白と黒の呪い戦線

界 あさひ

文字の大きさ
12 / 21
呪いと祝福の境界

012 顛末

しおりを挟む
 その日からトウは、自身が「呪い」持ちである事を隠す事を辞めた。
 「呪い」を狙われ、命を狙われるようになったが、必死に彼らを返り討ちにした。
 確実に、強くなった筈であった。以前でさえ、一対一なら殆ど勝っていた。次やれば、必ず勝てる。今度こそ、カルタを倒して、シータを返してもらう。必ず。

 ーーーそして、今日。カルタと再び戦った。
 結果は、ナガトが見た通りであった。確かに自分は強くなったと思っていた。絶対に勝てると。息子を返してもらえると。
 しかし、その思いを欺くかの様に、文字通り手も足も出なかった。圧倒的な力の差であった。大敗なんて物じゃない。勝負にならなかった。
 トウ自身よりも、カルタの方が強くなっていた。それもその成長はトウの比じゃない。
 ただただ「呪い」を上手く扱えるようになっているだけではない。元の力が上がっただけでもない。「呪い」その物が、全く違う更に「上位」の物になった様な、そんな印象を得た。
 
 そこまで、話してトウは話を締めた。 ミナミは「ほう」と呟き
「「呪い」自体の強化…ね」
と楽しそうにしている。
 トウは「それで全部だ」とでも言っているかの様に口を閉し、ミナミは楽しそうにしているそのアンバランスさに、ナガトは困惑し、黙るしかなかった。
 不意にミナミが口を開いた。
「その教団のアジトはどこか分かるのか?」
と疑問を口にした。
「カルタが普段根城にしている場所はわからない…けど、教団の教会的な場所なら分かる。」
とカルタが言うと、すぐさまミナミはその場所を詳しく聞き出した。

 ナガトなど、「呪い」を持つ人間が閉じ込められるこのスラム、テーナタウンは、タウンと言うには些か広過ぎる街である。
 テーナタウンは、広大な土地を持つ王国の南に位置し、王国の十分の三程の広さを持つ。ある程度の小国であれば、テーナタウンの方が土地も人も多い。
 そんなテーナタウンであるが、テーナタウンでは、南北でニ分割した内の北側、つまり王国側はスラムでも比較的裕福な層が住む場所である。治安も比較的良い。その背景には、「呪い」を扱うマフィアがいるらしいが、今のナガト達には関係ない。
 ナガトたちがいるのは南側で、より貧困層が多い方である。治安もその分悪い。
 そして、例のカルタの教団の教会は、その南北の境目辺りにあると言う。ナガトはそこまで北に行った事がなかった。
 
「よし、おっさんは私らに任せて、帰って寝てろ」
 ミナミはそう言うと、不敵な笑みと共にゆっくりと立ち上がった。黒い唾の長いハットを目深に被り言った。
「…ナガト、行くぞ。」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

処理中です...