1 / 1
プロローグ【むしゃくしゃしてやった、反省はしているし後悔もしている】
しおりを挟む
私の産まれた家はそこそこ名の知れた家であった。第二級の魔導騎士である父上と第三級の魔導師である母上との間に産まれた三番目の子供である。
幼き頃から父上と同じ魔導騎士となる様に教え込まれ、自らも「父上の様な立派な魔導騎士になる!」などと考えていた。いや、考えさせられていた。幼いが為に何も分からぬ内から自らの思い通りになる様にそう教え込まれ育てられていたのだ。
記憶が朧げであるが、物心着く頃には訓練は始まっていたのではないだろうか。何も知らぬが故にそれが当たり前なのだと思い只管に剣を振るわされ魔導を唱え続けた。
それが可笑しい事なのだと気付いたのは初めての遠出、親交会と言う名の子供の品評会へと向かう途中であった。馬車の外から見える物全てが初めてで、興奮していたのを覚えている。その時だ。街の中、自分と同じ年頃の子供たちが遊んでいたのを見つけたのは。ほんの数秒の出来事であったが、楽しそうに遊ぶ子供たちを見て「楽しそうだな」と言葉に出してしまう程には印象に残った。その言葉を聞いて父上は。
『遊びなど低俗なものだ。お前は我が一族の未来を担う存在、ただ魔導と剣を磨くのみ』
その言葉の意味を理解出来る訳もなく、親交会を終えた帰り道でと子供達の姿を見つけ「僕も遊びたい」と考えた、考えてしまった。
そう思わなければ良かった。
知らなければその様な考えが浮かぶ事もなく、子供らしい願いを持つ事もなかった。
それからというもの、苦しい思いを味わい続ける事となった。
生活の全てが屋敷内で完結してしまう生活に転機が訪れた。
貴族の子供や商人の子供といった俗に言う金持ちと呼ばれる者たちは、子が十八になると学校と呼ばれる場所へと送り出すのだ。
魔導と剣技の学び舎【魔導騎士育成学園】
学友と共に手を取り合い切磋琢磨し立派な魔導師、騎士、魔導騎士へとなる為の機関である。
同年代の者との関わりなど皆無に等しく、この話を聞いた際には心躍らせ待ち遠しさで夜も眠れなかったのを覚えている。
いざ行ってみれば何とも言えぬ嫌な空気が漂っていた。
お家自慢に始まり、自らがどれ程優れた血を受け継いでいるのか、類稀なる才能を持っているか。そして自らよりも下の者を嘲笑い無下に扱う。
もしあの時、子供らしい感性を手にしていなければ自分のあの様な醜いモノになっていたのかと思うと背筋が凍る。居心地の悪い場に居続けるのは気が滅入るな、それで済む事はなく。
『卒業後はツメティアーメ家へと向かってもらう』
入学数日後、父上から届いた手紙に書かれたその一文の意味を理解し私は絶望の底へと落とされた。
今までの訓練も、この学園へと入学した事も、立派な魔導騎士になる事も、他の貴族との繋がりの為の用意であったのだ。私の今までの人生とは何だったのか、努力は?あの日々は?流した血と涙は?全てはアフィーロ家繁栄の為のもの。まるで私は家畜や作物のようではないか、いやそうなのだろう。
そこからの変化は劇的であった。
全てがどうでもよくなった私は荒んだ。常に苛立ち、少し騒いだ生徒には睨みを利かせ、目障りだと思えば物に当たる。直接的に誰かに危害を加えたり暴言を吐くという事はなかった。昨日までは。
『お前、アフィーロ家の三男坊なんだってなぁ?』
声を掛ける者もなくなり一月経った頃、声を掛けられた。苛立ちが半分驚きが半分、頭の中をぐるぐると回り始めぶっきらぼう返事を返す事しか出来なかった。
『種の癖に生意気なぁ!』
制服を見れば蕾が描かれた腕章が目に入る。一つ上の先輩に絡まれた、最悪である。
『だからどうした……!』
『三級貴族の分際で二級の僕に楯突くのか!』
それからは汚らしい言葉の応酬が始まった。ここで引いていれば良かった。そうすれば蕾生との決闘を行う事はなかったのだから。
『諸君!これは決闘である!』
場所は変わり、授業にも使われる闘技場。その中心には集まる生徒に向かい演技掛かった台詞を吐き出し続ける蕾生、そして種生の私がいた。
長々と言葉を吐き出し、尽くしたのか此方に向き下卑た笑みを浮かべ罵倒を放つ。此方も罵倒を放ち、決闘が始まった。
一年の差というのは馬鹿に出来る訳はなく、階級も相手が上である。こちらが出来る事は限られる。詳細は省かせてもらうが、魔導は防がれると考え突撃を行う事に決めた。
子供ながらに鍛えた肉体、多少の魔導。その全てを使っての突撃である。
高速で迫ったは良いものの、攻撃を避ける事は出来ず。その結果、ボロボロになりながらも体当たりに成功した。
まともに食らい吹き飛ぶ種生、ボロボロになりながらも立ち上がる私。馬乗りになり殴り続け辛くも勝利を収めた。この時、私は怒りと勝利の余韻に浸りこれからを考えていなかった。
反省はしている、後悔もしている。
だが終わってしまった事だ。そしてこれから始まったのだ。
面倒な生活が……。
幼き頃から父上と同じ魔導騎士となる様に教え込まれ、自らも「父上の様な立派な魔導騎士になる!」などと考えていた。いや、考えさせられていた。幼いが為に何も分からぬ内から自らの思い通りになる様にそう教え込まれ育てられていたのだ。
記憶が朧げであるが、物心着く頃には訓練は始まっていたのではないだろうか。何も知らぬが故にそれが当たり前なのだと思い只管に剣を振るわされ魔導を唱え続けた。
それが可笑しい事なのだと気付いたのは初めての遠出、親交会と言う名の子供の品評会へと向かう途中であった。馬車の外から見える物全てが初めてで、興奮していたのを覚えている。その時だ。街の中、自分と同じ年頃の子供たちが遊んでいたのを見つけたのは。ほんの数秒の出来事であったが、楽しそうに遊ぶ子供たちを見て「楽しそうだな」と言葉に出してしまう程には印象に残った。その言葉を聞いて父上は。
『遊びなど低俗なものだ。お前は我が一族の未来を担う存在、ただ魔導と剣を磨くのみ』
その言葉の意味を理解出来る訳もなく、親交会を終えた帰り道でと子供達の姿を見つけ「僕も遊びたい」と考えた、考えてしまった。
そう思わなければ良かった。
知らなければその様な考えが浮かぶ事もなく、子供らしい願いを持つ事もなかった。
