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鈍感な彼
第十話
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今回はプールには入れなかったが、先生チェック
には勿論合格した。
次からは確認せずに着てもいいらしい。
ただ、今回不合格になった生徒達は次までにちゃ
んとした水着を用意できなかったら、成績に関わ
ると脅される事となった。
「選ばなくて正解だったろ?」
「確かに……やっぱり恥ずかしいもんな~」
「あんな不埒な水着羨まし……高校生には似つか
わしくないよ」
陸はそう言うと壱夜の肩へと手をのせたのだった。
「重いって…」
「別にいいだろ?丁度いい高さなんだ」
陸の言葉に一瞬眉をしかめた。
それは身長が低い事を揶揄していたからだった。
「俺だって、もっと身長伸びるんだよ」
「そうだな、伸びるといいな?」
確かに運動とか苦手だけど、決してこのチビな
ままであるはずはないのだ。
まだまだ成長期!
そう思うとグッと拳を握りしめると上へと突き
上げたのだった。
「よし、まだ伸びしろはある!」
「ちょうどいいサイズだからそのままでも…」
「よくない!」
陸はたまに失礼な時がある。
壱夜にとって、身長は結構気にしている事だっ
たからだ。
「陸は腕の中に収まる様な可愛い子と付き合え
よ!俺も絶対彼女作るからさ。そしたらダブ
ルデートできるじゃん!」
なんの気なしにでた言葉だったが、陸の視線が
ヒヤッと冷たくなった。
こんな顔できたんだ……。
いつも、ニコニコしていて怒る事のない陸だと
思っていたから、すごく意外だった。
「ちょっと言っただけだろ?」
「俺は嫌だから。好きな子以外、興味ないから」
「お……おう……ってか、好きな子いるのか?」
「知らない」
一瞬、呆けてしまった。
陸に好きな子がいた事にも驚いたが、それ以上
に陸の怒った様な態度の方が余計に不思議だっ
たからだ。
「あいつも怒る事あるんだな…」
ちょっと気まずい雰囲気だったが。すぐに機嫌
は治るものと思っていた。
だが、そうではなかった。
部屋に帰っても振り向きもしないし、食堂では
勝手に食べて、出て行ってしまう。
風呂場も、一緒に行っていたのに、勝手に一人
で済ませて来てしまうのだ。
これでは、喧嘩しているようなものだった。
そういえば、陸とは喧嘩なんてした事なかった
のを思い出す。
「なんか新鮮かも…」
ちょっぴり嬉しく感じてしまった。
それも束の間、学校が終わると女子とでて行って
しまった。
帰った?
いや、寮だからそれはない。
だったら……。
彼女!?
そう思うといてもたってもいられず、走り出そう
として、足をとめた。
「天海くん、ちょっといいかな?」
「俺?」
ちょっと意外な人から声をかけられたのだった。
クラスの女子で、あまり話した事のない子だった。
「話があるんだけど、いいかな?」
「あ……今はちょっと……」
「お願い。聞いて欲しい事があるの…」
何か切羽詰まった表情だったせいか、少し考えた
あと、陸を追うのを諦めたのだった。
「わかった。何?」
「ちょっと来てくれる?」
「あぁ、いいけど…」
人気のない場所まで来ると、いきなり手紙を渡さ
れた。
封のしてある手紙には、宛名に瀬尾君へと書かれ
ていた。
ショートカットの可愛い子だった。
身長も低く、壱夜よりも低い。
陸の好みかもな……。
そう思うと、差し出された手紙を受け取る気には
なれない。
別に先に彼女ができるのが嫌なんじゃない。
何か人伝いに渡すという事が嫌なのだ。
「自分で渡したらどうかな?」
「無理だよ。私なんかの手紙…受け取ってくれる
わけないもの…」
「そんな事ねーよ。あいつ結構マメだし…」
「知ってる?いつも瀬尾君のロッカーって手紙が
いっぱい入ってるんだよ?朝ね、その近くのゴ
ミ箱には封の開いてない手紙が捨てられてるん
だよ?読まれる事もないんだよ?」
「そんな……」
初めて知った。
陸は誰にでも親切で面倒見がいい奴だったはずだ。
そんな、せっかく書いてくれた手紙を読まずに捨
てるなんて……。
「何かの間違いじゃないかな?陸はそんな事…」
「だったら、君が直接渡してよ」
「それは……」
凄く気まずかった。
壱夜とて、女子に呼び出されれば期待してしまう。
だが、完全に勘違いだった。
やっぱり、お目当ては横にいつもいる陸の方なの
だと思うと、気が滅入る。
「でもさ…これは…」
「こんなところで何をしてるの?」
「瀬尾君!」
一瞬にして彼女の顔が明るくなった。
そして近寄ろうとするとひょいっと避けられ壱夜
の前まで来ていた。
「何してるの?」
「それはこっちのセリフだろ?それで呼び出され
てた子と付き合うのか?」
「それって、壱夜に関係ある?」
「それは……」
「それと、君さぁ~、余計な事しないでくれる?」
今まで教室では見せた事のない様な顔で睨みつけ
ると、彼女は走る去る様に逃げて行った。
「陸っ、何やってんだよ」
「それはこっちのセリフなんだけど…いい加減鈍感
なのもイラつくんだけど?」
「はぁ?鈍感って誰が?」
食ってかかろうとすると、いきなり腕を掴むと引き
寄せてきた。
そして、唇にあたる温かい感触。
壱夜は目を見開くと、頭の中が混乱して振り解く事
もできないくらいにパニックを起こしていた。
なんで?
