白と黒の呪い戦線

界 あさひ

文字の大きさ
15 / 21
呪いと祝福の境界

015 神様

しおりを挟む
 カルタの目が光を帯びる。同時にナガトの目も光を帯びる。
 先に動いたのはナガトだった。駆け出して、目の前に迫るカルタの横腹へ回し蹴りを入れようとーーーカルタはその蹴りを腕で防ぎ、反対の腕でナガトを殴ろうと腕を引く。
 カルタの腕がどのような軌道を描くのか、ナガトは瞬間的に考えを巡らせる。この対面の角度で、この身長差、2人の距離感、カルタの腕の長さ、前回相対した時に見たカルタの癖。今までの戦闘経験を、この一瞬に集約して、カルタの行動を予測する。
 顔へ殴りを入れてくる。そう判断した瞬間に顔へ飛んでくる拳を右へ躱し、距離をとった。
 今度はカルタから仕掛けた。距離を詰められたナガトは、防戦一方になった。様々な角度から繰り出されるパンチや蹴りに反撃の糸口を全く見出せなかった。止まらない連撃の中、ナガトはガードし損ねた蹴りを一つ、諸に溝落ちに食らった。カハッと唾が出る。息が止まりかける。その隙にカルタは更に追撃をした。頭、溝落ち、首、脚、全てに重い一撃を入れた。やはり、単純な勝負では勝てない。そんな考えが頭をよぎる。
 地にうつ伏せになったナガトは血反吐を吐いた。それを見て、カルタは
「これであなたは十分でしょう?
次はあの女に、神と言うものを教えてあげましょう。尤も、もう息をしていないかもしれませんが。」
と言って不気味な笑みを浮かべた。
 ミナミは絶対死なない。きっとこんなとこで死ぬような奴じゃない。んで今は!ミナミが来るまでこいつを。早く来てくれ。
 でも…「呪い」を使った上で負けるような奴に、ミナミは、勝てるのだろうか。そもそも広間にはカルタの他に、信者がざっと100人位はいた。それを全部相手に出来るのか。
 うつ伏せになったまま、そんなネガティブな考えが頭を巡った。
 いや、考えたらダメだ。とにかく、とにかく今はミナミが来るまで、時間稼ぎだ。どうしてでもカルタを。
 後ろ姿のカルタを見据えて、腕に力を入れて立ち上がる。口の血を拭い、ふーっと息を吐く。
 ナガトが立ち上がったのを察して、カルタの動きがピクッと止まり、ゆっくりと振り返る。
「幾らやっても返り討ちに遭うだけですよ。 
 弱者が勝つことは出来ない。負けるのみです。だから、信じねばならないのです、神を。崇めねばならないのです、私を」
 そう言ったカルタの目に、気味の悪い光が宿る。
「クソ喰らえだ、神様」
 そう言ってナガトは口角を吊り上げた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【12月末日公開終了】これは裏切りですか?

たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。 だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。 そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?

愛する夫が目の前で別の女性と恋に落ちました。

ましゅぺちーの
恋愛
伯爵令嬢のアンジェは公爵家の嫡男であるアランに嫁いだ。 子はなかなかできなかったが、それでも仲の良い夫婦だった。 ――彼女が現れるまでは。 二人が結婚して五年を迎えた記念パーティーでアランは若く美しい令嬢と恋に落ちてしまう。 それからアランは変わり、何かと彼女のことを優先するようになり……

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

物語は始まりませんでした

王水
ファンタジー
カタカナ名を覚えるのが苦手な女性が異世界転生したら……

処理中です...