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その後の穏やかな時間
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「じゃあ、あの方はお好きな方のオトコ妻さまになられたのですか?」
旦那さまにオトコ妻に娶られて8年目の晩秋。
穏やかな日差しが入り込むベッドの上。ぼくは旦那さまに嬉しいお知らせを聞かせて頂いております。
「ええ、もう一緒に住んでいるそうですよ」
旦那さまがふわりと微笑まれます。
「良かったですわ。あの方はお優しくて親切なお方でしたから、ぼくはとてもあの方が好ましい同級だったんですの」
ぼくの薄くなった背中を旦那さまがそっと抱いて下さいます。
「ええ、レイプの事件を知った時も、とても落ち込んだのを覚えておりますよ」
旦那さまとの婚約が決まり、旦那さまの推薦なさるスクールに転入してすぐ。ぼくはあの方に、2度も助けて頂いた事があるのです。
迷子になった時、道案内をして下さった事と、保健室へ行くほどでもない怪我をした時、その場でぱっと手当して下さったのですわ。
そんな方がレイプなんて、なぜこの名門スクールに通う生徒が僅かな隙をついた暴漢に拐われて、あまつさえ、そのような目に遭わされねばならないのかと酷く泣きじゃくったものです。
◇
「こほっこほっ」
「横になりましょう。今日は日差しがありますが、冬の冷たい風が吹いておりますからね。体に障ります」
「ん、もう少しだけ。旦那さまの抱っこは温かくて大好きなの」
ぼくはもう少し旦那さまに抱っこされていたくて、昔と変わらない逞しい胸に頬を寄せて甘えます。
「そうして差し上げたいですが、体に障るのは…」
ゆる…っ、ゆる…っと首を振って、イヤイヤをします。
「ね、もう少しだけですから。お願い…」
旦那さまは困った顔をなさりながら、しっかりぼくを抱きしめて下さいます。
たぶん、いつもみたいに聞き分けが良くなくて、何かおかしいと感じられたのかもしれませんわね。
◇
とくん、とくんと、優しい旦那さまの鼓動が眠気を誘います。ああ、眠ってしまう前に…。
「旦那さま?」
「何かな?我が愛しのオトコ妻さま?」
「あのね?ぼくが身罷ったら新しいオトコ妻さまをお迎えなさってね、お約束よ?」
旦那さまが息を止め、ぼくをぎょっとしたお顔で見つめられます。
「ナー…ラ?」
「ぼくは不完全男性早世症でございましょう?」
不完全男性早世症。症状は様々ございますが、原因不明の不完全男性だけがかかる病で、発症しますと一年ほどしか余命のない難病でごさいます。
20代の不完全男性が発症した場合、他の年代の発症者と比べてもっとも死亡率が高い病でもあります。
「ぼくはお年寄りになるまで旦那さまと添い遂げられませんが、旦那さまのお好きになる新しいオトコ妻さまと二人、こんなに素敵な旦那さまを独占できる幸せを分かち合いたいのですわ」
ぼくはにっこり微笑んで旦那さまを見つめる。
「バカな事を言わないで下さい!
もしナーラが身罷ったのだとしても、私は他に誰も迎え入れたりはいたしません!」
「ダメですわ。旦那さまはとても愛情深くて、誰かを愛しておりませんと弱くなっておしまいになるのですもの。
っ、こほっこほほっ」
「ナーラ。その話はいつか。とりあえず休んで下さい、ね?」
ぼくはそっとベッドに寝かしつけられました。抱っこの代わりに手をつないで頂いて、眠気に身を任せます。
旦那さま、ぼくに幸せな人生を歩ませて下さってありがとうございます。
ぼくは本当に旦那さまが大好きですわー………
◇終◇
旦那さまにオトコ妻に娶られて8年目の晩秋。
穏やかな日差しが入り込むベッドの上。ぼくは旦那さまに嬉しいお知らせを聞かせて頂いております。
「ええ、もう一緒に住んでいるそうですよ」
旦那さまがふわりと微笑まれます。
「良かったですわ。あの方はお優しくて親切なお方でしたから、ぼくはとてもあの方が好ましい同級だったんですの」
ぼくの薄くなった背中を旦那さまがそっと抱いて下さいます。
「ええ、レイプの事件を知った時も、とても落ち込んだのを覚えておりますよ」
旦那さまとの婚約が決まり、旦那さまの推薦なさるスクールに転入してすぐ。ぼくはあの方に、2度も助けて頂いた事があるのです。
迷子になった時、道案内をして下さった事と、保健室へ行くほどでもない怪我をした時、その場でぱっと手当して下さったのですわ。
そんな方がレイプなんて、なぜこの名門スクールに通う生徒が僅かな隙をついた暴漢に拐われて、あまつさえ、そのような目に遭わされねばならないのかと酷く泣きじゃくったものです。
◇
「こほっこほっ」
「横になりましょう。今日は日差しがありますが、冬の冷たい風が吹いておりますからね。体に障ります」
「ん、もう少しだけ。旦那さまの抱っこは温かくて大好きなの」
ぼくはもう少し旦那さまに抱っこされていたくて、昔と変わらない逞しい胸に頬を寄せて甘えます。
「そうして差し上げたいですが、体に障るのは…」
ゆる…っ、ゆる…っと首を振って、イヤイヤをします。
「ね、もう少しだけですから。お願い…」
旦那さまは困った顔をなさりながら、しっかりぼくを抱きしめて下さいます。
たぶん、いつもみたいに聞き分けが良くなくて、何かおかしいと感じられたのかもしれませんわね。
◇
とくん、とくんと、優しい旦那さまの鼓動が眠気を誘います。ああ、眠ってしまう前に…。
「旦那さま?」
「何かな?我が愛しのオトコ妻さま?」
「あのね?ぼくが身罷ったら新しいオトコ妻さまをお迎えなさってね、お約束よ?」
旦那さまが息を止め、ぼくをぎょっとしたお顔で見つめられます。
「ナー…ラ?」
「ぼくは不完全男性早世症でございましょう?」
不完全男性早世症。症状は様々ございますが、原因不明の不完全男性だけがかかる病で、発症しますと一年ほどしか余命のない難病でごさいます。
20代の不完全男性が発症した場合、他の年代の発症者と比べてもっとも死亡率が高い病でもあります。
「ぼくはお年寄りになるまで旦那さまと添い遂げられませんが、旦那さまのお好きになる新しいオトコ妻さまと二人、こんなに素敵な旦那さまを独占できる幸せを分かち合いたいのですわ」
ぼくはにっこり微笑んで旦那さまを見つめる。
「バカな事を言わないで下さい!
もしナーラが身罷ったのだとしても、私は他に誰も迎え入れたりはいたしません!」
「ダメですわ。旦那さまはとても愛情深くて、誰かを愛しておりませんと弱くなっておしまいになるのですもの。
っ、こほっこほほっ」
「ナーラ。その話はいつか。とりあえず休んで下さい、ね?」
ぼくはそっとベッドに寝かしつけられました。抱っこの代わりに手をつないで頂いて、眠気に身を任せます。
旦那さま、ぼくに幸せな人生を歩ませて下さってありがとうございます。
ぼくは本当に旦那さまが大好きですわー………
◇終◇
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