婚約破棄された紋章官家の令嬢は、王太子妃候補の紋章が偽物だと知っている

シラクサ

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第二章 見抜いた男前編

 ヴァルモン家の屋敷は、夜更けの冷たさを、そのまま石に沁み込ませたように沈んでいた。

 門灯の火は細く、風もないのに頼りなく揺れている。
 王宮の明るさに目を馴らしたまま帰ると、こういう家の灯りは、火というより記憶に近かった。
 人を迎えるためにあるのではなく、まだここに家があるのだと知らせるだけの光である。

 馬車が止まると、玄関の扉はすぐに内から開いた。
 夜着の上に上衣だけを羽織った若い従者が、目を伏せたまま足台を出す。
 彼は何も言わなかった。言わぬかわり、その沈黙がすべてを告げていた。
 もう知れているのだ。王宮で起きたことは、火事より早く、火傷より静かに、ひとつの家の中へ入ってくる。

 セルウィリアはヴェーラの手を借りず、自分で降りた。裾が石段に触れる音だけが、やけに明るく聞こえる。

「旦那様が、お書斎でお待ちです」

 従者はようやくそれだけ言った。

 セルウィリアは頷いた。ヴェーラは無言のまま、外套の端についた夜気を払うように、指で軽く叩いた。

 玄関を入ると、蝋の匂いと、磨き込まれた木の乾いた香りがした。
 昼の屋敷には人の気配が幾層にも重なっているものだが、夜のそれは薄い。
 誰かが息を潜めている気配だけが、壁や敷物のあいだに残る。大きな時計の振子の音が、一つ一つ部屋の空隙を測るように鳴っていた。

 レオニード・ド・ヴァルモンの書斎は、廊下の突き当たりにある。
 紋章院から持ち帰った書類を一時置くため、父は他の部屋よりもこの部屋の火だけは遅くまで絶やさなかった。
 扉の下から漏れる灯りは、いまも細く床を照らしている。

 セルウィリアが軽くノックをすると、すぐに低い声が返った。

「入りなさい」

 彼女は扉を開けた。

 部屋の中は暖かかったが、そこに坐る父の姿には少しも柔らかさがなかった。
 レオニードは夜会用の礼服を脱いでおらず、ただ首もとの装飾だけを外している。年を重ねた男の肩には、布の重みよりも習慣の重みがよく残る。
 机の上には二通ほど封の切られた手紙が置かれ、燭台の火がその縁を黄に染めていた。

 父は立ち上がらなかった。
 ただ、疲れたように目を上げた。その目には心配があった。
 けれど、その心配は娘へまっすぐ向く前に、家名や体面という幾枚もの薄い布を通ってしまっていた。

「座りなさい」

 セルウィリアは勧められた椅子へは座らず、机の前に立ったまま言った。

「このままで結構です」

 レオニードはそれを咎めなかった。
 怒る気力も惜しいのか、あるいは今の彼女へ父の権威を持ち出しても意味がないと分かっていたのかもしれない。

「今夜のことは、聞いている」

「そうでしょうね」

「ボーモン家からの使いはまだ来ていない。だが、来なくても分かる」

 父は手紙の一つへ目を落とした。
 おそらく既に誰かが耳打ちしたのだろう。あるいは、ドミトリ自身が言い含めたか。
 いずれにせよ、夜会で起きた破談は、本人の口からではなく、他人の整えた形で家へ届く。そういうものだ。

「不本意な話だ」

 レオニードは言った。
「ヴァルモン家にとっても、お前にとっても」

 セルウィリアはその語順を聞いた。
 家が先で、自分はあとである。
 今さら胸の奥が動くほどのことではなかったが、こういう夜には、ささいな言い回しが細い刃になる。

「その不本意さを、父上はどちらに重く置かれますか」

 レオニードは沈黙した。燭火がひとつ、ひくく鳴った。

「今は、言葉を選ぶべきだろう」

「もう十分に選ばれております」

「セルウィリア」

 名を呼ぶ声に、父としての調子が少しだけ戻った。
 だがそれも長くは続かなかった。彼は机上に置かれた指先を組み直し、息を抑えるように吐いた。

「お前が傷ついていることは分かっている」

「そう見えますか」

「見えるさ」

「では、なぜお立ちにならなかったのです」

 言ったあとで、自分でも少し驚いた。責めるつもりで来たわけではなかった。
 だが今、父の目の前に立つと、夜会のあの瞬間に広間のどこかに父の姿を探した自分が、まだ胸の底に残っているのだと知れた。

