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67 「ごそくじょ」ではありません
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「彼が、お前たちの恩人だ」
ずいっと前に出されてそう紹介される。
そんな恩着せがましい紹介いらなかったなー・・・。
苦笑していると、元患者の騎士の一人が俺を見て何かに気付いたのか「あ」と声を上げ、小さく指差された。
なんだ?
「どうした」
首を傾げただけの俺の代わりにアルブレヒト様が尋ねた。
すると、騎士さんはちょっと言いづらそうに「あの・・・」と切り出す。
少し前に、騎士棟にいらっしゃいませんでしたか?と。
「あの時、食堂にいらしたんですか」
「はい。・・・その、団長がお連れになっていたあの美人はどこのご息女なのかと噂が「ちょ、おいっ!」って!」
どん!と他の騎士さんに肩を押されて彼の言葉が止まったが、俺にはしっかり聞こえてしまったぞ。
「ごそくじょ」
「あの、申し訳ありません。あなた様があまりに華奢で美しいので」
騎士さんはいろいろと言い訳をしてくれてるけど、要するに俺が小っちゃすぎて男に見えなかったって事ね。
俺一応177cmあるんだけど。こっちの人間がデカすぎなんだって。
目の前には胸の厚みが俺の倍くらいあるマッチョでデカい騎士たち。
コレに比べれば確かに華奢で小さいだろうさ。
「・・・もういいです、それ以上」
「ハッ!」
騎士礼を受け隣に立つ王子様を見上げれば、すまないと小声で謝りながらもその表情はいわゆる苦笑いというやつで。
この人も俺の事小っちゃいって思ってるなと、心の中でグーパンチしておいた。
「どう見えてるのか知りませんけど、俺、男なんで」
意識して声を低くし、『俺』を強調して話すと、騎士さん達は一斉に頭を下げて「申し訳ありませんでしたっっ!!」と叫んだ。
わかりゃーいいんだよわかりゃあ。
「ハルカは美しいからな。仕方ないとはいえ、部下がすまない」
「・・・顔、笑ってますけど?」
「目の前にハルカがいてくれる事が嬉しくてな」
あらためて謝られたけど、ニヤけた顔にちょっとムカついて思いっきり睨みつけたというのに、返ってきたのは歯が浮きそうなセリフと熱い視線。そして甘い微笑だ。
「俺、男なんですけど」
「嫌だったか?」
「・・・別に」
昔なら言われ慣れた言葉だ。
幼い頃からカワイイカワイイ言われたが、子供ならどの子も同じようにそう言われて育つだろう。
だが中学に入った頃から、周りの俺を見る目が少し変わった。
「入学前に少し髪を切りなさいね」と多めにもらったお小遣い全部を欲しかったゲームに注ぎ込み、長めだった前髪はドライヤーで少しセットして真ん中を開けて入学式に臨んだ。
母親はすぐに俺の髪の長さが変わっていない事に気づき、空いたデコの真ん中にデコピンをくらわしてきたけれど、「しょうがないわね」と許してくれた。
「ま、頑張りなさい」と付け足して。
その時は単に学校の事だと思っていたのだが。
この容姿のせいで遭わなくていいトラブルもあったし、自分の顔はあまり好きではない。
ああ、爺さん神さんに顔を変えてもらうんだった・・・。
「皆さん大丈夫そうなので外に出ますね」
「ああ、私も行こう」
「だ、・・・ああ、いえ・・・お願いします」
反射的に「大丈夫です」と断ろうとしてしまったが、考えてみればここでは俺は完全なる部外者で、更に森の中に一人でいる怪しい子供だった。
さっきも思いっきり怪しまれたし・・・。結局自己紹介とか無しにテントに入っちゃったから、アルブレヒト様がついていたとはいえ訝しんでて当然だろう。
そんなことを考えながらロナールさん達側近の人に囲まれてアルブレヒト様と一緒に外に出ると、作業をしていた騎士さん達が一斉に立ち上がり、ザッと俺に向かって礼をしてきた。
「申し訳ありませんでしたっ!!」
・・・えーと。
「先程の無礼をお詫び申し上げます」
さっき俺に剣を向けてきた騎士が俺の前で片膝をつき頭を下げる。
いや、怪しいものを陣営に入れないのも見張りの役目だろうし、別に怒ってないし。
どう言ったらいいものかアルブレヒト様を見上げるも、微笑んだまま「ハルカの思うままに」と丸投げされた。
いや、あんたの部下なんだけど。
「・・・あの、とりあえず、立っていただけますか」
仕方なしに声を掛けると、彼は「はッ!」と立ち上がり、アルブレヒト様にするような騎士礼をされてしまった。
「俺は貴方に畏まられるような者ではないです。楽に立っていただいていいですから」
「は、しかし・・・」
彼はちらりと俺の隣に立つ王子様を見上げた。
ああそうか。ふらっと現れたくせに俺が王子様と自然に歩いてるから、もしかしたらやんごとなき身分の人間かもって?
「大丈夫です。ただの迷子ですので」
「ま、迷子ですか?」
「ええ、そうです。殿下に保護して頂いた、ただの迷子です。
なので、俺の事はお気になさらず。ほら、立ってください」
「・・・わかりました」
彼の腕に手を掛けそっと引くと、いまいち納得はしてない表情ながらも逆らわず立ち上がる。
その顔がちょっと赤いのは気になったけど。
急に立ち上がったから血が上ったかな?
