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優未

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シオンの魔力が日に日に濃くなっている。最期に牢で会った時と遜色ないと言っていいだろう。おそらく仕事も徐々に復帰していっているのだろう。最近は会う頻度が減ってきている。

「シオンはお仕事、忙しいの?」

「いつも通りだ」

―――いつも通りに忙しいということかしら

「無理に私と会う時間を作らなくても平気よ」

「会いたくて来ている」

「ならいいけど」

シオンもここに来ている暇はないはずだ。父は出張で隣国に行っている。今でも何か企んでいるだなんて考えられないけれど、巻き戻り前と一緒であればここでクーデターの計画を練っているのだろうか。そもそもしがない文官の身でどうやって大臣との接点などもったのやら。争いごとを好まない人だし、親子2人で日々平凡に暮らしているつもりだった。

よほど深刻な顔をしてしまっていたのだろうか。彼から思わぬ提案がなされる。

「そんなに心配してくれるなら次は私の家で会おう」

「…結局あなたは迎えにきてくれるでしょ?」

「転移魔法を使えばいい」

「流石魔法騎士のシオン様ね」

次の約束をしてからふと気付く。サフィールとカルミエ殿下のやりとりを聞いてしまったのは彼の家にいたからだ。やはり行動を変えても結果は変わらないのではないか。きっとシオンの家に殿下が現れるだろう。そして投獄されて―――それは避けたい。できるかはわからないが、最後まであきらめたくない。母からもらったお守りを握りしめる。

「ここにあなた1人で住んでいるの?」

「どうしても不規則な生活になるから家を出ると決めた時に祖父母が暮らしていた家を譲ってもらった」

我が家と比べるのが失礼なくらい立派なお屋敷だった。サフィールの家はもっと庶民的だった。

「気に入らないなら改装するなり、新しく建てるなりすればいい」

「何の話?」

「そのうち君も住むことになる」

「……」

「想像もしなかったか。私の努力不足だ」

「すごく立派なお家で驚いていただけなの」

「君の一生と比べたら大した価値はない」

―――それは色んなものを持っている人だから思えることよ

広い家だが大抵のことは魔法で何とかなってしまうから使用人などもいないらしい。部屋を順番に案内してもらっていると、目の前に伝書蝶が飛んでくる。

「すまない、来客だ。この部屋で待っていてくれ」

「気にしないで」

窓から外を覗くと馬車が停まっている。家紋などはついていないが、あれは王家のものだろう。転移の魔法を使ってくれれば気付かなかったのに。そもそもこんな部下の家ではなく城に呼び出して告げてくれればいいのに。そうしたら―――

「好きな人に利用されているなんて知らずにすんだのに」

彼の言いつけを破って2人の話が聞こえる場所に隠れる。やはり前と同じだ。玄関口でこんな話をしないでほしい。

「サフィールが取引の証拠をつかんでくれた。クレマチスが帰国し次第捕える」

時が巻き戻ってから初めて聞くかつての思い人の名前だった。私と婚約しなかったから役目が変わった?もしまた投獄されたら今度はサフィールが会いに来てくれる?どうしようもない考えが浮かぶが、頭を振ってかき消す。

「お前も早く城に戻れ、いいな」

話を終え部屋に戻ろうと振り向くシオンと目が合う。

「リナリア…」

どう抗っても同じ結末になるかもしれない。それでも最後まで希望は捨てたくない。私は拳を強く握りしめた。
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