211 / 276
動き出す二つの魂
第三十話 擬態
しおりを挟む
盾を持ったがたいのいい男が振り向くと盾を構え
る。
すうっと息を吸うと、挑発のスキルを発動させた。
それはその場の魔物を自分に惹きつけるものだ。
「先に行ってください」
「おい、お前……」
「早く!時間は俺が稼ぎます」
「……くっ…わかった。絶対に戻ってくるから
それまで生きてろよ」
横を通り過ぎると、トレントの矛先が盾職の男
の方へと向かっていく。
これで距離が取れる。
そう思うと、男は盾を背に背負い直すと逆方向
へと走り出した。
短剣を持った女性とリーダー格の男性はそのま
ま前の階層へと向かう。
そんな時、ヒュンッと矢が素通りした。
「きゃっ……」
ズシャッと目の前で転がると女性は腰の短剣を
抜いた。
「おい、何をしてるんだ!」
「ちょっと、回復使えるっていうから同行を許
したのに足ひっぱてるんじゃないわよ!」
「仲間に当てるなんて、どんな腕してるんだ?」
「……」
「ちょっと早く治しなさいよ」
苛立ち気味にいうと、頭巾がはらりと取れた。
今まで顔を隠していただけに、どんな顔かと思
ったが、あまりにも美しく整っていた。
『人間如きが……』
その声はまるで鈴を転がすような綺麗で透き通
った声だった。
だが、言っている内容はあまりにも声からかけ
離れていた。
『我らの恨みを思い知るがいい』
大きく手を挙げると、さっきまで後ろにいた魔物
達が一斉にこちらに向かって来ていた。
「おい、嘘だろ」
「ちょっと、ふざけんじゃないわよっ!」
整った顔が歪むと四方から枝がしなりをきかせな
がら飛び交うと彼らを掴み引っ張り合うと取り合
いになった。
先ほどの人間達の身体は左右に引っ張られ、引き
裂かれていく。
血が飛び散ってマントに付いても、何の感情もな
いかのように前の階層のところまで戻っていく。
階段を少し上がると、ちょうどもう一つの人間の
パーティーが戻って来たところだった。
唇が憂いを浮かべると顔を隠す。
そして擬態するかのように壁と同化したのだった。
人間は不意打ちに弱い。
だから油断させておいて、後ろから……
その思いはすぐに消え去る事になるのだが、それ
は弘前の前に殺気を含んだ視線を送ってしまった
せいでもあった。
る。
すうっと息を吸うと、挑発のスキルを発動させた。
それはその場の魔物を自分に惹きつけるものだ。
「先に行ってください」
「おい、お前……」
「早く!時間は俺が稼ぎます」
「……くっ…わかった。絶対に戻ってくるから
それまで生きてろよ」
横を通り過ぎると、トレントの矛先が盾職の男
の方へと向かっていく。
これで距離が取れる。
そう思うと、男は盾を背に背負い直すと逆方向
へと走り出した。
短剣を持った女性とリーダー格の男性はそのま
ま前の階層へと向かう。
そんな時、ヒュンッと矢が素通りした。
「きゃっ……」
ズシャッと目の前で転がると女性は腰の短剣を
抜いた。
「おい、何をしてるんだ!」
「ちょっと、回復使えるっていうから同行を許
したのに足ひっぱてるんじゃないわよ!」
「仲間に当てるなんて、どんな腕してるんだ?」
「……」
「ちょっと早く治しなさいよ」
苛立ち気味にいうと、頭巾がはらりと取れた。
今まで顔を隠していただけに、どんな顔かと思
ったが、あまりにも美しく整っていた。
『人間如きが……』
その声はまるで鈴を転がすような綺麗で透き通
った声だった。
だが、言っている内容はあまりにも声からかけ
離れていた。
『我らの恨みを思い知るがいい』
大きく手を挙げると、さっきまで後ろにいた魔物
達が一斉にこちらに向かって来ていた。
「おい、嘘だろ」
「ちょっと、ふざけんじゃないわよっ!」
整った顔が歪むと四方から枝がしなりをきかせな
がら飛び交うと彼らを掴み引っ張り合うと取り合
いになった。
先ほどの人間達の身体は左右に引っ張られ、引き
裂かれていく。
血が飛び散ってマントに付いても、何の感情もな
いかのように前の階層のところまで戻っていく。
階段を少し上がると、ちょうどもう一つの人間の
パーティーが戻って来たところだった。
唇が憂いを浮かべると顔を隠す。
そして擬態するかのように壁と同化したのだった。
人間は不意打ちに弱い。
だから油断させておいて、後ろから……
その思いはすぐに消え去る事になるのだが、それ
は弘前の前に殺気を含んだ視線を送ってしまった
せいでもあった。
0
あなたにおすすめの小説
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】
ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。
転生はデフォです。
でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。
リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。
しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。
この話は第一部ということでそこまでは完結しています。
第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。
そして…
リウ君のかっこいい活躍を見てください。
魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る
ムーン
ファンタジー
完結しました!
魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。
無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。
そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。
能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。
滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。
悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。
悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。
狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。
やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
目を覚ますと雑魚キャラになっていたけど、何故か最強なんです・・・
Seabolt
ファンタジー
目を覚ますと雑魚キャラに何の因果か知らないけど、俺は最強の超能力者だった・・・
転生した世界の主流は魔力であって、中にはその魔力で貴族にまでなっている奴もいるという。
そんな世界をこれから冒険するんだけど、俺は何と雑魚キャラ。設定は村人となっている。
<script src="//accaii.com/genta/script.js" async></script><noscript><img src="//accaii.com/genta/script?guid=on"></noscript>
異世界に降り立った刀匠の孫─真打─
リゥル
ファンタジー
異世界に降り立った刀匠の孫─影打─が読みやすく修正され戻ってきました。ストーリーの続きも連載されます、是非お楽しみに!
主人公、帯刀奏。彼は刀鍛冶の人間国宝である、帯刀響の孫である。
亡くなった祖父の刀を握り泣いていると、突然異世界へと召喚されてしまう。
召喚されたものの、周囲の人々の期待とは裏腹に、彼の能力が期待していたものと違い、かけ離れて脆弱だったことを知る。
そして失敗と罵られ、彼の祖父が打った形見の刀まで侮辱された。
それに怒りを覚えたカナデは、形見の刀を抜刀。
過去に、勇者が使っていたと言われる聖剣に切りかかる。
――この物語は、冒険や物作り、によって成長していく少年たちを描く物語。
カナデは、人々と触れ合い、世界を知り、祖父を超える一振りを打つことが出来るのだろうか……。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない
よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。
魔力があっても普通の魔法が使えない俺。
そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ!
因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。
任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。
極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ!
そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。
そんなある日転機が訪れる。
いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。
昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。
そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。
精霊曰く御礼だってさ。
どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。
何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ?
どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。
俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。
そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。
そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。
ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。
そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。
そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ?
何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。
因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。
流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。
俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。
因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる