白と黒の呪い戦線

界 あさひ

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呪いと祝福の境界

020 決着

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 ドサッ。
 顔面ど真ん中を精一杯殴られたカルタは、白目を剥いてゆっくりと崩れ去った。
 パンパンと左右の手を叩きながら、倒れたカルタを、ミナミは遠い目をして見下ろした。ミナミはその後、目を瞑って上を向き、天を仰いだ。ふーっと息を吐き切ってから目をゆっくりと開けた。

 ナガトが目を開けると、既に全てが終わっていた。カルタは、倒れていて、目を覚ましたナガトの横には、ミナミが座っていた。
「おっ、起きたか?お疲れ、雑魚ガキ。」
「うるゴホッ」
うるせぇ、と言いたかったが咳が勝って出た。
「ハハッ、まぁ感謝してるよ。私1人じゃ時間がかかったからな。」
 1人でも負けるつもりは心の底からないのがミナミらしい。実際、ナガトが目を開けると、全て終わらせていたのはミナミの実力故だ、とナガトは思った。
「しばらくしたら、カルタを地下牢に連れるため、王国兵が来る。それまでここで待つ。」
 ミナミはヘラヘラしながら言った。 
 今になって、急に生きているという実感が湧いてきた。安堵が込み上げてきた。予想外に涙が溢れてきた。急いで止めようとしたが、そうすると余計に涙が止まらなくなった。涙が出た理由は、生きていたという安堵だけではなかった。いや、寧ろ、カルタに負けた悔しさの方が大きかったと思う。
 声を上げながら号泣するナガトの横で、ミナミは目を閉じて、優しく微笑んでいた。

 暫く時間が経つと、ミナミの言っていた王国兵の一団がやってきて、カルタを連行し始めた。
 数にして20人前後か。皆、ガタイが良く、凛とした顔をしている。その一団を仕切っていた小隊長らしき人物が、怖い顔をして、こちらにカツカツと歩いてきた。
「よう犯罪者。」
 笑わずにそう口を開き、こう続けた。
「元気そうで何よりだ。お前みたいな犯罪者が、今、我々に見過ごされているのは国王様のお陰だ。感謝する事だな。」
「フン、今から捕まえようとしたって、どうせ捕まえられないんだから感謝もクソもないだろ。」
 ミナミは笑いながら口車に乗った。相手は、一瞬だけ眉をピクリと動かしたが、そんなことはどうでもいい、と切り捨てて、そういえば、と続ける。
「お前を追っかけるのに夢中だったシオを覚えているか。」
 ミナミの顔色が少しだけ変わった。
 ナガトは全く話についていけてない。顔に「?」を浮かべっきりだ。
「あいつがどうかしたのか?」
「いなくなった。」
男は淡々と言った。
 ふーん…とミナミは呟いたきり、考え込んだように見えた。

 ついていけねー、とナガトが不意に顔を逸らした時に、遠くからこちらをじっと眺めている端正な顔の王国兵と目があった。
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