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平穏
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裏口から入ると静まり返った夜の病院はもの寂しげで非常灯だけが足元を照らしていた。
吉野は勝手知ったる院内を案内すると遼の病室まで案内してくれた。
中は静まり返っていて月の光が差し込んでいた。
個室の奥へと進むとカーテンが引かれておりその奥には遼が横たわっていて静かな寝息をたてていた。
「りょう・・・。」
「静かになさってください。まだ眠っているので。そこのベットを使ってください。」
吉野は説明だけすると二人だけにして出ていってしまった。
ありがたい心遣いだった。
脇の椅子を引き出すと眠る遼の横に腰をおろした。
じっと眺めているとまだあどけなさが残っている。
口を開けばしっかりした口調で、いつも物怖じしない彼が嘘のようだった。
「少しは、頼りないかもしれないけど。・・・頼ってくれてもいいんだからなっ?」
長くなっていた前髪に触れるとサラッと滑り落ちた。
そうして時間が経つのを忘れ相沢自身も疲れからか眠ってしまっていた。
モゾモゾと動く気配に気が付くと朝の陽差しが差し込みうっすらと明るんで来ていた。
遼を見ると眠そうな顔でこちらを見上げていた。
「お、おはよう。」
「・・・」
何も話さない遼に手を差し出すと頬を撫でた。
痛々しい体も院内着で隠され少し赤く充血した瞳が物語っていた。
「一緒に逃げよう。今度は僕が守るから!」
痛そうに目を細めたが、何か言いたげにしながら話出そうとしない。
「何でも言ってくれよ。僕達は兄弟だろう?」
そっと頭を撫で抱き寄せた。
暖かい体温と柔かな感触が伝わってきた。
細い体は相沢より幾分か華奢であった。
話し声に気がついた吉野がドアを開くと同時に遼が声を発していた。
「・・兄貴さぁ、甘いんじゃないの?」
「え、、、。」
「どれだけ守られてたと思ってんだよ!綾音が手配した部下に見張られてたんだぜ?知ってたかよ。それと、俺がいたおかげで襲われなかったから安心してた?」
咄嗟に体を離すと否定した。
「違う!そんな事はない。」
「じゃーさっき襲われそうになったとき、俺がいれば良かったって思ったとか?」
「一体何を・・・?」
まだ何も話していない昨日の出来事を知っているかのように話す遼の顔を愕然となりながら眺めていた。
「あんたは足手まといにしかなんないんだよ。出てってくれよ。俺の前に現れんなよ!」
いきなり言われた言葉に一瞬目の前が暗くなった。
そんな事、解っていたんだ。
それでも兄弟だから分かり合えると思っていた。
自分をしたって毎回会いに来てくれる遼の優しさに甘えていた。
自分の甘さに悔しさが込み上げてきて立ち上がると廊下へと飛び出していた。
一心不乱に走ると息が切れて路上で立ち止まった。
息を整えながら頬を伝う涙に気が付く。
今まで流してきた涙と違い、今日のは胸が締め付けられるくらいに辛い涙だった。
遼の言葉を反復し咄嗟に振り替えると後ろの電柱の陰に黒服の護衛が見えた。
「ずっと、見張られてたんだ・・・違う!守られてたって訳・・か。」
情けなくてその場で声をあげて笑い出していた。
人目も憚らずただ大声で笑い続けていた。
病室に残された遼の所には吉野が全てを聞いていたのか呆れた表情で飲み物を差し出していた。
「いいんですか?あんな言い方しなくても良かったのでは?」
「・・・聞いてたのかよ!趣味がわりぃーな?」
上体を起き上がる遼の肩に羽織をかけると椅子へと腰を下ろした。
「いいえ、聞こえてきたもので。自分から遠ざけたかったのでしょう?」
「分かてるなら黙っとけよ!兄貴を焚き付けたの、あんただろう?」
「そうですね。保護者になってくれれば安泰だと思ったんですが・・・期待はずれでした。」
「余計なことはするなよ。これでも俺は不幸なんて思っちゃいねーし。綾音に出会って良かったって思ってんだぜ!そうじゃなかったらとっくに・・・」
目を伏せると悲しげな表情を浮かべた。
こういう仕草は年齢を感じさせなかった。
大人びた、全てを見透かしたような視線を感じた。
「あーぁ。綾音が着けたピアス一個どこかにいっちまったな?」
「皮膚ごと千切れましたからね。ほんとにビックリしましたよ。血だらけで連れてこられた時は息が止まるかと思いました。」
「大袈裟だろ?」
「ほんとに貴方は心臓に悪いですよ。」
呆れたように遼の頭をぐしゃと掻き回すと横になるように促した。
「もう少し眠って下さい。今はゆっくりと体を休めるのが肝心です。」
「うん。そうするよ」
布団をかけてやるとカーテンを閉めると隣のベットに吉野も横になった。
カーテンが引かれているため表情は分からないがそれでも遼のくぐもった声が暫く続いていた。
静かになった時には静かな寝息に変わっていた。
「我慢なんてしなくていいのに・・・」
一人ぼやくが、本人には聞こえてはいなかった。
目元に残る濡れた痕だけが彼の心を現しているようだった。