それからというもの、苦しい思いを味わい続ける事となった。
生活の全てが屋敷内で完結してしまう生活に転機が訪れた。
貴族の子供や商人の子供といった俗に言う金持ちと呼ばれる者たちは、子が十八になると学校と呼ばれる場所へと送り出すのだ。
魔導と剣技の学び舎【魔導騎士育成学園】
学友と共に手を取り合い切磋琢磨し立派な魔導師、騎士、魔導騎士へとなる為の機関である。
同年代の者との関わりなど皆無に等しく、この話を聞いた際には心躍らせ待ち遠しさで夜も眠れなかったのを覚えている。
いざ行ってみれば何とも言えぬ嫌な空気が漂っていた。
お家自慢に始まり、自らがどれ程優れた血を受け継いでいるのか、類稀なる才能を持っているか。そして自らよりも下の者を嘲笑い無下に扱う。
もしあの時、子供らしい感性を手にしていなければ自分のあの様な醜いモノになっていたのかと思うと背筋が凍る。居心地の悪い場に居続けるのは気が滅入るな、それで済む事はなく。
『卒業後はツメティアーメ家へと向かってもらう』
入学数日後、父上から届いた手紙に書かれたその一文の意味を理解し私は絶望の底へと落とされた。
今までの訓練も、この学園へと入学した事も、立派な魔導騎士になる事も、他の貴族との繋がりの為の用意であったのだ。私の今までの人生とは何だったのか、努力は?あの日々は?流した血と涙は?全てはアフィーロ家繁栄の為のもの。まるで私は家畜や作物のようではないか、いやそうなのだろう。
そこからの変化は劇的であった。
全てがどうでもよくなった私は荒んだ。常に苛立ち、少し騒いだ生徒には睨みを利かせ、目障りだと思えば物に当たる。直接的に誰かに危害を加えたり暴言を吐くという事はなかった。昨日までは。
『お前、アフィーロ家の三男坊なんだってなぁ?』
声を掛ける者もなくなり一月経った頃、声を掛けられた。苛立ちが半分驚きが半分、頭の中をぐるぐると回り始めぶっきらぼう返事を返す事しか出来なかった。
『種の癖に生意気なぁ!』
制服を見れば蕾が描かれた腕章が目に入る。一つ上の先輩に絡まれた、最悪である。
『だからどうした……!』
『三級貴族の分際で二級の僕に楯突くのか!』
それからは汚らしい言葉の応酬が始まった。ここで引いていれば良かった。そうすれば蕾生との決闘を行う事はなかったのだから。
『諸君!これは決闘である!』
場所は変わり、授業にも使われる闘技場。その中心には集まる生徒に向かい演技掛かった台詞を吐き出し続ける蕾生、そして種生の私がいた。
長々と言葉を吐き出し、尽くしたのか此方に向き下卑た笑みを浮かべ罵倒を放つ。此方も罵倒を放ち、決闘が始まった。
一年の差というのは馬鹿に出来る訳はなく、階級も相手が上である。こちらが出来る事は限られる。詳細は省かせてもらうが、魔導は防がれると考え突撃を行う事に決めた。
子供ながらに鍛えた肉体、多少の魔導。その全てを使っての突撃である。
高速で迫ったは良いものの、攻撃を避ける事は出来ず。その結果、ボロボロになりながらも体当たりに成功した。
まともに食らい吹き飛ぶ種生、ボロボロになりながらも立ち上がる私。馬乗りになり殴り続け辛くも勝利を収めた。この時、私は怒りと勝利の余韻に浸りこれからを考えていなかった。
反省はしている、後悔もしている。
だが終わってしまった事だ。そしてこれから始まったのだ。
面倒な生活が……。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。
猫屋敷むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で――
私の願いは一瞬にして踏みにじられました。
母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、
婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。
「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」
まさか――あの優しい彼が?
そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。
子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。
でも、私には、味方など誰もいませんでした。
ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。
白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。
「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」
やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。
それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、
冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。
没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。
これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。
※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ
※わんこが繋ぐ恋物語です
※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ
王子様への置き手紙
あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯
小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる