君は死なせない

秋元智也

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28話

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まるで邪魔をするなと言わんばかりの声に上田はそれ
以上何も言えなくなった。

影は一体なんなのだろう。
敵なのか?それとも味方なのか?

理由はわからないが、霧島だけは傷つけない気がした。
もし、邪魔をするのであればきっと上田には危害を加
えてくるだろう。
そう感じた。

「なんでもない。やっぱりいいや……またな」

今はまだ言えない。
いつか自分で気づいてくれるのをひたすら待つしかない。
影の目的は一体なんなのだろう。
この状況では追い詰められるのは霧島なのに、それでも
事故に見せかけて殺すとは信じがたかった。

影が見えているのは上田だけなのでそれを立証するのは
難しい事だった。
指紋もない。
姿も映らない。
見ることさえも出来ない存在では、どうしようもない。

もし見えてしまったとしても、霧島にはアリバイがある
のだ。
疑いようがない犯罪であった。
もし上田が誰かに話したとしても、誰も信じないだろう。

そう言う類のものだからだ。
霊的現象で人を殺すなどあり得るはずがないのだ。

真っ黒に染まった影。
昔はもう少し普通の人間のように見えていた。

霧島にそっくりだったが、色は薄かった気がする。

上田ができる事といえば、霧島が少しでも楽しい学校生活
を送れるように、クラスで浮かないように取り持つだけだ
った。

秘書が居なくなって、会社の方はいよいよ舵取りが難しく
なった。
が、それから霧島は学校へは来なくなってしまった。

家族を全部失い、導いていた秘書も失った。
今は会社の経営に携わる以外、学校での平穏な時間は取れ
なくなってしまっていたのだった。


「僕がやらなきゃ……一体どうしたらいい?……そうだ、
 こう言う時はっと……」

下請けの会社に挨拶とばかりに、どんな事をしているの
かも学ぶつもりで行ってきた。
ちゃんと仕事をするところで、会社自身が家族のような
仲のいい職場だった。
他にもいくつか見に行くと、目先の目標ができた。

まずは一歩づつ進んでいこう。
本当なら、文化祭の準備で忙しくなる頃だったが、学業に
時間を割く余裕は今は…ない。

会社が正常に回るようにと、新しい秘書も雇った。

少し若いがやり手だった。
霧島のわからなかった経営も理解が早く、立て直しも順調
に行ってくれる。

「凄いですね……」

「いえ、私はただ、サポートをしただけです」

「それでも、凄いと思います。僕ではここまでは…」

「まだ学生ですよね?学業と並行で企業は厳しいでしょ?」

「はい……父がいきなり亡くなったので……本当にいきなり
 だったので」

「そうですか~大人しそうに見えて、自分で殺して会社を
 乗っ取るなんてザラにありますからね~」

「そう……なんですか?」

「はい、よく聞きますから」

にこやかに笑っていたが、本心が見えなかった。
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