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18、帰国準備
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誰からも、何も言われなかった。
「もう、卒業まで半年もありませんからね」
コナーは、暗にそんな尤もらしい事を理由にしようと、私の言った事を肯定してくれた。
ディーに合わせる顔が無くて、会ってしまったらどうなるか分からない自分が怖ろしくて逃げ出そうとしているのに。
「私達もそろそろ辞め時かと思っていたところです」
トマスが言えばあと二人も頷いた。
4人の優しさに胸が詰まる。
「・・・私に付き合わせてすまない。ありがとぅ」
ただ、そう言うしかなかった。
・
「はい、これで手続きは終わりました。
2年以内の復帰であればこれまでの実績が残され、ランクテストに合格すればそのままのランクで再活動できます。
ルカさんはAランクですので、ギルドとしても引退は大変残念です。気が向いたらまた登録して下さいね。
これまでおつかれさまでした。ありがとうございました」
午前10時過ぎ。ギルドの中が閑散とする時間を狙って冒険者引退の手続きをする。
パーティー登録をして約2年。全員が18歳という若さでの引退に驚かれはしたが、無理な引き留めはギルドで禁止されている為、窓口に申請すれば達成していない依頼が無いかの確認後すぐに手続きが行われる。
パーティー全員分の身分証を受け取った受付の女性に労われ、冒険者としてのルカは呆気なくいなくなった。
ギルドを出て、被ったままのフードの中で髪の色を戻す。
「寮に戻る」
「はい」
冒険者の、ディールの番のルカはもういない。
ここにいるのはティガーレル第三王子ルークス・カロン・ティガーレルだけだ。
卒業まであと半年。
帰国の準備をしなければ。
ルカの愛刀や装備はマジックバックに仕舞い込み、これからは本来の王子としての品と格を纏い、このレオドーグの貴族や商会との交流に勤しもう。
レオドーグとティガーレルは南北に隣り合う大国同士だが、国境の大山脈を境に気候や文化が見事に分かれ互いに持ちつ持たれつの良い関係が数百年と続いている。
互いに大国過ぎて同盟国としての盟約などは交わしていないが、互いの王子王女が数代おきに嫁ぎ婿入りしているとなれば実質そうだと言って過言では無い。
気候が違う為農産物はあまり被らず商人達の交流が激しいのは勿論、両国の王侯貴族が留学するのも珍しくなく、政略結婚が多くはあるが学生時代の交流が多少なりともあった夫婦の婚姻関係は良好であるようだ。
勿論留学しているのは二大国の学生だけではない。
多国籍の王族や上位貴族の交流が後の各国間の良好関係にも繋がり、この数百年周辺国での戦争が起きてはいない。
異文化が重なれば最初は勿論様々な軋轢はある。
しかしそれを拒絶ではなく互いに尊重すべきは尊重し国家間の諍いを無くすのも上にいる者としての務めだ。
私もそうならなければならない。
王位継承権を持っているとはいえ第三王子で五人兄弟の末子の私が王に就く可能性など無いに等しいし、王に成るべく育てられ皇太子として立つ長兄が将来の王に相応しいと兄弟全員が思っている。
兄の統治する世が、その先の代が現在と同じく平静な世であるように。
私は、その為に生きる。
あの手を求める自分は胸の奥深くに眠らせ、ただ祖国の為に。
・
それからは穏やかだった。
夏季休暇が終わってひと月後には各地で収穫祭が催され、更にひと月が経てばその年最初のワインの仕込みが始まりワイナリーを持つ貴族の館では収穫の祝いの夜会が開催される。
成人前なので非公式という体だが、クラスメイトから招待状を受けその幾つかに王子として顔を見せた。
当主夫妻と挨拶を交わした後は参加している貴族からの挨拶を受け、令嬢令息の紹介などもあった。
18歳が終わった次の春には成人の儀がある。
それが終われば皆婚姻の準備に入り、多くが20~23歳の内に婚姻する。
皇太子や公爵・侯爵家の後継者となればもう少し早い段階で婚約が進められるが、そうでない場合はそんなものだ。
私も例に漏れず婚約者はいない。
今夜の夜会は伯爵家の主催で、王子として公式に招待を受けるには家格が低過ぎるが、成人前の今は令息の友人として顔を見せるくらいは許される。
ここのワイナリーのワインは祖国の父も好んで飲んでいる事もあり何の躊躇も無く招待を受けたが、これは・・・。
おそらく私が今夜ここに来るのがどこからか漏れたのだろう。もしくは当主が漏らしたか。
紹介される令嬢は揃いも揃って私と同い年か歳が近い者ばかり。
まあ、大国ティガーレルの王子の妃の座は魅力的ではあろうが、私は非公式と謳って参加しているというのにこうもあからさまにされると、紹介された順に対象から外れるというものだ。
