婚約破棄を求められました。私は嬉しいですが、貴方はそれでいいのですね?

ゆるり

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貴方と共に過ごしたいのよ

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 アンジェは修道院に送られることが決まった。1番怒っていた神もそれに納得したのだからそれでいいのだ。アリシエラは少し疲れを感じた。

「アリシエラ、もう俺の家に行ってもいいんだぞ」
「……いいえ。私は、彼らの行く末を見たいと思っていますわ」

 フランベルツが緩くアリシエラの肩を抱き、共にソファに座っていた。その逞しい肩に頭を預け、星が光る美しい夜空を見る。
 フランベルツの家とはどんなところなのだろうか。神が暮らす場所である。とても美しい場所なのだろうか。
 エドワードとの婚約が破棄されたことで、アリシエラはフランベルツの想いを受け入れた。その前からフランベルツの想いは知っていたし、アリシエラも愛しく思っていたが、婚約者がいる身でその想いを受け入れる不実は犯せなかったのだ。

「ふむ。アリシエラがそこまで気にする必要があるのか。人の世を離れれば一瞬のことであろうに」
「……それでも、私は長年エドワードの婚約者だったのですわ。いくらお互いに嫌っていようと、長く過ごした記憶はなくなりません。中途半端に終わらせれば、私はずっと気にすることになるのよ」
「そういうものか」

 アリシエラは全てが終われば神と共に過ごす約束をした。それがこの場所なのか、神の場所なのか定かではないが、フランベルツは神の場所に連れていくつもりのようだ。

「……ねぇ、フランベルツ様」
「なんだ」
「なぜ、私が聖女だったのですか。私を初めから愛してくれたのは何故?」

 アリシエラの問いにフランベルツが静かに微笑む。

 フランベルツは、アリシエラが聖女としてこの教会に住みだしてからすぐに会いに来た。そして愛しげに頭を撫でたのである。アリシエラはすぐに神だと分かったけれど、何故これほどに愛しげにされるのか分からず戸惑った。
 その後も、フランベルツはアリシエラがすることを静かに見守った。人に変化してまでアリシエラを守った。
 その意図がアリシエラにはよく分からなかった。

「人の魂は巡るのだ」
「魂?」
「人は生きて死んで、生まれ変わってまた死ぬ。それを繰り返して魂を輝かせるものもいれば、魂を損ない消滅するものもいる」
「……」
「アリシエラの魂は美しい。全ての輪廻が今のアリシエラを形作ったのだろうな」
「……それは、私がしたことではないわ」
「そうだな。だが、アリシエラはその魂を損なわず高め続けている」
「よく分からないわ」
「それでいい」
「……貴方は、本当に私を望んでいるの?過去の魂の持ち主ではなくて?」
「さて。神たる身に人の容姿は関係ない。だが、俺はお前の精神性も好ましいと思っているぞ」
「……そう。それならいいのよ」

 少しの不安があった。この神は本当にアリシエラ自身を見ているのかと。アリシエラを通して他の誰かを見ているのではないかと。だが、フランベルツはまっすぐにアリシエラを見つめて愛しげに微笑んだ。アリシエラが今生の環境で得た精神性を好ましいと言ってくれた。ならば、それでいいのだ。

「私、貴方と共に一生を過ごしたいのよ」
「勿論だとも。人の縛りが俺たちを引き裂くことも許さない」

 フランベルツに抱きしめられて、アリシエラは幸せだった。

 
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