聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

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22 森から出るためには

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俺が全速力で飛んでもクロウは余裕でついてくる。
時には前を走り進むべき道を示してくれる。


『ハルカ、疲れていないか?もうすぐ森が終わるぞ』


言われて下に降りる。


「大丈夫っぽい。多分。ちゃんと歩けてるから」

『ならば良いが。
ひとつ問題がある。
この森は王都のすぐ東の森だ。
魔物の出現が多く危険だと、国軍の騎士と冒険者ギルドの者達が見張りを立てて森の出入りを規制しておる。
資格や記録が無い者が見つかればギルドで尋問だ。
ハルカならどうとでもなるかもしれないが』

「そうなのか・・・」


危機管理がされているのは良い事だと思うが、逆に言うと入った記録が無い俺が突然森から出ていくと無断侵入で捕まるかもしれないという事だ。
うん、面倒くさい。
どうにかして見張りに気付かれないで森の外に出られないか?
さすがに消える事は出来ないしな・・・。
思いっきり気配消して鳥とかと一緒に検問の上を飛んで乗り越えちゃうとか・・・さすがに無理か?

出来るだけ物音を立てないように歩き、クロウの言う見張りの姿が見えるところで止まる。
念の為、こちらの事は認識出来ないように目くらましの魔法を掛けておく。
なんか、この二日で色んな魔法を使ってるな。
落ち着いたらレベル見ようかな。

見張りがいる場所は検問所のようになっていて、詰所のような小さな小屋もあった。
人数は二人しかいない。
まあ、魔法がある世界だから何かあった時にはそれで対応したりするのだろう。
そう考えると妥当なの、か?

見張りの小屋がある間隔はかなり広く、向こうにいるだろう人の姿は全くと言っていいほど見えない。
見張り小屋すら見えないのだから、もしかしたら間隔は数キロ単位なのかもしれない。
これなら余裕か?とも思ったが、よく目を凝らして見ると森の周りに柵のように覆う魔法の壁が見える。これは結界?
上は50メートルくらいはあるだろうか。


『結界魔法石の力だな。定期的に魔力を込めて結界を維持しておるようだ』

「これって切れ目無いのか?あったら意味ないか」

『そうだな。前に見た限りは王都を守る城壁までずっと切れ目なくあるようだぞ』

「えー・・・」


これ、さっき置いてきた男の結界みたいに壊したら大事になるよな。
王都って事は首都だろ?魔獣の襲撃から首都を守る結界って事だから、それをぶっ壊したら下手しなくても器物損壊だけじゃ済まない重罪人にされちゃうんじゃね?
そうなると取れる手段は一つしかなくなる、けど。


「クロウって、何キロある? さすがに俺が抱っこするのは無理かな・・・」

『クク・・・。我を抱いて飛ぶというのか?』

「だってそれしか方法が無くないか?」

『我は神獣だと伝えた筈だが。人の創った魔法など我には効かぬよ』

「そういえば・・・。じゃあ、どうにかしなきゃいけないのは俺だけか・・・」


ステータスを開いてウィキ擬きさんに訊く。


「隠匿とか目くらましの魔法って、完全に見えなくなるわけじゃないんだよな?」

【隠匿魔法はレベルにより精度や範囲が変わります。
現在のレベルでは全身及び自身に触れるもの全てに魔法を掛けられ、一般人にはほぼ認識される事は無いでしょう】

「完全に消える事は出来る?」

【それは出来ません】

「そっか」


簡潔な答えをありがとう、ウィキ擬きさん。
でも相当見えにくくはなるんだ。
じゃあ、手段は一つしかない。


「クロウはあの結界は簡単に抜ける事が出来るんだよな?」

『ああ』


造作もない、とちょっと得意気に言われて安心する。
それなら、あと必要なのは俺の度胸だけだ。


「じゃあ俺は、自分に目くらましの魔法を掛けながらあの結界を飛び越える」

『・・・魔法を使い始めたばかりのハルカには難しいと思うが、やるのか?』

「う・・・」


自分でも内心思ってはいた事だが、クロウに改めてはっきり言われるとさっき膨らませた度胸がしおしおと萎んでいく気がした。
でも、透明人間になれない事が分かった今、別の手段は無いんだよ・・・。
やるしかないの!


「・・・俺やる。クロウ、悪いけど俺が落っこちてきちゃったら受け止めてくれる?」

『それは勿論助けに入るが、本当にやるのか?』


そんなに心配そうにされると自分でも心配になるじゃん。
とりあえず練習はするよ?
透明にはなれないとは言われたけど、自分が透明になるイメージで魔力を纏い、そのままスゥっと上に浮かぶ。
自分の手を見てみるとうっすら透けて、輪郭がぼやけている。


「これって・・・こんなもんなの?」


思ったより全然見えてる感じなんだけど。
え?
これ見えるよな?


『じっと見ていれば見えるに決まっておるだろう?
しかし、その精度であれば動けばほぼ見えぬよ』


「本当に?」


じゃあ行けるか?
よし!

フゥッと息を吐き、ギュっと握りこぶしを作ってそのまま飛ぶイメージを固めようと目を閉じた。
その一瞬後。


『だがハルカ』


またもやクロウから声が掛かる。
え?そんな心配?
そんなに自分は頼りないんだろうかとちょっとだけ気分を落としながら瞼を上げると、クロウは少し首を傾げながら言い放った。


『さっきも言ったが、ハルカの存在は人よりも我らに近い故、このような結界は我と一緒に通り抜けられると思うが』

「ええっ?」


うっそだろ!?と思わず出てしまった大声。
直後に
―――「誰だっ!」

そうなるよねー。
出入管理が厳しいここで捕まるととても面倒くさい事になるらしいと聞いたばかり。
出来るなら捕まらずに森を出たい。
出たいがしかし、この状況で俺逃げられるか?
厳しくないか?
ここは剣と魔法が普通にあるファンタジーな世界。
生まれた時から魔法は身近なモノだった人達と、約ひと月前にこの世界に来たばかりで剣は勿論使えなくて、更には今現在自分がどのくらいの魔法が使えるのかすらよく分かってない俺との実力差は如何程なのか。
これ、多分無理だよな?


「そこにいるのは分かっている!出てきなさい!」


ガサガサと森を分け入ってくる音はどんどん近付いてくる。


「クロウ・・・」

『逃げるか?背に乗せて飛んでやるぞ?』


クロウは俺の脇腹に頭を擦り付け促してくれるが、


「そこか?」


目くらましの魔法で見えにくくなっている筈の俺の方へ確実に近付いてくる人の気配に、俺はため息をつきながら魔法を解除した。


「話せば分かってくれるかもしれないし?」

『・・・堅物に見えるがな』


小さな声で言った言葉に帰ってきた答えは、俺の眉を盛大に下げさせた。
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