聖女じゃないのに召喚された俺が、執着溺愛系スパダリに翻弄される話

月湖

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68 伸ばされた手

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あれから、集まっていた騎士さん達をアルブレヒト様が解散させ、俺はといえば陣営の中央に立てられたアルブレヒト様用のテントに連れられてきていた。
勿論クロウも一緒だ。


「先程は部下の命を繋げてくれてありがとう」


アルブレヒト様は俺だけを簡易な椅子に座らせると俺の手を取り、跪いてその甲に唇を寄せた。
蒼い瞳が熱く俺を見つめ、柔らかな唇が触れると同時に瞼が下りてゆく。
ぎょっとはしたが感謝の気持ちを無碍に扱うのもとどうかと思い、そのまま受けたのだが。


「・・・・・」


―——―――あの。長いんですけど。

映画とかで見た騎士のこいうのって、触れるか触れないかでチュッとやってサッと離れたように記憶してるんだけど。
かれこれ10秒くらい経ちますが。


「・・・アルブレヒト様?」


更に数秒経ち、いいかげん声を掛けると目を開けた彼は、最後名残惜しそうにチュッと音を立てて唇を離した。
立ち上がっても手は離してもらえていない。
アルブレヒト様は俺の手を握ったままその蒼い瞳を俺に向け、蕩けるように優しく微笑んだ。
初心な女の子なら、その微笑ひとつでコロッと恋に落ちるだろう。


「・・・ハルカの手は、奇跡を齎す手だな」


そうしてまたチュ、とキスをされる。


「私自身に、甥に次いで部下達まで。こんなに華奢な手なのに・・・私は、君に助けてもらってばかりだ」


微笑の中、眉が中央に寄り眉間に浅くシワを作る。
・・・アルブレヒト様から見れば俺は子供で、そんな子供に助けられるのは大人の沽券に関わるって事かな。
でも、見ない振りなんて出来ないし・・・。
そんなことを考えていると、俺の手に触れているアルブレヒト様の手にグッと力が入り、少し痛いくらいに手を握られた。
そして、強い視線が俺を射抜いてくる。


「・・・な、に」


いつにない彼の様子に反射的に後ろに下がったが、握られた手がそれ以上離れるのを許してくれない。


「ハルカ・・・」
「離してください・・・っ」
「ハルカ」
「うわ・・っ!」


グイっと腕を引いても手は抜けなくて、逆に手を引かれて腕の中に引き込まれる。


「ハルカ」
「殿下っ!」
「アルブレヒトだと言っただろう。長くて言い辛ければアルでもいい」
「離してください!」
「出来ない」
「なんで!」


両腕が背中に回され、大きな体に包み込まれる。
両手を突っ張ろうとしてもビクともしない力が怖かった。


「ハルカ。離したらまた君は一人で行ってしまうんだろう?」
「そりゃ、うちにかえ「嘘だ」」
「っ!」


被せられた断定的な言葉にひゅっと息が詰まる。


「・・・一度は信じても、さすがに二度となれば嘘だと分かる」
「・・・」
「こんな危険な森でこんな短期間に二度も遭遇すればね。しかも、この場所はまるで聖域のように空気が澄んでいる。・・・エドワードの治癒をした直後の、あの部屋のような。ここを作ったのは君だろう?」
「そんなの」
「ハルカ、君はこの森で、何をしようとしている?何が起きようとしているんだ?」
「・・・」


言い募られても口を噤むしかない。
そんなの、言えるわけない。
あなたたちが心酔している神獣の所為で、この国が闇に沈むかもしれないなんて。


「ハルカ」
「知りません」


少しだけ腕が緩められ、上から顔を覗き込まれる。
見えた表情は苦渋に満ちて、そしてそれ以上に、悲しそうだった。


「・・・・・私は、そんなに頼りないか?」





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