2 / 9
andante
しおりを挟む
彼女の第一印象は”静”だった。
淀みがなく、清らかで澄んだ感じと言えばいいだろうか。
あまり感情のゆらぎを見せない。
いつも周りが騒がしい自分とは全く異なる空気を纏っていた。
友達になろうと言ったものの、これといった交流のないまま数日が経った本日、学食で彼女の姿を見つけた。
「佳音って学食来るんだな」
「それはここの学生ですから」
「それA定食?俺も迷ったやつだ」
表情の変化に乏しい彼女は俺の手元をじっと見つめてからつぶやく。
「私もB定食にすればよかったです」
「交換する?」
「いえ、もう結構食べてしまったので」
「俺のまだ食べてないし、欲しいのあったら取っていいよ」
そう告げると少しだけ目をキョロキョロ動かし始める。
「山石くん、お願いがあるんですけど」
「何?」
「トマトって食べられますか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。普段なら頑張って食べるんですけど」
「どういたしまして。じゃあ俺のお願いも聞いてくれる?」
「私でできることなら」
「もっと砕けた話し方してよ。友達なのに敬語って距離感じる。名前もさガクって呼んで」
淀みがなく、清らかで澄んだ感じと言えばいいだろうか。
あまり感情のゆらぎを見せない。
いつも周りが騒がしい自分とは全く異なる空気を纏っていた。
友達になろうと言ったものの、これといった交流のないまま数日が経った本日、学食で彼女の姿を見つけた。
「佳音って学食来るんだな」
「それはここの学生ですから」
「それA定食?俺も迷ったやつだ」
表情の変化に乏しい彼女は俺の手元をじっと見つめてからつぶやく。
「私もB定食にすればよかったです」
「交換する?」
「いえ、もう結構食べてしまったので」
「俺のまだ食べてないし、欲しいのあったら取っていいよ」
そう告げると少しだけ目をキョロキョロ動かし始める。
「山石くん、お願いがあるんですけど」
「何?」
「トマトって食べられますか?」
「うん、いいよ」
「ありがとうございます。普段なら頑張って食べるんですけど」
「どういたしまして。じゃあ俺のお願いも聞いてくれる?」
「私でできることなら」
「もっと砕けた話し方してよ。友達なのに敬語って距離感じる。名前もさガクって呼んで」
0
あなたにおすすめの小説
二度目の初恋は、穏やかな伯爵と
柴田はつみ
恋愛
交通事故に遭い、気がつけば18歳のアランと出会う前の自分に戻っていた伯爵令嬢リーシャン。
冷酷で傲慢な伯爵アランとの不和な結婚生活を経験した彼女は、今度こそ彼とは関わらないと固く誓う。しかし運命のいたずらか、リーシャンは再びアランと出会ってしまう。
記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛
三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。
「……ここは?」
か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。
顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。
私は一体、誰なのだろう?
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
すべてはあなたの為だった~狂愛~
矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。
愛しているのは君だけ…。
大切なのも君だけ…。
『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』
※設定はゆるいです。
※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。
忘れるにも程がある
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたしが目覚めると何も覚えていなかった。
本格的な記憶喪失で、言葉が喋れる以外はすべてわからない。
ちょっとだけ菓子パンやスマホのことがよぎるくらい。
そんなわたしの以前の姿は、完璧な公爵令嬢で第二王子の婚約者だという。
えっ? 噓でしょ? とても信じられない……。
でもどうやら第二王子はとっても嫌なやつなのです。
小説家になろう様、カクヨム様にも重複投稿しています。
筆者は体調不良のため、返事をするのが難しくコメント欄などを閉じさせていただいております。
どうぞよろしくお願いいたします。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる