君は死なせない

秋元智也

文字の大きさ
11 / 32

11話

しおりを挟む
今から危害を加えようとしている生徒も粛清のうちに入るの
だと知った。

本人の知らないところで、勝手に起こる事はどうしようもない
と言いたいところだが、実際にはそうもいかない。

警察などの国の機関では名前が上がった生徒も捜査の対象にな
り得るからだった。

「霧島雅人という生徒は今どこに?」

「それでしたら……確か一年の教室なので、案内しますね」

教職員は笑顔で案内すると言い出す。
多分今頃は保健室で眠っているだろう。

さっき上田と入れ違いに養護教諭が帰ってきていたし、アリ
バイもあるし、何か手を加えたとかは思われる事もないだろ
う。

あとは、もう一人の彼が見えている生徒が他にいるかどうか
だった。

今は上田のみのような気もする。

観察という名の霧島との友情計画が上田の中で着実に進行し
ていった。

どうにも気になるのだ。

背中にできた大きな傷。
この傷と共に忘れてしまった記憶を思い出したかった。

いつも夢に出る少年も影が二重に見えた。

たまに勝手に歩き出す影は本人には見えてない。
口うるさく話し出すと、同時に二人分の会話を聞くことに
なる。

「綾くん?聞いてるの?」
『綾、綾、あっちに行こう』

「ごめん、一人ずつ話して?」

「一人づつって、僕は一人だよ?」
『何言ってるの!それより向こうであそぼ、きっと面白い事
 が起きるよ』

いつも影が話すと、何かが起きる。
事故だったり、爆発だったり。
いきなり階段から何かが落ちてきたりと、多分影が引き起こ
しているのだろう。

それでも、彼のそばに居たいと思えた。
変わった気はしたけど、それでも一緒にいると楽しかった。

でも…それも長く続かなかった。

彼の母親が凶器を持って、すごい形相で向かってきていたから。
逃す為に庇ったところまでは覚えている。

それなのに、彼の顔を思い出せないでいる。

今も、まだ、わからない。
上田綾はそれから、身体が治ってからは鍛える事に精をだした。

今度はあんな無様な事がないように。
もし次があったのなら、きっと今度は彼のそばにいられる
ように。

「まずは彼の事を知らないとな……」

霧島雅人。
彼に詳しいだろう人物といえば、兄の永人だ。

だが、永人は三年で、素行も悪い。

怪しげな連中ともつるんでいるという噂まである。
先日から立て続けに亡くなっているのは彼の取り巻きの生徒達
だった。

何かあるのかもしれない。
きっと雅人をはめようとしているのは永人なのではないだろう
か?

そうなれば、影が狙う相手は………。

家族にまで手を出すだろうか?
無意識と言っても、血のつながった兄弟を手にかけるか…。

多分、見張れるのも上田だけだろう。
見えているのも、直接話したのも、今は上田だけなのだから…。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

橘若頭と怖がり姫

真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。 その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。 高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

さようなら、お別れしましょう

椿蛍
恋愛
「紹介しよう。新しい妻だ」――夫が『新しい妻』を連れてきた。  妻に新しいも古いもありますか?  愛人を通り越して、突然、夫が連れてきたのは『妻』!?  私に興味のない夫は、邪魔な私を遠ざけた。  ――つまり、別居。 夫と父に命を握られた【契約】で縛られた政略結婚。  ――あなたにお礼を言いますわ。 【契約】を無効にする方法を探し出し、夫と父から自由になってみせる! ※他サイトにも掲載しております。 ※表紙はお借りしたものです。

婚約者から妾になれと言われた私は、婚約を破棄することにしました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私エミリーは、婚約者のアシェル王子に「妾になれ」と言われてしまう。 アシェルは子爵令嬢のキアラを好きになったようで、妾になる原因を私のせいにしたいようだ。 もうアシェルと関わりたくない私は、妾にならず婚約破棄しようと決意していた。

処理中です...