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兼崎さんと意外な繋がり
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「白沢さんって、本庄課長とお付き合いされてるんですか」
「えっ?」
突然の問いかけに振り向くと、いつもなら始業時間ぎりぎりに出勤しているはずの兼崎さんがいた。出勤してデスクにバッグを置いたばかりの私の手が、空中で停止する。
彼女は私の席すぐ横に立っていた。いつの間に。
フロアを照らす白い朝日の中で、彼女は人懐こそうな笑顔を浮かべていた。
だけど、その表情にはどこか棘があるように見える。
聞かれるだろうとは、思ってたけど……。
予想通りの展開に私は朝一番から内心溜め息を吐き出した。
こうまで考えていた通りだと、その後の課長の予想も全て的中しそうで少し怖くなる。
———昨日、課長に【何事もなく】アパートへ送ってもらった際、車の中でこういった場合の対処法をどうするか二人で話し合いをした。
結論としては『毅然と、潔く」。
この二つになった。
本庄課長が二度目の告白で言ってくれた言葉にあった通り、私達の交際は結婚前提、もしくはそれを考えてのものであるとこの際話してしまおう、ということになった。
これはお互いにメリット・デメリットがあるのを覚悟しての事だ。
まあ、課長は「君の虫除けにもなるからちょうど良い」なんて言っていたけど……。
虫ってもしかして松田さんの事を言ってたのかしら。わからないけど。
課長は私が嫌なら聞かれても否定して、交際も隠したままでも良いと言ってくれたけど、私も彼のことを好きになってしまった以上、それは逆にしたくなかった。
なので相談の結果『真剣交際なので見守っていて下さい』の体をとることにしたのだ。
「どうなんですか」
笑顔で首を傾げながら、兼崎さんが私に詰め寄った。目が笑っていない。
表情と態度が違いすぎて頭が混乱しそうだ。
これまで働いてきてこういうシーンを目にした事が無かったわけではないけれど、まさか自分が当事者になるとは。
人生ってわからないものである。
「そうよ。課長に聞いてくれてもいいわ」
返事をして、平然を装い机に置いたバッグからスマホやメイクポーチなどを取り出す。
昨日の仕事は残していないけど、始業時間十分前にはデスクの上を仕事モードにセットするのが私の日課だ。
「ふうん……へぇ、そーなんですか」
私がパソコンの電源を入れていると、横で兼崎さんが笑った気配がした。
それはどこか、嘲笑を含んでいるように思えた。
なんともない風に顔を向けると、彼女の満面の笑顔が目に入る。白い朝日がフロアを照らし、他に出勤してきた社員や彼等が放つざわめきを包んでいた。
「営業課の松田さんに昨日の件、聞いただけだったんで、噂かなーって思ってたんですけど、本当だったんですね」
「松田さんと知り合いなの?」
突然飛び出た名前に驚いて、思わず聞いてしまった。すると、兼崎さんはにんまり笑って華奢な手を口元に当てた。そしてふふふ、と含みのある笑みを零す。
「はい♪ 前に営業の人達と合コンした事があって♪ でも……あ~あ。松田さん可哀想。白沢さんに気があったみたいなのに」
「そう、なの……」
意外な繋がりと振られた話に、答え辛くて困惑した。それにもうほとんどの社員が出勤してきているのに、彼女はこの話をまだ続けるつもりなんだろうか。
もう話を終わらせたいとの意味を込めて、私はデスクチェアに腰掛け引き出しを開ける仕草をした。
「兼崎さん、そろそろ始業準備しないとーーー」
「白沢さんは松田さんに乗りかえる気ありません?」
「えっ」
言葉を遮られたのと言われた意味がわからなくて一瞬きょとんとしてしまった。
すると、兼崎さんはそんな私の顔を見て子供がするようにぷっと吹き出し、声を上げて笑った。
「あははっ! ないですよねっ。すみません変なこと言って。それじゃ、また♪」
固まる私を無視して兼崎さんは自分のデスクの方へと軽やかに歩いて行く。
