朝が来るまでキスをして。

月湖

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135 お願い side hikaru

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気持ちヨさに意識が飛びそうになるのをどうにか耐え、ずっとずっと言いたかったことを口にした。

多分、今夜を逃したらまたきっと言い出せなくなる。


お願いだから。

抱くならちゃんと『男』の『俺』を抱いてよ。


俺のを握ったままの彼の手を強く握り、そう思いながら見つめる。



「ナガ、っあぁ・・っ」



薄く笑って、返事が無いまま再開される愛撫。



「ふ、あっ・・ん!」



鈴口に指を掛けられ、出口を塞ぐように強く抑えられる。


やっぱり無理なのか―――。


どうしようも無い虚しさが心を占め、それでも慣らされたカラダは彼の愛撫を欲しがって奥が疼いてくる。

泣きたいわけでもないのに視界がぼやけてきて、咄嗟に目を閉じ、自由な腕で顔を覆おうとした―――時。



「ふふ」



可笑しそうな、彼の笑い声が耳に届いた。



「っなに、が、可笑しいんだよ・・っ」



ぼやけた視界の中、最後の強気で彼の目を見返すと



「なに・・・」



目の前にあったのはいつもの冷たい笑みではなく、どこか優しい笑顔。

気色ばんだ自分がどこかへ行ってしまうほどに。



「そんな、俺の事好き?」



そして、彼はその笑顔のままそんな事を言う。

・・・今更、そんなの訊く?

でも、いつにない優しいその瞳に魅入られて、俺は心のままを口にしてしまう。



「好きだよ・・・」



握った手の、俺のの先に掛かった人差し指を握る。



「だから、・・・お願い」



この願いを口にするのは今が最後。

今がダメなら、二度と言わない。

アナタがちゃんと俺を見てくれるまで我慢するから。



「ね・・ぇっ」



言った瞬間、ぽろりと不本意な涙が落ちる。

こんな女々しい姿を見せたいわけじゃないのに。

こんな事なら灯りをつけてなんて言わなきゃよかった。

俺は彼の手を放し、今度こそ腕で顔を覆った。



「・・・っ」



情けなくも一つ目の嗚咽が漏れた直後。



「っんぁ・・っ」



彼の手の動きが再開され、片足を大きく開かされた。

その瞬間



「いやだ・・っ」



反射的に言ってしまうと、彼の手が止まる。



ああ、やってしまった。

もう終わりかも。



目を閉じながらそう思ったその時。



――――「舐められたいんだろ。やりづらいから足開けって」



彼の口から出た、信じられない言葉が耳に飛び込んできた。



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