間違って村娘が勇者パーティーにいます

秋元智也

文字の大きさ
84 / 113

第八十四話 パリィ

しおりを挟む
旅はかなりハードな気がした。
勇者といえど、女性にはしんどい日々だった。

森での野宿などトイレは茂みの中でだし、船に乗れば女子トイレなどないから、
男子と一緒の場所を使う。
ボットン便所なので、臭いが酷かった。

男の椎名や天野でさえ鼻を摘む程だった。

「昔のトイレって感じだよな~」
「昔って…俺は洋式しか使った事ないぞ?」
「椎名くん、それ嫌味?俺の小さい頃はこんなのが主流よ?」

天野とはさほど年は離れていないはずだが、昔の度合いが少しずれているよう
だった。

大陸を渡ると、もう後戻りはできない。
ただひたすら前へ進むと決意したのだった。

いつしかカエデと天野との連携も上手く行くようになってきた。
椎名を中心にタゲの受け渡しや、プレイスタイルも変化した。
一番変わったのは椎名が丸い小楯を持った事だった。

剣一本で戦ってきたスタイルだったが、パリィを覚えると、凄まじく強く感
じた。

敵の攻撃を弾き、それでいて隙を作ると言うのは非常に効率がいい。

最近覚えたスキルの中では一番いいスキルだった。

しかしこれも大型の魔物や、真っ芯で攻撃してくる単純な魔物だけに通じる
事だった。
稀に狼系の魔物には全く通じなかった。
そこで丸盾で初撃を受けると無防備になった腹に剣を突き立てる。

うめき声を上げて絶命するのを確認してから魔石を剥ぎ取った。

「新たなのがきたわよ!」

カエデの声に二人が反応する。

索敵にはカエデの方が優れたスキルを持っていた。

「索敵スキルいいな~」

文句をいう天野にカエデは笑ってみせた。
索敵スキルはそう簡単に身につくものではなかった。
繰り返しマップとの睨めっこをした挙句に今まで無かったところに魔力反応
を感知して見ている地図に表記した。

敵の位置や、動きも逐一見える為、囲い込みや奇襲には最適だった。

「次、左から2体!そのあと真っ正面から一体!」

カエデの声に合わせるように椎名と天野が構える。
左の2体を倒すと前を向くと警戒する。

一際大きな体をした魔物が突進してきていた。

「今日の晩飯に食べ応えがありそうだ!」
「じゃ~しっかり細切れにしないとなっ!」

真っ正面に構えるとギリギリで左右に避けると横から攻撃を同時に加えて
いく。
怯んだところをカエデが上から降りてきて首もとを狙って串刺しにする。

貫通するが、一気に暴れ出すので捕まっているにも必死だ。
スキル発動すると肉が飛び散るが完全に首を落とせなかったらしい。

舌打ちするかのように飛び退くカエデと入れ替わるように椎名が剣を振り下
ろす。
そして右足には天野の矢がサクッと刺さると爆発して吹き飛ぶ。

完全に首が切り落とされ地面に転がると、魔物の身体はそのまま大きな音と
振動で倒れて行った。

「やったね!ちょっと擦り傷程度で倒しちゃったよ~」
「よし、強くなってる!」

強くなっている実感を感じながら天野もカエデも魔物を解体し始めた。
辺りは倒した魔物だらけで肉を取るとイベントリに入れていく。
魔石も確保して街で売る用だ。

旅にはやっぱり馬車が欲しいところで、次の街では馬と馬車を買おうとみんな
で話し合っていた。

「少し値が張ってもいいやつがいいですわ~」
「いやいや、荷物ようでいいでしょ?」
「そんな事ありませんわ~、魔石を売ればそれなりの物は手に入りますし~」
「ダメダメ、食料買い足したいし、装備だってメンテに出したいし」

聖女とカエデとで譲れない戦いが始まっていた。

「椎名くんはどうなのさ!」
「天野さん!どうなのですの!」

二人に聞かれると椎名は安くても丈夫であればいいと言うと、天野は乗りやす
さも大事かなと消えいるような声で言った。

街に着くまではこの口論が続くらしい。

「どっちでもいいだろ?そこまでこだわる理由はないだろ?」
「載っているとお尻が痛くなるんですのよ!それに長時間だと疲れてしまいま
 すわ」
「回復かければいいだろ?それしかできないんだから。」

椎名がいえば、カエデも納得したように頷いた。

「それはちょっと言い過ぎじゃないか?旅の仲間なんだよ?」

天野は必死に聖女を庇うが、それはあながち間違いではない。
全員勇者というパーティにいるが、全員が徐々回復を手にした今、聖女の役目
はヒールで回復量を増やす事だけだった。

勇者には毒も効かないので解毒魔法も必要ない。
呪術も効かないし、本当に便利な耐性だった。

毒があっても平気で食べれるし、問題はない。

井戸水も汚染されていても飲んだ瞬間に綺麗な聖水へと変わる。
そんな人達に囲まれて劣等感を抱かない人はいないだろう。

人々に崇められて育った聖女にとってこの旅は予想外の出来事ばかりだった。

聖女が眠りにつくと、焚き火を囲んで何か話していた。
耳を済ますと聖女という単語が聞こえてきて、余計に眠れなくなった。


「そういえばさ~聖女のヒールってどのくらいの回復量なの?ポーションより上?」
「一気に全快だぞ!」

カエデの質問に天野が答えるが、椎名がすぐに否定した。

「体力なら1000くらいだな。空間全体にヒールを持続的にかけると850づつを連続っ
 て感じだったかな?」
「へーそうなんだ~。HPも増えたし全快させるならポーションのが効率良くない?」
「それはそうだろう。」
「やっぱりね~、そろそろ魔王城までの距離を考えると聖女にはこの辺で待ってて貰
 う方がいいんじゃないかなって思うんだ。」
「それは…なんでだよ。俺は…最後まで一緒に…」

天野は反対するが、カエデは続けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?

monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。 そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。 主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。 ※今回の表紙はAI生成です ※小説家になろうにも公開してます

処理中です...