彼女のヒールの足音が、騒がしい筈の朝のフロアでやけに耳に大きく聞こえていた。
「えっ?」
突然の問いかけに振り向くと、いつもなら始業時間ぎりぎりに出勤しているはずの兼崎さんがいた。出勤してデスクにバッグを置いたばかりの私の手が、空中で停止する。
彼女は私の席すぐ横に立っていた。いつの間に。
フロアを照らす白い朝日の中で、彼女は人懐こそうな笑顔を浮かべていた。
だけど、その表情にはどこか棘があるように見える。
聞かれるだろうとは、思ってたけど……。
予想通りの展開に私は朝一番から内心溜め息を吐き出した。
こうまで考えていた通りだと、その後の課長の予想も全て的中しそうで少し怖くなる。
———昨日、課長に【何事もなく】アパートへ送ってもらった際、車の中でこういった場合の対処法をどうするか二人で話し合いをした。
結論としては『毅然と、潔く」。
この二つになった。
本庄課長が二度目の告白で言ってくれた言葉にあった通り、私達の交際は結婚前提、もしくはそれを考えてのものであるとこの際話してしまおう、ということになった。
これはお互いにメリット・デメリットがあるのを覚悟しての事だ。
まあ、課長は「君の虫除けにもなるからちょうど良い」なんて言っていたけど……。
虫ってもしかして松田さんの事を言ってたのかしら。わからないけど。
課長は私が嫌なら聞かれても否定して、交際も隠したままでも良いと言ってくれたけど、私も彼のことを好きになってしまった以上、それは逆にしたくなかった。
なので相談の結果『真剣交際なので見守っていて下さい』の体をとることにしたのだ。
「どうなんですか」
笑顔で首を傾げながら、兼崎さんが私に詰め寄った。目が笑っていない。
表情と態度が違いすぎて頭が混乱しそうだ。
これまで働いてきてこういうシーンを目にした事が無かったわけではないけれど、まさか自分が当事者になるとは。
人生ってわからないものである。
「そうよ。課長に聞いてくれてもいいわ」
返事をして、平然を装い机に置いたバッグからスマホやメイクポーチなどを取り出す。
昨日の仕事は残していないけど、始業時間十分前にはデスクの上を仕事モードにセットするのが私の日課だ。
「ふうん……へぇ、そーなんですか」
私がパソコンの電源を入れていると、横で兼崎さんが笑った気配がした。
それはどこか、嘲笑を含んでいるように思えた。
なんともない風に顔を向けると、彼女の満面の笑顔が目に入る。白い朝日がフロアを照らし、他に出勤してきた社員や彼等が放つざわめきを包んでいた。
「営業課の松田さんに昨日の件、聞いただけだったんで、噂かなーって思ってたんですけど、本当だったんですね」
「松田さんと知り合いなの?」
突然飛び出た名前に驚いて、思わず聞いてしまった。すると、兼崎さんはにんまり笑って華奢な手を口元に当てた。そしてふふふ、と含みのある笑みを零す。
「はい♪ 前に営業の人達と合コンした事があって♪ でも……あ~あ。松田さん可哀想。白沢さんに気があったみたいなのに」
「そう、なの……」
意外な繋がりと振られた話に、答え辛くて困惑した。それにもうほとんどの社員が出勤してきているのに、彼女はこの話をまだ続けるつもりなんだろうか。
もう話を終わらせたいとの意味を込めて、私はデスクチェアに腰掛け引き出しを開ける仕草をした。
「兼崎さん、そろそろ始業準備しないとーーー」
「白沢さんは松田さんに乗りかえる気ありません?」
「えっ」
言葉を遮られたのと言われた意味がわからなくて一瞬きょとんとしてしまった。
すると、兼崎さんはそんな私の顔を見て子供がするようにぷっと吹き出し、声を上げて笑った。
「あははっ! ないですよねっ。すみません変なこと言って。それじゃ、また♪」
固まる私を無視して兼崎さんは自分のデスクの方へと軽やかに歩いて行く。
彼女のヒールの足音が、騒がしい筈の朝のフロアでやけに耳に大きく聞こえていた。
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