Rock You

amabile

物心ついた時から、周りは大人ばかりだった。

ある種の習慣のようになっていて敬語で話すのが当たり前になっていた。

『ガクって呼んで』

ある日突然練習室に現れ友人になろうと告げてきた山石くん……ガクは2学年下のようだ。

年下の子に主導権を握られているのは少し情けないのかもしれない。

私は自分で何も決めようとせず流されてここまできてしまった。

彼の行動力がどこか眩しくて羨ましい。

次の講義まで１コマ暇な時間がある。何をしようか考えていると

「カノン！」

笑顔で手を振っているガクがいた。

何の遠慮もなく踏み込んでくる人間は今までいなかった。

そして、それが決して不快でないことも。

私は手を振り返した。