闇の眷属

優未

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祝福を君に

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 渡された大剣からエネルギーが流れ込んでくるのを感じる。私の中の何かが満たされていく。これは一体……。私が魔王?ゴートさんはそう言うけれど。

「魔王は身体能力の高い魔族の中でも際立って強く、武に長けていた。ここにある武器は全てあなたが使用したものです」

 そうだ。この武器たちは全て私と関係がある。恐ろしいほどの長い時を経てもここまで状態を維持するのは並大抵のことではない。

「我が一族はいずれ復活する魔王様のために人間の世界に身を隠し、武器の手入れを欠かさず、人間と魔王の正しい歴史を伝えるために代々語り継いでまいりました。勝手に領域を侵してきた人間どもを粛清しただけだというのに。魔族が侵略してきたから一致団結して倒した?内紛を抑える力もなく他種族を悪者にして英雄気取り。嘘の歴史をおとぎ話として語り継ぐなど反吐が出る。まさか私の代で本当の歴史を語れる時が―――」
「あなたの語る歴史が間違っているとしても?」
「何をおっしゃっているのですか」

 ―――この武器たちが光るのは、私が魔王だからではない。

「彼は決して人間を……仲間を傷つけようとはしなかった」
「仲間?」
「あなたが言う魔王という人は、ただの人間です」
「魔王が使う武器は全て光り輝いていたと……今このように。ただの人間にそんなことはできない」
「―――それは私が武器に宿って力を貸していただけ」



 私は元々武器に宿る精霊だった。宿る武器も使う主も時と共に移り変わっていった。神々に魔族、人間さまざまな種族が武器に触れていくうちにやがて人の形を取れるようになった。あの人と出会ったのはそんな時だった。

『すごく強い種族がこの辺りに暮らしているらしいんだ。力試しをしたくてきた』
『いくらあなたが強くても、人間と魔族では対等には戦えない。私が力を貸してあげる』

 己の力のみで戦わないと意味がない、と最初は受け入れられなかった。だが初めて魔族と戦った時に力の差を実感したのか、私と契約をした。

「契約?魔族でないどころか如何様をしていただと」
「契約するだけでは強くはなれない。あの人は1番武を極めることに真剣で何より戦うことを楽しんでいた。その想いがなければ私の祝福は意味を持たない」

 始まりは魔族間のお遊びだった。誰が一番強いか、ただ純粋にそれだけを競って暮らしていた。ある日、腕の立つもの12人でそれぞれ異なる武器を用いて戦うという大会が催された。そこで優勝したのが彼だった。魔族が求めるのは強さのみ。種族がどうとか、精霊の力を借りているなんてことは気にされなかった。強いものを王として崇めただけ。

 それを人間がどう勘違いしたのか、魔王が魔族を率いて人間の世界を侵略しようなんて噂が広がってしまった。軍を率いてやってきた人間たちは魔王の姿を見て驚愕した。自分たちと同じ人間だったからだ。彼は人間同士分かり合えると思っていた。精霊の力を借りていることも告げてしまい、私は封印され……あの人は討たれた。



「人間の力で魔族が倒せないことはあなた自身がよくわかっているでしょう。ましてや魔王なんて呼ばれるほどの強い存在が。私は封印されてしまったから確認できていないけど、魔族は誰も被害を受けていないはず」
「私もそうであるように、確かに魔族は滅んでいません。人間世界に溶け込んだり、別の国へ渡ったり……それぞれ新しい生き方を見つけ、現在まで至っています」

 魔族は元々仲間意識のようなものはなく、それぞれ独立した存在。強さにのみ敬意を払うもの。魔王の存在は知っていても、それが人間と知らなかったものも大勢いたはずだ。事情を知らないものが誤った歴史を語り継ぎ、長い時が経ってしまった。例え間違った認識だったとしても―――

「ずっと彼のために待ち続けてくれたんだね。でも、もう……あなたはあなたの人生を生きて」
「我が一族は……私は魔王様が復活して人間どもに復讐する機会をずっと……今更どうやって生きていけというの」
「それは……あなた自身が見つけるものよ」

 主を失くして、長い間眠りについていた私と同じように。自分自身で見つけるしかないのだ。



 自分の正体が分かっても、私は人として生きていくことに決めた。長い時間封印されていたことで精霊としての能力もほとんど残っていない。今は大学に進学して、研究の日々を送っている。時折、あの博物館に行くこともある。ゴートさんはしばらく休職したのち、また学芸員として復帰した。彼女が担当する展示も近々開催されるらしい。

 昔の仲間や、同じ時代を生きた人たちが残してくれた記録を読み漁り、魔族に襲われた人物について調べ上げた。その中に、聞き覚えのある名前を見つけた。その人が眠る土地を探し出し、訪れることにした。

「ようやく、会えた」

 墓に花を供えると、それは少しだけ光った気がした。


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