僕の好きは、君とは違う!

秋元智也

文字の大きさ
44 / 55

第十四話 離れたくない

しおりを挟む
それからは俊を避けるように大学への講義を受けに行った。

そもそも同じ講義を取っていないので見つかる確率も低かった。
一週間が過ぎて、もうすぐ俊の誕生日である事を思い出した。

「これが最後かな…俊って身につける物にこだわりってないからな~」

唯一こだわっていたのが腕時計だった。
昔から父親の影響で時計だけはいい物をするんだって言ってたっけ。

「あいつ靴がヘタってきたの気づいてるかな~」

靴屋に寄ると俊のサイズで履きやすそうな物を選んだ。
ついでに手紙も書き添えると家に行ってみた。
部屋は真っ暗でまだ帰ってきていないようだった。

「行ってみるか…それにあの箱も回収しないと…」

押し入れに入れっぱなしの封印した箱の事を思い出すと少し気が重いが
鍵を使って家に入った。
真っ暗で、何も見えないが寝室の位置は分かるし家具の配置だって月明
かりが有れば電気を付けなくたって行ける。

下駄箱の奥にプレゼントをしまうと寝室へと向かった。

ギシッ…

何かが軋む音がしたが、荒太は気にせず寝室へと入った。流石に電気無し
で探すのは無理なので、パチッと電気を付けた。
するとベッド上に俊とその腕に抱かれるように恵の姿を見てしまった。

目が合うと気まずそうにこちらを見て目線を逸らした。

「あ、あらた…くん、えーっとこれには深い訳が…」
「…俊、恵と会えたんだね、良かったよ。忘れ物取りに来ただけ
 だから…って、勝手に開けたんだ…ちゃんと閉めておいたのに。
 明日ゴミの日だから全部出して置いて欲しかったんだけど…。
 うん、いいや、このまま持ってくよ」
「荒太!待ってくれ、俺の話を来てくれ!」

呼び止められたが冷たい目でチラッと見ただけですぐに箱の中身を
袋に全部詰めるとぎゅっと縛った。

「ごゆっくり~、俺もう行くから…」

なんでこんなところにいるんだよ。しかも恵まで連れ込むって…。
俺はただの邪魔者じゃんか!
荒太の腕を強く掴んでくる。
力では敵わない事は分かっていてもそれでも、ここにいるのは気ま
ずい。
振り払おうと必死で力を込めるがびくともしなかった。

「離せよ…」
「離さない。話を聞いてくれ…」
「離せって…いい加減にしてくれよ。」
「俺は荒太にずっと会いたかったんだ。これからだって…」

今更そんな言葉なんか欲しくない。
どうせその後で捨てるんならさっさといえばいいだろ。
俺じゃもう、嫌だと…。
言われるであろう言葉を想像すると涙が溢れそうになった。
必死に堪えると睨みつけた。

「だから…俺は…」
「もう、…見たくない。もう…俊の顔なんて見たくないんだよ…」

荒太は絞り出すように言うと、俊は傷ついたような目で見て来る。
お前が招いた事だろ?俺はそれまでのただの代わりだろ?
なんで引き留めんだよ…。

「いい加減離せよ…痛いんだって…おい、バカ力で掴むなって…」
「…なんでだよ。…が何したんだよ…俺は…なのに…最近はずっと…なのに」
「はぁ~何言って…うむっ!んんっっ!」

いきなり引っ張られると壁に押し付けられた。
口を塞がれ息ができない!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

異世界にやってきたら氷の宰相様が毎日お手製の弁当を持たせてくれる

七瀬京
BL
異世界に召喚された大学生ルイは、この世界を救う「巫覡」として、力を失った宝珠を癒やす役目を与えられる。 だが、異界の食べ物を受けつけない身体に苦しみ、倒れてしまう。 そんな彼を救ったのは、“氷の宰相”と呼ばれる美貌の男・ルースア。 唯一ルイが食べられるのは、彼の手で作られた料理だけ――。 優しさに触れるたび、ルイの胸に芽生える感情は“感謝”か、それとも“恋”か。 穏やかな日々の中で、ふたりの距離は静かに溶け合っていく。 ――心と身体を癒やす、年の差主従ファンタジーBL。

fall~獣のような男がぼくに歓びを教える

乃木のき
BL
お前は俺だけのものだ__結婚し穏やかな家庭を気づいてきた瑞生だが、元恋人の禄朗と再会してしまう。ダメなのに逢いたい。逢ってしまえばあなたに狂ってしまうだけなのに。 強く結ばれていたはずなのに小さなほころびが2人を引き離し、抗うように惹きつけ合う。 濃厚な情愛の行く先は地獄なのか天国なのか。 ※エブリスタで連載していた作品です

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

人生はままならない

野埜乃のの
BL
「おまえとは番にならない」 結婚して迎えた初夜。彼はそう僕にそう告げた。 異世界オメガバース ツイノベです

大嫌いだったアイツの子なんか絶対に身籠りません!

藤吉めぐみ
BL
国王の妾の子として、宮廷の片隅で母親とひっそりと暮らしていたユズハ。宮廷ではオメガの子だからと『下層の子』と蔑まれ、次期国王の子であるアサギからはしょっちゅういたずらをされていて、ユズハは大嫌いだった。 そんなある日、国王交代のタイミングで宮廷を追い出されたユズハ。娼館のスタッフとして働いていたが、十八歳になり、男娼となる。 初めての夜、客として現れたのは、幼い頃大嫌いだったアサギ、しかも「俺の子を孕め」なんて言ってきて――絶対に嫌! と思うユズハだが…… 架空の近未来世界を舞台にした、再会から始まるオメガバースです。

美澄の顔には抗えない。

米奏よぞら
BL
スパダリ美形攻め×流され面食い受け 高校時代に一目惚れした相手と勢いで付き合ったはいいものの、徐々に相手の熱が冷めていっていることに限界を感じた主人公のお話です。 ※なろう、カクヨムでも掲載中です。

処理中です...