白と黒の呪い戦線

界 あさひ

文字の大きさ
14 / 21
呪いと祝福の境界

014 開戦

しおりを挟む
「だからこそいいんだ」
と笑ったミナミはこう繋げた。
「その大勢いる雑魚は私がやる。ナガト、お前はカルタの相手をしとけ。」
「なっ!?さっきは不意打ちでもボコられた。真っ向からやったら絶対勝てない!」
 焦るナガトにミナミはこう続ける。
「勝たなくていい。
 時間稼ぎをしろ。私が雑魚を倒す間に、カルタに逃げられない様に。」
「その大勢の雑魚が、戦闘の意思を持ってるか、分からないだろ。初めからミナミがカルタの相手をした方がいい。」
「いや、どちらにせよ雑魚は倒す。んで、その役目は、私の方が適任だ。お前じゃ躊躇うかも知れないからな。」
 ナガトは自分の意見が全く聞き入れられず、十分な説明もない事から不信感を募らせたが、他に仕方がない。
 
 ミナミは教会の大きな扉の前に立ち、足で蹴り、突き破った。轟音を立てて扉が倒れる。
 中にいた教団の信者達が、何だ何だと、声を上げる。ナガトはその騒つく信者達の奥に、1人綺麗な姿勢で立っているあの時の、白いローブの男を見つけた。
 また負けるであろうという恐怖を噛み殺し、全身に力を入れる。目が光を帯びる。脚に力を込め、一気にカルタめがけて距離を詰めた。カルタもそれに気付き、ナガトの攻撃を躱す。 
 カルタが急いだ口振りで言った。
「我らが教団に!神に仇をなす者達です。皆さんはあの扉を倒した女を捉えてください!」
 そう言うと、カルタは教会の奥に逃げた。ナガトもすぐに後を追った。

 取り残されたミナミは、襲いかかる多くの信者らを目の前にしていた。人数にして100人前後。予想より多い。そして何より、一人一人が普通の動きではない。やはり身体能力が強化されていると考えるべきか。しかし100人全員がそれぞれ「呪い」を持ってる可能性は殆ど0だろう。となるとやはり…
 ミナミはナイフを懐からとりだした。

 一方ナガトは、逃げ出したカルタを追っていた。
 奥の部屋はそれ以上、逃げる場所が無いらしく、それまで背中を見せて逃げていたナガトは立ち止まり、振り向いて言った。
「こんな所までわざわざ来るなんて。貴方も酔狂ですね。
 しかし、私が逃げるのはおかしいと感じませんでしたか?」
 そう言うとカルタは白いローブを脱ぎ捨てた。
「先刻のような、完全なる不意打ちであっても、私はあなたを完封しています。どう足掻いてもあなたは私に勝てないでしょう。
であれば、なぜ逃げたと思いますか?」
 カルタは口を閉じて微笑んだ。
 ミナミと分断させるためだろうか、いや、そんな理由は、今はどうでもいいと捨て置いた。
 カルタは手をコキコキと鳴らしている。
 ナガトも目の前の男に集中した。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

処理中です...