恋は愛より重い?

秋元智也

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鈍感な彼

第五話

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入学式が金曜日だったせいもあって、今日は休み
だ。

部屋には届けられた荷物を入れただけで、まだ足
りないものもあった。

「今日はこの後買い出し行きたいんだけど、陸は
 どうする?」
「あぁ、俺もいく」
「なら、一緒に行こうぜ」
「飯食ったらいくか?」
「うん」

まずはご飯。
土日でも食堂ではご飯がしっかり作られている。
ただし、朝のみだった。
夜はどこかで食べるしかない。

部屋には火災報知器が付いているので、自炊も
できない。
勿論タバコなどは論外だった。


なんでも美味い美味いと言って食べる壱夜に、
食堂で働くおばちゃんたちは、いつもオマケを
してくれていた。

今日は頼んでもいないおかずを一品追加してく
れたのだった。
勿論、一緒にいる陸にも同様にオマケをくれる。

「はい、今日はこれ。しっかり食べなっ!」
「ありがとう!いつも美味しいご飯楽しみにし 
 てるんだぁ~」
「それは嬉しいねぇ~、頑張らなきゃだね!」

そんな言葉をすんなり言える壱夜が少し羨まし
かった。

陸はぺこりと頭を下げる程度だった。

食事を終えると、外出届を書いて出ていく。

一応行く場所を書いて、帰りの時間も書く。

「そういえば、今面白い映画やってるんだよ
 なぁ~」
「なら。ついでだし行くか?」
「いいの?やった~、すぐに行こうぜ」

陸はいつも壱夜を甘やかしていたが、本人に
その自覚はない。

一緒に映画見て、ショッピングして。
そして夕飯を食べると寮に戻ってきた。

「あぁ~楽しかったぁ~。受験受験で、遊べ
 なかったもんなぁ~」
「それは壱夜がしっかり前々からやっておか
 ないからだろ?」
「仕方ないだろ?勉強苦手なだからさぁ~、
 それよりも、俺も腹筋鍛えてバキバキの体
 になるっ!」
「その前に勉強もな?落第したら目も当てら
 れないぞ?」
「うっ……」

現実を突きつけられると、しゅんとなって机
に向かった。

少しでも油断すると、壱夜は赤点になる可能
性がある。
そもそも、受験でもギリギリ合格ラインだっ
たのだ。

毎日、勉強を見てはそのあと一緒に腹筋を鍛
える事になった。

「なぁ~、なんで脱いでやるの?」
「黙って足あげるっ!ほらっ、下がって来て
 るよ?」
「うぅっ……この体勢……きつ……い」
「ほら、また下がって来てる」

スパルタだった。
陸は勉強も運動も出来るせいか、できない壱
夜の気持ちなど分かるわけはなかった。

今は一緒に並んで上半身を脱ぐと状態を上げ
たまま捻り、そのままで足を上げるという姿
勢を維持している。

腹筋がピクピクと限界である事を訴えてくる。

「もう……無理っ」

いきなりバタっと大の字になると汗がじわっと
出て来た。

「少し休憩しようか、なら机に向かって、これ
 解いておいて」
「えぇーー」

体を鍛えながら、休憩は頭を使う。

その繰り返しだった。
部屋は暖房が付いているので寒くはない。
半裸でも丁度いいくらいで、今は少し暑いとさ
え思えるくらいだった。

いきなりタオルで体を拭かれるとヒヤッとして
驚く。

「しっかり拭いておいた方がいいだろ?」
「あぁ、ありがとう、陸。自分で…」
「背中は拭けないだろ?いいよ。拭いてあげる
 から」

そう言って体を拭かれると、少し恥ずかしくな
ってくる。

腕や脇腹をなぞられると、ビクッと震えて変な
声が一瞬漏れた気がした。

「や…やっぱり自分で…」
「ほら、拭けたから。勉強の続きやって」
「うん……」

まるで母親の様な陸にたまに複雑な気分になる
のだった。
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