好きか?嫌いか?

秋元智也

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第四十四話 大和の気持ち

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    ー大和サイドー

井上に強姦された事を知った時は目の前が真っ赤に染まった気がした。
スマホに入ってきた『助けて』のメール。
急いで駆けつけるとそこには縛られて井上のナニが突き刺さったままの
宮野の姿があった。

助けてと打ったのは誰なのか?
宮野には到底打てない状態だった。

それでも、まずはゆっくり近づき宮野の中から出させる。そして思いっ
きり殴った!
壁に激突したのを見ながら、宮野に駆け寄った。
拘束を解くと、擦れて腕が赤い痕になっていた。
流れる出る精液を見ていると苛立ちが募った。

それでも結弦を呼びつけると、余分な山田までついてきた。
山田のせいで、かけた上着が落ちて、宮野の素肌を晒す事になった。
マジでムカつく奴だ。

結弦の機転で宮野を安全そうな場所へと運んだ。
倉庫のマットの上に横たえると、上着をかけたが、宮野は震えるばかりで
大和のシャツを握った手を離そうとしない。

大丈夫だと言い聞かせたが、中に入っている井上の精液が嫌な様だ。
それに、色々と触れられたのか気持ち悪がった。
ならと思い立ち、上書きするつもりで彼を抱いた。

ショックなら、もっと気持ちよくして忘れさせようと思って気を失うまで
抱き潰した。
やり過ぎたとも思ったが、保健室に運んだ。
そして、保険医は状況を見ただけで、すぐに受け入れてくれた。
男が強姦される事って、稀にあるのだろうか?
適切に処理してくれて助かった。
彼を預けると結弦の方に戻った。
後処理も終えて、学校側へと直談判しに行ったらしい。
 

後日、あのビラが屋上から撒かれたのだった。
内密に処理される予定だった事が公になった証拠だった。
 
保護者にも知られ、井上は解雇処分になった。
そして、宮野も学校には来れなくなった。
家に何度も行ったが、会う事はできなかった。
そして、数日考えた末に、再び会いに行った時には荷物も運び出され、
もぬけの空で、家も売りに出されていた。

後から聞いた話だが、家にはおらず、宮野は精神病棟に軟禁されてい
たらしい。
それからの消息は誰も知らない。

高校を卒業し、大学へは行かず就職する事にした。
大手企業のビルの近くの定食屋。
小さいが、ちゃんと注文があって、美味しいと評判の店だった。
顔だけはいいと評判の大和だが、愛想がなくてガッカリされる事が
多々あった。
たまにパブへ足を運び良さそうな男を見繕っては抱いていた。

決まった相手はいないし、作る気もなかった。
今は何回か同じ相手を抱いているが、そろそろ飽きてきていた。
最初は宮野に似ているからという理由だったが、何回も会ううちに
性格が似てないし、話し方も似てない。
それより、彼を抱いてもドキドキしなかった。
ただの精処理としか思えなくなってきたのだ。

大和 「な~健。これで最後にしよっ!」
健  「へっ?何言ってるの?俺の事好きなんでしょ?いいじゃん
    このままで?」
大和 「好きじゃない…ただそこにいたから誘っただけ…」
健  「何言ってるの?だって身体の相性だっていいじゃん!」
大和 「そうでもないぞ?まぁ、そういう訳だから。じゃーな!」

呆気なく答えながら、健のスマホから自分の連絡先を消すと、履歴も
全部削除して放り投げた。

健  「な…何でだよ!お前なんて最低だっ!刺されちまえ!」
大和 「はいはい。もう連絡してくるなよ!まぁ、しても出ねー
    けどな!」

いつも本気になるのは相手の方だけ。
冷めた心に温かい温もりをくれたのは彼だけだった。
バイトをしながら、夜の店での客引きもした。
ホストとしてやってもいいが、もう女性を抱く事はないと感じていた
のでただの黒服として働いていた。

店主 「うちの店で働けばNo.1間違い無しなんだけどな~」
大和 「男のが好きなんで、すんません。」
店主 「もったいないね~。顔はいいのに…!」

苦笑いを浮かべながらホスト達のサポートをする。
もちろん商売道具のホストに手を出した事はあるが、それも一回交わ
れば、すぐに飽きてしまった。

大和のバイト先で今日は新人の歓迎会が行われると言うので貸し切り
にするという連絡があった。
定食屋としては、一気に人数が入るので、大歓迎だった。

店主 「大和お前お客に手を出すなよ~、今日はそこのでっかいビル
    の社員達が集まるからってイケメンつまみ食いされたらこっ
    ちの商売上がったりだからな?」
大和 「はいはい、分かってるって。最近セフレと別れて寂しい思い
    してるんだけどな~」
店主 「ここはホストクラブじゃないからな?」
大和 「分かってるって!よっぽどの上玉じゃない限りは食わねー
    って」
店主 「お前の言う事は当てにならねーからな…」

するとぞろぞろろ若い社員達が連れられて店に入ってきた。
女子さ社員は大和を見てきゃーきゃー騒いでいたが、少し笑って手を
振ると真っ赤になって奥へと入っていった。
席に着くなり、飲み物の注物を取っていく。
 
係長 「遅れてくる宮野くんはビールでいいな!君、注文いいかね?
    生28コ頼むよ」
大和 「はーい」

少し気になる言葉を聞いた気がするが、今は仕事と割り切りビールを
運んだ。
その頃には遅刻組も到着したようだった。
黒髪の見覚えのある顔に振り返ると、懐かしい彼がそこにいた。
上司と話している姿を見ると、いてもたってもいられなくて、ビール
を手渡しにいっていた。

大和 「どうぞ?冷えた生ビールです」
宮野 「ありがとう…」

すんなり受け取ると、にっこり笑うと席について隣と話し始めた。
まるで店員に飲み物を受け取っただけのような態度だった。

大和 「あのっ…何か注文されますか?」
宮野 「いえ、大丈夫です。まだ何か?」
大和 「な、なんでもないです。俺と会ったとこは?」
宮野 「ふふっ。足りてるので大丈夫です。」

似ているのに、大和を見ても驚きもしない。
ただの他人の空似なのだろうか?
それでも不思議と他人には思えなかった。
トイレと言って席を立つのを見計らって後をついていく。
中へと入ったのを見計らうと一気に距離を詰めて宮野の口を塞ぐと
奥の個室に連れ込んだ。
後ろ手で鍵を閉めると後ろから抱きしめていた。

大和 「宮野守だよね?今まで一体どこにいたの?」
宮野 「大和…手を退けてくれる?」
大和 「そしたら逃げるだろ?逃すと思ったか?」
宮野 「…そうだね。君はいつもそうだったね。」

振り向くとにっこりと微笑んだ。

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