騎士さんが完全に立ち上がったと同時、後ろから腰と手を取られてギョッとするも、相手がアルブレヒト様だと気が付いて抵抗するのはやめた。
この人の過保護は今に始まった事ではない。
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「彼が、お前たちの恩人だ」
ずいっと前に出されてそう紹介される。
そんな恩着せがましい紹介いらなかったなー・・・。
苦笑していると、元患者の騎士の一人が俺を見て何かに気付いたのか「あ」と声を上げ、小さく指差された。
なんだ?
「どうした」
首を傾げただけの俺の代わりにアルブレヒト様が尋ねた。
すると、騎士さんはちょっと言いづらそうに「あの・・・」と切り出す。
少し前に、騎士棟にいらっしゃいませんでしたか?と。
「あの時、食堂にいらしたんですか」
「はい。・・・その、団長がお連れになっていたあの美人はどこのご息女なのかと噂が「ちょ、おいっ!」って!」
どん!と他の騎士さんに肩を押されて彼の言葉が止まったが、俺にはしっかり聞こえてしまったぞ。
「ごそくじょ」
「あの、申し訳ありません。あなた様があまりに華奢で美しいので」
騎士さんはいろいろと言い訳をしてくれてるけど、要するに俺が小っちゃすぎて男に見えなかったって事ね。
俺一応177cmあるんだけど。こっちの人間がデカすぎなんだって。
目の前には胸の厚みが俺の倍くらいあるマッチョでデカい騎士たち。
コレに比べれば確かに華奢で小さいだろうさ。
「・・・もういいです、それ以上」
「ハッ!」
騎士礼を受け隣に立つ王子様を見上げれば、すまないと小声で謝りながらもその表情はいわゆる苦笑いというやつで。
この人も俺の事小っちゃいって思ってるなと、心の中でグーパンチしておいた。
「どう見えてるのか知りませんけど、俺、男なんで」
意識して声を低くし、『俺』を強調して話すと、騎士さん達は一斉に頭を下げて「申し訳ありませんでしたっっ!!」と叫んだ。
わかりゃーいいんだよわかりゃあ。
「ハルカは美しいからな。仕方ないとはいえ、部下がすまない」
「・・・顔、笑ってますけど?」
「目の前にハルカがいてくれる事が嬉しくてな」
あらためて謝られたけど、ニヤけた顔にちょっとムカついて思いっきり睨みつけたというのに、返ってきたのは歯が浮きそうなセリフと熱い視線。そして甘い微笑だ。
「俺、男なんですけど」
「嫌だったか?」
「・・・別に」
昔なら言われ慣れた言葉だ。
幼い頃からカワイイカワイイ言われたが、子供ならどの子も同じようにそう言われて育つだろう。
だが中学に入った頃から、周りの俺を見る目が少し変わった。
「入学前に少し髪を切りなさいね」と多めにもらったお小遣い全部を欲しかったゲームに注ぎ込み、長めだった前髪はドライヤーで少しセットして真ん中を開けて入学式に臨んだ。
母親はすぐに俺の髪の長さが変わっていない事に気づき、空いたデコの真ん中にデコピンをくらわしてきたけれど、「しょうがないわね」と許してくれた。
「ま、頑張りなさい」と付け足して。
その時は単に学校の事だと思っていたのだが。
この容姿のせいで遭わなくていいトラブルもあったし、自分の顔はあまり好きではない。
ああ、爺さん神さんに顔を変えてもらうんだった・・・。
「皆さん大丈夫そうなので外に出ますね」
「ああ、私も行こう」
「だ、・・・ああ、いえ・・・お願いします」
反射的に「大丈夫です」と断ろうとしてしまったが、考えてみればここでは俺は完全なる部外者で、更に森の中に一人でいる怪しい子供だった。
さっきも思いっきり怪しまれたし・・・。結局自己紹介とか無しにテントに入っちゃったから、アルブレヒト様がついていたとはいえ訝しんでて当然だろう。
そんなことを考えながらロナールさん達側近の人に囲まれてアルブレヒト様と一緒に外に出ると、作業をしていた騎士さん達が一斉に立ち上がり、ザッと俺に向かって礼をしてきた。
「申し訳ありませんでしたっ!!」
・・・えーと。
「先程の無礼をお詫び申し上げます」
さっき俺に剣を向けてきた騎士が俺の前で片膝をつき頭を下げる。
いや、怪しいものを陣営に入れないのも見張りの役目だろうし、別に怒ってないし。
どう言ったらいいものかアルブレヒト様を見上げるも、微笑んだまま「ハルカの思うままに」と丸投げされた。
いや、あんたの部下なんだけど。
「・・・あの、とりあえず、立っていただけますか」
仕方なしに声を掛けると、彼は「はッ!」と立ち上がり、アルブレヒト様にするような騎士礼をされてしまった。
「俺は貴方に畏まられるような者ではないです。楽に立っていただいていいですから」
「は、しかし・・・」
彼はちらりと俺の隣に立つ王子様を見上げた。
ああそうか。ふらっと現れたくせに俺が王子様と自然に歩いてるから、もしかしたらやんごとなき身分の人間かもって?
「大丈夫です。ただの迷子ですので」
「ま、迷子ですか?」
「ええ、そうです。殿下に保護して頂いた、ただの迷子です。
なので、俺の事はお気になさらず。ほら、立ってください」
「・・・わかりました」
彼の腕に手を掛けそっと引くと、いまいち納得はしてない表情ながらも逆らわず立ち上がる。
その顔がちょっと赤いのは気になったけど。
急に立ち上がったから血が上ったかな?
騎士さんが完全に立ち上がったと同時、後ろから腰と手を取られてギョッとするも、相手がアルブレヒト様だと気が付いて抵抗するのはやめた。
この人の過保護は今に始まった事ではない。
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