禁断の扉を開けたのは!?

秋元智也

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決意

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診療所では慌ただしく何針も縫う手術が行われていた。
本来なら本土の病院に運びたいところだが今は定期便が運行していない夜中な為、急遽診療所での治療となった。
腕は鈍っていなかったのか無事に命をとりとめ、今はぐっすりと眠っている。
明日には目覚めるだろうと考え自宅兼診療所で看病することにした。
ここは吉野が一人で暮らしている為、誰からも干渉されることはない。
時たまうなされるように遼を呼んでいたが、明け方には落ち着いて来ていた。
横でウトウトと眠ってしまった吉野はいきなりの揺れに飛び起きていた。
何事かと目を覚ますと七海が揺すっている事に安堵した。
「大丈夫ですか?昨日は何だったんですか?」
「そんな事より、遼さんは?・・・遼さんは何処ですか?」
凄い剣幕で掴みかかってくる七海に気圧されて尻餅をつきながら頭をポリポリと掻きながら昨日見たことを話した。
話を聞きながら顔色が真っ青になっていく七海に落ち着くように説得した。
「警察に行きましょう!きっと助けになってくれます。」
「おそいっ・・・もう、遅いんだっ・・・俺が付いていながら・・・」
ただ、俯いて嗚咽混じりに嘆く姿は見ていられなかった。


目隠しをされたままどこかへと運ばれると船に乗せられ、車のトランクに押し込まれ、5時間くらい移動した後に薬を嗅がされるとそのまま混沌していった。
気づいた時には薄暗いコンクリートに寝かされていた。
手足の拘束はなく、ただ閉じ込められているようだった。
天上から漏れる光であさであることは分かった。
体を引きずるように壁際に向かうとゆっくりと出口を探した。
手探りで扉らしきモノを見つけるとガチャっと開けた。
鍵はかかっておらず、そのまま外に出れた。
そこは倉庫が立ち並ぶ倉庫街だった。
「どこなんだよ、早く逃げなきゃ!」
思うように動かない足を引きずりながら這うように移動していく。
監視カメラで見られているなど思ってもいない遼はゆっくりとだが自由を求めてさ迷っていた。
足音が聞こえると反対方向へ、また足音がすると違う方へと誘導されているとは思ってもみない。
カメラ越しに見ていると不思議と疑問が生じた。
「何で立ち上がらないの?・・・まさかっ、歩けないの?」
後ろに並ぶ黒服に聞くが返事は曖昧だった。
「あなた達痛めつけたんじゃないでしょうね?」
「いえっ、そのような事は・・・」
口ごもるあたり怪しいものだった。
画面に写る遼は決して歩く事も走る事も出来ずただ、引きずって這いずるだけだった。
大分と距離を移動した辺りで動かなくなってしまった。
休んでいるのか、草むらに身を横たえたままじっとしていた。
「もう、いいわ。回収してきて!」
遼の周りから無数の足音が響いてきていて囲まれたのがわかるとそっと目を閉じて動くのを諦めたのだった。
また別の倉庫の一室に連れていかれると男達は出ていってしまった。
一人取り残されると、飲み物とパンが置かれていた。
あからさまに食べろと言われているようで釈だったがお腹が盛大に鳴っていたので手を伸ばして食べ始めた。
「七海がいたら手を洗えって煩く言われるんだろうなぁ~・・・七海・・・うっ・・・」
涙が頬を伝っていく。
あの後、どうしたんだろう?
吉野先生は見つからずにすんだだろうか?
きっと、七海を助けてくれるはず。
腕のいい医者であった吉野なら大丈夫だと確信していた。


吉野は外科のスペシャリストだった。
ある医療事故で患者を死なせてからはもみ消しの代わりに裏の手術に携わるようになった。
闇で行われる臓器売買である。
政治家達の家族は表だって臓器移植をさせるのではなく、生きた人間から臓器を取り出して移植したのだ。
金で人身売買が行われていたのだ。
腕がいいことを買われ、何件も移植手術を行ってきた。
取り出される側の泣き叫ぶ声が頭から離れなくなってきたある日、病院を抜け出して夜逃げしたのである。
東京を離れ、暫くは長野の田舎に籠っていたが、急遽沖縄の島でゆったりと暮らそうと決めて診療所を開いた。
ここまでは追って来ないだろうと思いなれない島での暮らしがスタートした。
最初は余所者という事で村の人も誰一人近づかなかったが村長の娘を治療してから打ち解けることが出来た。
そして、七海と遼が現れるとまるで昔の自分を見ているようでいてもたってもいられなかった。
自分が支えなくてはと思ったのだ。
が、支えるどころか遼を拐われ、気落ちする七海にかける言葉も見つからなかった。
覚悟を決めると定期船の運転手に行き先を変えて貰うように頼み込んだ。
「七海さん、追いかけますよ!」
「だが、もう・・・」
「落ち込んでいてもしょうがないでしょう。訛りはなかったのであそらく東京近郊でしょう?」
「・・・」
「貴方は誰が拐ったか分かっているんじゃないですか?諦めるんですか?」
七海は唇を噛み締めると拳を降り下ろした。
地面に叩きつけた事で多少ならず血が滲んだが、それは気にもとめず顔を上げた。
決意は決まったようだった。
「吉野先生はここにいてください。これは俺のけじめです。」
「いえっ、彼は僕の患者です。最後まで付き合いますよ!」
そう言うとお互い振り向き、本州を見つめたのだった。
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