14 / 32
14話
しおりを挟む
朝から清々しい日だった。
キャサリンも居ないし兄の永人も家にいない。
キッチンにはいつものように朝食が用意されており、昨日までの
憂鬱な気分とは違って晴れやかな気分だった。
帰りには、また家庭教師の時間があるので急いで帰る事になりそ
うだったが、それでも一人になる口実になるからいい。
上田がクラスで馴染んでいくほど、寂しく感じていた。
が、忙しければそれも忘れられる。
それで、いいんだ。
「おはよう!霧島っ」
「え、上田……くん!どうして……」
「上田でいいよ、いや……?いっそ綾でもいいよ?」
馴れ馴れしく言ってくる上田に雅人は苦笑いを浮かべた。
まだこういう人との距離感がうまく掴めないでいたからだった。
朝は人通りも少なく、歩きやすい。
電車もまだ混雑する前のせいか、空いていた。
「いつもこの時間?」
「別に……上田はどうしてここに?」
「ん~~~。もっと霧島と話がしたかったから……って言ったら
信じる?」
「……」
そうだったら嬉しい。
心ではそう思うけど、そのままの意味でとっていいのだろうか?
揶揄っているだけなのではないか?
そう思う自分が嫌になりそうだった。
「別に……」
「そうきたか……まぁ、いいや。俺さ~……昔の記憶がないんだよ
ね~………だからそれを知りたいって思ってるんだ。」
いきなりのカミングアウトに雅人は立ち止まった。
雅人も、あの時の記憶だけぽっかりなくなっていた。
母が死んだ、あの瞬間。
あの暑い日の一日だけ…すっぽり消えていたのだ。
でも、それは雅人の事情で、上田には関係ない事だ。
だからあえて、同じ境遇だとかいう必要はない。
別に馴れ合いをしたいわけでもないのだから。
「そうか……」
「え~それだけ?ちょっとは同情してくれるかな~って思ったんだ
けどな~。これ、言ったの霧島が初めてだし?」
「……」
「まぁ、いいや。学校まで一緒に行こう。いつもこの時間なの?霧島
ってすげー真面目だよな?家庭教師ってどんな事教えてくれんの?」
今まで以上に距離が近い!
「いや……別に普通に学校の勉強とかだよ…」
「そっか、俺も分からない所は霧島に聞こっかな~。いーよな?」
こんなにぐいぐい来るやつだっただろうか?
少し、人が変わったような気がする。
「う……うん……」
「よし!もうすぐ期末だし、よろしくな!」
明るい人だと思った。
昔を懐かしくなるような、気持ちにさせる青年だった。
キャサリンも居ないし兄の永人も家にいない。
キッチンにはいつものように朝食が用意されており、昨日までの
憂鬱な気分とは違って晴れやかな気分だった。
帰りには、また家庭教師の時間があるので急いで帰る事になりそ
うだったが、それでも一人になる口実になるからいい。
上田がクラスで馴染んでいくほど、寂しく感じていた。
が、忙しければそれも忘れられる。
それで、いいんだ。
「おはよう!霧島っ」
「え、上田……くん!どうして……」
「上田でいいよ、いや……?いっそ綾でもいいよ?」
馴れ馴れしく言ってくる上田に雅人は苦笑いを浮かべた。
まだこういう人との距離感がうまく掴めないでいたからだった。
朝は人通りも少なく、歩きやすい。
電車もまだ混雑する前のせいか、空いていた。
「いつもこの時間?」
「別に……上田はどうしてここに?」
「ん~~~。もっと霧島と話がしたかったから……って言ったら
信じる?」
「……」
そうだったら嬉しい。
心ではそう思うけど、そのままの意味でとっていいのだろうか?
揶揄っているだけなのではないか?
そう思う自分が嫌になりそうだった。
「別に……」
「そうきたか……まぁ、いいや。俺さ~……昔の記憶がないんだよ
ね~………だからそれを知りたいって思ってるんだ。」
いきなりのカミングアウトに雅人は立ち止まった。
雅人も、あの時の記憶だけぽっかりなくなっていた。
母が死んだ、あの瞬間。
あの暑い日の一日だけ…すっぽり消えていたのだ。
でも、それは雅人の事情で、上田には関係ない事だ。
だからあえて、同じ境遇だとかいう必要はない。
別に馴れ合いをしたいわけでもないのだから。
「そうか……」
「え~それだけ?ちょっとは同情してくれるかな~って思ったんだ
けどな~。これ、言ったの霧島が初めてだし?」
「……」
「まぁ、いいや。学校まで一緒に行こう。いつもこの時間なの?霧島
ってすげー真面目だよな?家庭教師ってどんな事教えてくれんの?」
今まで以上に距離が近い!
「いや……別に普通に学校の勉強とかだよ…」
「そっか、俺も分からない所は霧島に聞こっかな~。いーよな?」
こんなにぐいぐい来るやつだっただろうか?
少し、人が変わったような気がする。
「う……うん……」
「よし!もうすぐ期末だし、よろしくな!」
明るい人だと思った。
昔を懐かしくなるような、気持ちにさせる青年だった。
0
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
それなりに怖い話。
只野誠
ホラー
これは創作です。
実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。
本当に、実際に起きた話ではございません。
なので、安心して読むことができます。
オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。
不定期に章を追加していきます。
2025/12/6:『とんねるあんこう』の章を追加。2025/12/13の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/5:『ひとのえ』の章を追加。2025/12/12の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/4:『こうしゅうといれ』の章を追加。2025/12/11の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/3:『かがみのむこう』の章を追加。2025/12/10の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/2:『へびくび』の章を追加。2025/12/9の朝4時頃より公開開始予定。
2025/12/1:『はえ』の章を追加。2025/12/8の朝4時頃より公開開始予定。
2025/11/30:『かべにかおあり』の章を追加。2025/12/7の朝8時頃より公開開始予定。
※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
終焉列島:ゾンビに沈む国
ねむたん
ホラー
2025年。ネット上で「死体が動いた」という噂が広まり始めた。
最初はフェイクニュースだと思われていたが、世界各地で「死亡したはずの人間が動き出し、人を襲う」事例が報告され、SNSには異常な映像が拡散されていく。
会社帰り、三浦拓真は同僚の藤木とラーメン屋でその話題になる。冗談めかしていた二人だったが、テレビのニュースで「都内の病院で死亡した患者が看護師を襲った」と報じられ、店内の空気が一変する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる