せを素直に願っている。
その証拠に、最初は傷んだ心も今ではあまり痛まなくなってきていた。
そんな俺には反対に嫌いな女がいる。
彼女の名前はリズベット・ダウト。
俺の大切な人達を悲しませる悪女だ。
何が楽しいのか、いつも甘ったるい声で殿下に擦り寄ってくる女。でも、それだけならまだいい。それは彼女だけでは無いのだから。
リズベット・ダウトは俺の大切な人、ソフィアをこっぴどくいじめた女だ。お茶会で紅茶をドレスにこぼしたり、バケツに入った泥水をソフィアに被せたり・・・・・
彼女の事は思い出すだけで怒りが湧いてくる。
そんな存在。
そう・・・・・だったはず・・・・・。
「ラーティル様。美味しいですか??」
なのに今のこの状況はなんだ??
彼女の手作りのマフィンを俺は試食している。
クッキーといい、パウンドケーキといい、彼女は料理が上手だ。
何故? 彼女は俺と違って貴族だ。
普通。貴族令嬢が料理なんてするのか?
俺はまた一口。マフィンを口へと運ぶ。
やっぱり美味しい。でも、ソフィアから貰った黒焦げになったクッキーの方が嬉しい・・・・・はず・・・・・。
「ラーティル様??」
「・・・・・まあまあだな」
俺はリズベット嬢の方をなるべく見ないように意識しながら手をやすめることなくマフィンを口へと運んだ。
▽
リズベット・ダウト。
俺は彼女の事が最近よく分からない。
殿下のことが好きなくせに、なんで俺に対してそんなに嬉しそうに笑うんだ?
それに。その心からの笑みは殿下にさえ見せたことが無いものじゃあ無いのか?
少なくとも俺はリズベット嬢がこんなに柔らかく笑うことが出来るなんて最近まで全く知らなかった。
────本当に、彼女の目的は殿下なのか??
・・・・・きっかけはあの時だ。
『ラーティル様。取り引きしませんかぁ~?』
突然。殿下の隣の席から俺の後ろの席へと移動してきたあの日。
その彼女の言葉をきっかけにいまのこの関係の全てが始まった。
あれからそろそろ一ヶ月が経とうとしているが、彼女は約束通り、ソフィアへのイジメをピタリととめた。
俺が彼女の暇つぶしに付き合うだけで殿下やソフィアの笑顔を守れるなら、最初はただ、それだけの為だった。
だけど今は────
「ラーティル様! 次のお菓子のリクエストとかあります?? 難しいものじゃなければある程度は全て作れますので、遠慮せず言って下さいね」
「・・・・・特にありません」
「うーん。じゃあ! 次はスコーンを作ってきますね! 私の大好物なんです!! きっと、ラーティル様も気に入りますよ!」
───こんな返し方をする俺に、懲りずに笑顔でニコニコと嬉しそうに話しかけてるく彼女の事が・・・・・
「・・・・・分かった。待ってる・・・・・」
「へっ・・・・・つっ!!? ありがとうございます!!」
「えっ??」
(なんで今。お礼言われたんだ??)
(ライル様がデレた!!キャー、!!やばい!!推しのデレをリアルで見られるなんてっ!!鼻血でてないっ!?大丈夫っ!??)
(なんで鼻を押さえるんだ? ・・・・・なんでそんなに顔を真っ赤にするんだ?)
「大丈夫か?」
「うん、ごめんね。ちょっと待って・・・・・すぐおさまるから」
────気になって仕方がない。
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
この話は出す予定では無かったのですが、せっかく書いたので少し手直しして出させて頂きました。楽しんでいただけると嬉しいです^^*
応援ありがとうございます!
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