「本当に不器用なんですね。誰かに甘える事も時には必要ですよ。」
そう言うと吉野はベットに腰掛け横になった。
吉野は勝手知ったる院内を案内すると遼の病室まで案内してくれた。
中は静まり返っていて月の光が差し込んでいた。
個室の奥へと進むとカーテンが引かれておりその奥には遼が横たわっていて静かな寝息をたてていた。
「りょう・・・。」
「静かになさってください。まだ眠っているので。そこのベットを使ってください。」
吉野は説明だけすると二人だけにして出ていってしまった。
ありがたい心遣いだった。
脇の椅子を引き出すと眠る遼の横に腰をおろした。
じっと眺めているとまだあどけなさが残っている。
口を開けばしっかりした口調で、いつも物怖じしない彼が嘘のようだった。
「少しは、頼りないかもしれないけど。・・・頼ってくれてもいいんだからなっ?」
長くなっていた前髪に触れるとサラッと滑り落ちた。
そうして時間が経つのを忘れ相沢自身も疲れからか眠ってしまっていた。
モゾモゾと動く気配に気が付くと朝の陽差しが差し込みうっすらと明るんで来ていた。
遼を見ると眠そうな顔でこちらを見上げていた。
「お、おはよう。」
「・・・」
何も話さない遼に手を差し出すと頬を撫でた。
痛々しい体も院内着で隠され少し赤く充血した瞳が物語っていた。
「一緒に逃げよう。今度は僕が守るから!」
痛そうに目を細めたが、何か言いたげにしながら話出そうとしない。
「何でも言ってくれよ。僕達は兄弟だろう?」
そっと頭を撫で抱き寄せた。
暖かい体温と柔かな感触が伝わってきた。
細い体は相沢より幾分か華奢であった。
話し声に気がついた吉野がドアを開くと同時に遼が声を発していた。
「・・兄貴さぁ、甘いんじゃないの?」
「え、、、。」
「どれだけ守られてたと思ってんだよ!綾音が手配した部下に見張られてたんだぜ?知ってたかよ。それと、俺がいたおかげで襲われなかったから安心してた?」
咄嗟に体を離すと否定した。
「違う!そんな事はない。」
「じゃーさっき襲われそうになったとき、俺がいれば良かったって思ったとか?」
「一体何を・・・?」
まだ何も話していない昨日の出来事を知っているかのように話す遼の顔を愕然となりながら眺めていた。
「あんたは足手まといにしかなんないんだよ。出てってくれよ。俺の前に現れんなよ!」
いきなり言われた言葉に一瞬目の前が暗くなった。
そんな事、解っていたんだ。
それでも兄弟だから分かり合えると思っていた。
自分をしたって毎回会いに来てくれる遼の優しさに甘えていた。
自分の甘さに悔しさが込み上げてきて立ち上がると廊下へと飛び出していた。
一心不乱に走ると息が切れて路上で立ち止まった。
息を整えながら頬を伝う涙に気が付く。
今まで流してきた涙と違い、今日のは胸が締め付けられるくらいに辛い涙だった。
遼の言葉を反復し咄嗟に振り替えると後ろの電柱の陰に黒服の護衛が見えた。
「ずっと、見張られてたんだ・・・違う!守られてたって訳・・か。」
情けなくてその場で声をあげて笑い出していた。
人目も憚らずただ大声で笑い続けていた。
病室に残された遼の所には吉野が全てを聞いていたのか呆れた表情で飲み物を差し出していた。
「いいんですか?あんな言い方しなくても良かったのでは?」
「・・・聞いてたのかよ!趣味がわりぃーな?」
上体を起き上がる遼の肩に羽織をかけると椅子へと腰を下ろした。
「いいえ、聞こえてきたもので。自分から遠ざけたかったのでしょう?」
「分かてるなら黙っとけよ!兄貴を焚き付けたの、あんただろう?」
「そうですね。保護者になってくれれば安泰だと思ったんですが・・・期待はずれでした。」
「余計なことはするなよ。これでも俺は不幸なんて思っちゃいねーし。綾音に出会って良かったって思ってんだぜ!そうじゃなかったらとっくに・・・」
目を伏せると悲しげな表情を浮かべた。
こういう仕草は年齢を感じさせなかった。
大人びた、全てを見透かしたような視線を感じた。
「あーぁ。綾音が着けたピアス一個どこかにいっちまったな?」
「皮膚ごと千切れましたからね。ほんとにビックリしましたよ。血だらけで連れてこられた時は息が止まるかと思いました。」
「大袈裟だろ?」
「ほんとに貴方は心臓に悪いですよ。」
呆れたように遼の頭をぐしゃと掻き回すと横になるように促した。
「もう少し眠って下さい。今はゆっくりと体を休めるのが肝心です。」
「うん。そうするよ」
布団をかけてやるとカーテンを閉めると隣のベットに吉野も横になった。
カーテンが引かれているため表情は分からないがそれでも遼のくぐもった声が暫く続いていた。
静かになった時には静かな寝息に変わっていた。
「我慢なんてしなくていいのに・・・」
一人ぼやくが、本人には聞こえてはいなかった。
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「本当に不器用なんですね。誰かに甘える事も時には必要ですよ。」
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