私の帰国と同時に釣書が送られてくるのだろうが、一応家名と令嬢の顔くらいは覚えて帰ろうか。
「もう、卒業まで半年もありませんからね」
コナーは、暗にそんな尤もらしい事を理由にしようと、私の言った事を肯定してくれた。
ディーに合わせる顔が無くて、会ってしまったらどうなるか分からない自分が怖ろしくて逃げ出そうとしているのに。
「私達もそろそろ辞め時かと思っていたところです」
トマスが言えばあと二人も頷いた。
4人の優しさに胸が詰まる。
「・・・私に付き合わせてすまない。ありがとぅ」
ただ、そう言うしかなかった。
・
「はい、これで手続きは終わりました。
2年以内の復帰であればこれまでの実績が残され、ランクテストに合格すればそのままのランクで再活動できます。
ルカさんはAランクですので、ギルドとしても引退は大変残念です。気が向いたらまた登録して下さいね。
これまでおつかれさまでした。ありがとうございました」
午前10時過ぎ。ギルドの中が閑散とする時間を狙って冒険者引退の手続きをする。
パーティー登録をして約2年。全員が18歳という若さでの引退に驚かれはしたが、無理な引き留めはギルドで禁止されている為、窓口に申請すれば達成していない依頼が無いかの確認後すぐに手続きが行われる。
パーティー全員分の身分証を受け取った受付の女性に労われ、冒険者としてのルカは呆気なくいなくなった。
ギルドを出て、被ったままのフードの中で髪の色を戻す。
「寮に戻る」
「はい」
冒険者の、ディールの番のルカはもういない。
ここにいるのはティガーレル第三王子ルークス・カロン・ティガーレルだけだ。
卒業まであと半年。
帰国の準備をしなければ。
ルカの愛刀や装備はマジックバックに仕舞い込み、これからは本来の王子としての品と格を纏い、このレオドーグの貴族や商会との交流に勤しもう。
レオドーグとティガーレルは南北に隣り合う大国同士だが、国境の大山脈を境に気候や文化が見事に分かれ互いに持ちつ持たれつの良い関係が数百年と続いている。
互いに大国過ぎて同盟国としての盟約などは交わしていないが、互いの王子王女が数代おきに嫁ぎ婿入りしているとなれば実質そうだと言って過言では無い。
気候が違う為農産物はあまり被らず商人達の交流が激しいのは勿論、両国の王侯貴族が留学するのも珍しくなく、政略結婚が多くはあるが学生時代の交流が多少なりともあった夫婦の婚姻関係は良好であるようだ。
勿論留学しているのは二大国の学生だけではない。
多国籍の王族や上位貴族の交流が後の各国間の良好関係にも繋がり、この数百年周辺国での戦争が起きてはいない。
異文化が重なれば最初は勿論様々な軋轢はある。
しかしそれを拒絶ではなく互いに尊重すべきは尊重し国家間の諍いを無くすのも上にいる者としての務めだ。
私もそうならなければならない。
王位継承権を持っているとはいえ第三王子で五人兄弟の末子の私が王に就く可能性など無いに等しいし、王に成るべく育てられ皇太子として立つ長兄が将来の王に相応しいと兄弟全員が思っている。
兄の統治する世が、その先の代が現在と同じく平静な世であるように。
私は、その為に生きる。
あの手を求める自分は胸の奥深くに眠らせ、ただ祖国の為に。
・
それからは穏やかだった。
夏季休暇が終わってひと月後には各地で収穫祭が催され、更にひと月が経てばその年最初のワインの仕込みが始まりワイナリーを持つ貴族の館では収穫の祝いの夜会が開催される。
成人前なので非公式という体だが、クラスメイトから招待状を受けその幾つかに王子として顔を見せた。
当主夫妻と挨拶を交わした後は参加している貴族からの挨拶を受け、令嬢令息の紹介などもあった。
18歳が終わった次の春には成人の儀がある。
それが終われば皆婚姻の準備に入り、多くが20~23歳の内に婚姻する。
皇太子や公爵・侯爵家の後継者となればもう少し早い段階で婚約が進められるが、そうでない場合はそんなものだ。
私も例に漏れず婚約者はいない。
今夜の夜会は伯爵家の主催で、王子として公式に招待を受けるには家格が低過ぎるが、成人前の今は令息の友人として顔を見せるくらいは許される。
ここのワイナリーのワインは祖国の父も好んで飲んでいる事もあり何の躊躇も無く招待を受けたが、これは・・・。
おそらく私が今夜ここに来るのがどこからか漏れたのだろう。もしくは当主が漏らしたか。
紹介される令嬢は揃いも揃って私と同い年か歳が近い者ばかり。
まあ、大国ティガーレルの王子の妃の座は魅力的ではあろうが、私は非公式と謳って参加しているというのにこうもあからさまにされると、紹介された順に対象から外れるというものだ。
私の帰国と同時に釣書が送られてくるのだろうが、一応家名と令嬢の顔くらいは覚えて帰ろうか。
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