 レオニードはすぐには返さなかった。
 彼の視線は一度だけ机上の書類へ落ち、また戻った。

「私は紋章院の長として、王宮の場で騒ぎを大きくするわけにはいかなかった」

「娘の婚約破棄は、騒ぎではないと」

「そういう意味ではない」

「ではどういう意味でしょう」

 父の顔に、微かな疲れが濃くなった。
 怒りではなく、もっと古いものだった。長く同じ秩序に従って生きた人間が、その秩序の卑小さを知りながら、なおそこから出られないときの疲れ。

「君も分かっているはずだ。王宮では、正しいことを正しい順に言わねばならない」

「今夜の私には、その順番が無かったと」

「……あったとしても、持たせてはもらえなかった」

 その言い方は、半ば言い訳で、半ば告白だった。

 セルウィリアは静かに父を見た。
 彼は、自分の弱さを自分で知っている。そして知っていながら、その弱さに別の名を与えて生きてきた人間だった。
 慎重。分別。秩序。そういう、聞こえのよい語で。

「お前には今、余計な口を利かぬことを勧める」

 レオニードは、ようやく本題へ戻るように言った。
「今夜のことだけでも、明日には街中へ広がる。そこへおまえが何かを言えば、みすみす嫉妬に狂った破談の娘という形を与えられる」

 セルウィリアは少し俯いた。
 その通りだ、と理性は言う。
 けれど、胸の別のところでは、それが父の第一声であることに、どうしても冷たさを覚える。

「もし」

 彼女は、ゆっくりと口を開いた。
「嫉妬ではなく、誤りだとしたら」

 レオニードの目が、初めてはっきりと彼女の顔を捉えた。

「何の話だ」

「サン=クレール嬢の紋章です」

 ほんの一瞬、部屋の空気が変わった。
 父の背筋がわずかに強張る。職務に関わる語が、私人としての会話へ混じり込んだ瞬間の反応だった。

「……どう見た」

「胸元の副紋章に銀狼がございました」

「見違えだ」

「いいえ」

 即座に否定すると、レオニードの眉が寄った。
「夜会の灯りの下だ。刺繍の色も、金糸の影も、いくらでも見誤る」

「見誤りません」

 父は黙った。娘の声に迷いがないことを、誰より彼自身が知っているからだった。

「ラズロウ伯家の女系を経た筋でなければ、あの副紋章は使えません」

「それも承知している」

「サン=クレール家の現当主筋に、その接続はありません」

 レオニードはすぐには答えなかった。
 彼の沈黙は、知らぬ沈黙ではなかった。むしろ逆だ。職務の記憶が頭の中を往き来している時の沈黙だった。
 セルウィリアはそれを聞いていた。聞き慣れていた。

「……今夜は疲れている」

 やがて父は、少し掠れた声で言った。
「記憶は、疲れの上ではときに先走る」

「では明日、記録を見せてくださいませ」

 レオニードは顔を上げた。そこに初めて、娘ではなく紋章院に関わる者を見る目が差した。

「なぜだ」

「確かめたいからです」

「確かめて、どうする」

「それは、確かめてからでなければ」

「セルウィリア」

 父は低く名を呼んだ。
「この話は、軽いものではない。王太子殿下の婚約に関わることだ。思いつきで触れてよいことではない」

「だからこそ、記録を見るのです」

「記録を見たところで、今のおまえに何が出来る」

 その一言は、思いのほか鋭く刺さった。
 今のおまえに。
 婚約を切られ、夜会から退いたばかりの娘に。肩書を持たぬ補佐に。表に立つ資格のない女に。

 セルウィリアは目を伏せた。怒りよりも先に、疲れがあった。今夜ひと晩で、自分の立場というものをいくつも見せつけられすぎたせいかもしれない。

「おやめなさいませ、旦那様」

 背後からヴェーラの声がした。

 いつ入ってきたのか、老侍女は扉の脇に立っていた。
 父娘のあいだに割って入ることを少しもためらわぬ姿は、昔と変わらない。
 レオニードは露骨に眉をひそめたが、叱責はしなかった。
 彼女には若い頃から幾度も秩序を乱され、そのたびに、奇妙なことに事態の核心だけは彼女の言葉にあったからだ。

