僕の好きは、君とは違う!

秋元智也

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第六話 後悔

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俊は家を出て、すぐに荒太を見つける事ができた。
後をこっそり付けるとホテル街へと来ていた。
そして、ビジネスホテルの前に行くと立ち止まった。

そこには山村教授が待っていた。

荒太と何やら会話していると荒太のスマホを取り出してゆらゆらと
見せていた。
そして手を差し出す。
荒太はその手を取らなかった。
否定する様に拒むといきなり苦しみ出すと倒れ込んでいく。
山村教授が荒太の身体を受け止めると地面に倒れるのは免れた。
しかし、意識がない!?

慌てるように救急車を呼んだ教授が蘇生法を試してくれたおかげで
息を吹き返した。

それでも怒りが収まらない俊は病院へと着いたあと、追いかけるよう
に病院にきた山村教授の胸ぐらを掴み上げていた。

我慢の限界を感じると場所をわきまえず殴りつけていた。
大きな音が響いて看護師が来ると怒られてしまった。

患者に付き添って来て、問題を起こすなど病院からも迷惑な客でしか
ない。

分かってはいる。
自分でも抑えようとしているけど、恵が居なくなった時よりも怒りが
制御できなかった。
あの時は寂しさと悔しさが入り混じっていて何もしたくないとおもっ
ていた。
でも今は、違う。
自分の不甲斐なさが余計に腹立たしい。

荒太の側にいたのに、何も気づいてやれないし、ましてや何かに悩ん
でいる事は知っていたはずなのに…相談すらしてくれない程度だとい
う事実に、今まで親友で恋人になってからは何も見ていなかった事を
痛感させられただけだったからだ。

教授はやっぱり大人の余裕があるのか、反論も反撃もしてこなかった。

「気がすんだかい?」
「あんたが荒太に手を出さなきゃこんな…。」
「それは私のせいだけなのかな?彼があんなに取り乱すなんてただ事
 じゃないと思うけど?何があったかは知らない。ただ自分を大事に
 できないほどの感情は危ないよ。私でなかったらどうなっていたの
 か分からないからね…」
「それは…どう言う…」
「支えるなら今が一番弱っているって事だよ」

山村教授は受付けへ行くと何か書類と支払いを済ませるとそのまま帰
っていった。
仮の病室で眠る荒太を眺めながら俊は自分に問う。

どうしたら荒太になんでも話してくれるような関係になれるのか…と。

目が覚めるとすぐに退院して家に帰った。
ずっと俊は側にいたが、まだ一言も喋っていない。

家に入ると何か言いたげな顔で荒太を見ていると、多分言いたい事は
気づいているんだろうけど、何も言って来なかった。

気まずい…。

お互いが思っているであろう感情だった。

「俊…あのさ…」
「荒太、ご飯まだだよな。今日は外食しないか?」
「…要らない。一人で行ってきていいよ。」

言葉のチョイスを間違えたと思ったが、寝室へと入っていくとその
まま横になっていた。
俊も今日はこれ以上の追求はしない事にした。
外へ出かけるとスマホにメールが届いていた。

プルルルルルーー。

「あ、もしもし?」
『珍しいね~今日も僕に会いたいって事?』
「あぁ、ちょっと相談があるんだけど…俺じゃどうしていいか分からなくて…」

電話口の声がいつも以上に暗い事に気づくと恵はすぐに誘いを承諾した。

『今は一人だからいいよ。いつものカフェでいい?』
「うん。すぐに行く」

電話を切ると駆け出していた。


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