「侍女が口を挟むことではない」

「侍女でも目くらではございません」

 ヴェーラは言った。
「お嬢様が見たと仰るなら、見ておられたのでしょう。旦那様はそれを知っておいでのくせに、知らぬふりをなさる」

「ふりをしているのではない。慎重を求めている」

「慎重というのは、足を止める言い訳には便利でございますね」

「ヴェーラ」

 セルウィリアが小さく制すると、老女は肩を竦めた。
 しかし口もとには、まだ棘が残っている。

 レオニードは立ち上がった。
 さすがに年相応の疲労が背中に滲んでいたが、その顔には父でも長でもない、追い詰められた男の色が出ていた。

「記録は見せる」

 短くそう言った。
「だが、今夜ではない。明日の午後だ。それまでは、このことを誰にも話すな」

 セルウィリアは、そこでアレクセイの顔を思い出した。あの控え間で交わした短い約束を。
 けれどそれを今ここで父へ言うことは出来なかった。
 出来ぬというより、まだ言う順ではないと感じた。順を誤れば、父は記録そのものを閉ざすだろう。

「承知いたしました」

 そう答えると、レオニードは安堵したようでもあり、さらに疲れたようでもあった。
「もう下がりなさい。今夜は休め」

 休め、と言われて休める夜なら、世の大半の悲劇は翌朝には消えている。

 セルウィリアは一礼して、書斎を出た。ヴェーラもついてくる。
 廊下へ出た途端、室内の熱は扉の向こうへ置き去りにされ、石壁の冷たさが頬へ戻った。

 しばらく二人は黙って歩いた。
 彼女の部屋は東の翼にあり、夜更けの屋敷は、歩くほど静けさが濃くなる。

「旦那様は、お嬢様をお守りになる気はございませんね」

 ヴェーラが言った。

「そういう言い方はおやめ」

「事実でございます」

「父上は、父上なりに」

「ええ。父上なりに、でございますとも。いつだって」

 ヴェーラの声は乾いていた。
 けれど、ただの悪意ではない。長いあいだ、同じ家の中で同じ人物の弱さを見続けてきた者だけが持つ、苦い正確さだった。

 セルウィリアは歩を止めなかった。
 止めると、その場で何かが崩れそうな気がした。

「旦那様は、お嬢様のお力を知らぬわけではございません」

 ヴェーラは続けた。
「ただ、それを声に出して守るほどには、強くない。昔からそうでした」

 昔から。
 昔からその言葉に、幼い頃のいくつかの光景が、古い硝子のように胸の底へ浮いた。
 書記机の脇で父の走り書きを清書したこと。誤記を一つ見つけて、褒められはしたが、来客の前では黙っているよう言われたこと。紋章台帳を一晩で整理し直した朝、父は何も言わず、その成果を「紋章院の見直し」として提出したこと。

 恨んではいないつもりだった。だが、恨まずに済むことと、忘れていることとは違う。

 彼女の部屋へ入ると、ヴェーラは火を見、窓の留め金を確かめ、夜着を用意しながらも、主人を寝かせようという穏やかさを少しも見せなかった。

「明日、王宮へお出かけになるのでしょう」

 衣装箪笥の引き出しを開けながら、老女が言った。

 セルウィリアは鏡台の前で耳飾りを外していた手を止めた。
「……なぜそう思うの」

「お顔に書いてございます」

「そんなに分かりやすくは」

「ええ。普段なら」

 ヴェーラは振り返り、鼻で笑うように言った。
「ですが、お嬢様は今夜、捨てられた娘の顔ではなく、面倒なことを見つけた時のお顔をしておいでです」

 セルウィリアは何も言えなかった。

 鏡の中の自分は青白く、目もとに疲れを溜めていた。傷ついていないようには見えない。
 けれど、それ以上に、何かを考えている顔だった。ヴェーラの言う通り、痛みに沈み込むより先に、見てしまった誤りの方へ心が引かれている。

「第二王子殿下が関わっておいでですね」

 今度は問いではなかった。

「……見ていたの」

「見ておりましたとも」

 ヴェーラは平然と答えた。
「お嬢様があのような男と二人きりで話しておられるのを、見ずに帰れるほど私は老いておりません」

「二人きりでは」

「扉は半ば開いておりました。あの方なりの分別でございましょう」

 セルウィリアはようやく耳飾りを卓へ置いた。
 小さな金具が、硬い天板に触れて短い音を立てる。

「明日、書庫へ来るよう仰ったわ」

「それでございますか」

 ヴェーラは頷いた。
 その頷き方に、驚きはほとんど無かった。半ば予測していたのだろう。

「行かれますね」

「ええ、行くわ」

「結構」

 老女は夜着を椅子へ置きながら、ぽつりと言った。
「あの方が信用に足るかどうかはまだ分かりません。ですが、少なくともお嬢様の頭を、かわいそうな娘への慰めに使うお方ではなさそうでございました」

「ずいぶんな物言いね」

「褒めております」

 その言い方があまりに変わらず、セルウィリアはとうとう口もとを緩めた。
 笑みと呼ぶにはまだ足りぬ、ほんのわずかな崩れ方だったが、ヴェーラはそれを見て何も言わなかった。
 ただ、余計な同情を差し挟まず、燭台の芯を少し短く切った。

 夜は長かった。

 床に就いたあとも、眠りは彼女の側へ容易には来なかった。
 瞼を閉じれば、夜会の光がまだ硝子片のように眼裏へ刺さる。ドミトリの整った声音、ミハイルの明るい微笑、エレナの胸元の銀狼、アレクセイの静かな問い。
 どれもが順序を持たぬまま浮かび、沈み、また形を変えて現れる。

 やがて彼女は起き上がった。

 部屋の隅にある小机へ蝋燭を移し、薄紙を引き寄せる。
 眠れぬ夜に言葉を書くのは、感情を吐くためではなかった。記憶の筋を、薄れる前に針で留めておくためである。

 彼女はペンを取った。

 サン=クレール家。
 先代当主。
 妹。
 ラズロウ伯家次男。
 婚約年。
 承認待ち。
 未了。
 儀礼簿の記載位置――。

 思いつくままではなく、覚えている順でもなく、記録を探る時の癖に従って並べてゆく。
 人名、年号、婚姻、未承認、相続順位、付随する副紋章。
 書いているうちに、ぼんやりしていた感覚が少しずつ形になる。
 抜けているのは一行ではない。
 おそらく、何か一つを消したために、その前後の整合が歪んでいる。歪みは必ず残る。紙は黙って見えるだけだが、黙っているからこそ嘘が浮く。

 気づけば、窓の外がうっすら白んでいた。

 朝は、夜の結末ではなく、新しい計算としてやって来る。
 鳥が鳴き、屋敷の下働きたちが動き始め、遠くで門の開く音がした。
 セルウィリアはようやくペンを置いた。手首には鈍い重みがあり、指先には墨の匂いがついている。

 扉が軽く叩かれた。

「お嬢様」

 ヴェーラの声だった。
「お休みになっておられませんね」

「ええ」

「分かっておりました」

 老女は返事を待たずに入って来た。
 盆には茶器と、薄いパン、それにまだ温かいスープが一椀載っている。
 彼女は机の上の紙片をちらと見たが、内容を覗き込もうとはしなかった。必要ならいつでも見抜けるという自信がある人間ほど、むやみに覗きはしない。

「顔色がひどい」

「ありがとう」

「礼ではなく食事をお取りなさいませ」

 言われるまま、セルウィリアは椅子を引いた。
 熱いスープが喉を通ると、ようやく自分が冷えていたことに気づいた。

 ヴェーラは窓辺で薄布を少し引き、朝の光を細く入れた。
「今日は何をお召しになります」

「王宮へ行くのだから、あまり目立たぬものを」

「いつも通りでございますね」

「そう言われると、別のものを選びたくなるわ」

「それは結構。では、いつも通りの少し上にいたしましょう」

 少し上、という言い方がヴェーラらしかった。
 派手に装わせるのではない。見くびられぬ程度に整える。それ以上でも以下でもない。

 その時、廊下を急ぐ足音がした。若い従者が扉の外で一礼する気配を見せる。

「失礼いたします。王宮より使いの方が」

 セルウィリアとヴェーラは、同時に顔を上げた。

 従者は扉の外で続けた。
「第二王子殿下付の近習を名乗っておられます」

 ヴェーラが先に小さく鼻を鳴らした。
「仕事が早いことで」

 セルウィリアは椀を静かに卓へ戻した。
 眠れぬまま迎えた朝が、これで完全に昨日の続きではなくなった。

「通してちょうだい」

 と、彼女は言った。
 自分の声が、思いのほか落ち着いていたことに驚いた。
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