これは……キスしてる?
でも、陸と……俺が?
どうして?
一番理解できない事だった。
陸の好みはショートで、元気のいい子で、それで……
俺は揶揄われてるのか?
一瞬頭を掠めた考えに纏ったのだった。
「おいっ、いい加減にしろよ!お前何をっ……んっ」
陸の胸を押すと引き剥がす。
壱夜だって怒る事もあるんだぞっと思い口を開くと、
再び塞がれてしまった。
……苦しい。
でも……舌がいきなり入ってくると、舌を絡め取られ
吸い上げられた。
頭が一瞬呆けてしまう。
「キスって、相手が男でも気持ちよかった?」
耳に入る陸の言葉に、カァッとなって殴りつけていた。
には勿論合格した。
次からは確認せずに着てもいいらしい。
ただ、今回不合格になった生徒達は次までにちゃ
んとした水着を用意できなかったら、成績に関わ
ると脅される事となった。
「選ばなくて正解だったろ?」
「確かに……やっぱり恥ずかしいもんな~」
「あんな不埒な水着羨まし……高校生には似つか
わしくないよ」
陸はそう言うと壱夜の肩へと手をのせたのだった。
「重いって…」
「別にいいだろ?丁度いい高さなんだ」
陸の言葉に一瞬眉をしかめた。
それは身長が低い事を揶揄していたからだった。
「俺だって、もっと身長伸びるんだよ」
「そうだな、伸びるといいな?」
確かに運動とか苦手だけど、決してこのチビな
ままであるはずはないのだ。
まだまだ成長期!
そう思うとグッと拳を握りしめると上へと突き
上げたのだった。
「よし、まだ伸びしろはある!」
「ちょうどいいサイズだからそのままでも…」
「よくない!」
陸はたまに失礼な時がある。
壱夜にとって、身長は結構気にしている事だっ
たからだ。
「陸は腕の中に収まる様な可愛い子と付き合え
よ!俺も絶対彼女作るからさ。そしたらダブ
ルデートできるじゃん!」
なんの気なしにでた言葉だったが、陸の視線が
ヒヤッと冷たくなった。
こんな顔できたんだ……。
いつも、ニコニコしていて怒る事のない陸だと
思っていたから、すごく意外だった。
「ちょっと言っただけだろ?」
「俺は嫌だから。好きな子以外、興味ないから」
「お……おう……ってか、好きな子いるのか?」
「知らない」
一瞬、呆けてしまった。
陸に好きな子がいた事にも驚いたが、それ以上
に陸の怒った様な態度の方が余計に不思議だっ
たからだ。
「あいつも怒る事あるんだな…」
ちょっと気まずい雰囲気だったが。すぐに機嫌
は治るものと思っていた。
だが、そうではなかった。
部屋に帰っても振り向きもしないし、食堂では
勝手に食べて、出て行ってしまう。
風呂場も、一緒に行っていたのに、勝手に一人
で済ませて来てしまうのだ。
これでは、喧嘩しているようなものだった。
そういえば、陸とは喧嘩なんてした事なかった
のを思い出す。
「なんか新鮮かも…」
ちょっぴり嬉しく感じてしまった。
それも束の間、学校が終わると女子とでて行って
しまった。
帰った?
いや、寮だからそれはない。
だったら……。
彼女!?
そう思うといてもたってもいられず、走り出そう
として、足をとめた。
「天海くん、ちょっといいかな?」
「俺?」
ちょっと意外な人から声をかけられたのだった。
クラスの女子で、あまり話した事のない子だった。
「話があるんだけど、いいかな?」
「あ……今はちょっと……」
「お願い。聞いて欲しい事があるの…」
何か切羽詰まった表情だったせいか、少し考えた
あと、陸を追うのを諦めたのだった。
「わかった。何?」
「ちょっと来てくれる?」
「あぁ、いいけど…」
人気のない場所まで来ると、いきなり手紙を渡さ
れた。
封のしてある手紙には、宛名に瀬尾君へと書かれ
ていた。
ショートカットの可愛い子だった。
身長も低く、壱夜よりも低い。
陸の好みかもな……。
そう思うと、差し出された手紙を受け取る気には
なれない。
別に先に彼女ができるのが嫌なんじゃない。
何か人伝いに渡すという事が嫌なのだ。
「自分で渡したらどうかな?」
「無理だよ。私なんかの手紙…受け取ってくれる
わけないもの…」
「そんな事ねーよ。あいつ結構マメだし…」
「知ってる?いつも瀬尾君のロッカーって手紙が
いっぱい入ってるんだよ?朝ね、その近くのゴ
ミ箱には封の開いてない手紙が捨てられてるん
だよ?読まれる事もないんだよ?」
「そんな……」
初めて知った。
陸は誰にでも親切で面倒見がいい奴だったはずだ。
そんな、せっかく書いてくれた手紙を読まずに捨
てるなんて……。
「何かの間違いじゃないかな?陸はそんな事…」
「だったら、君が直接渡してよ」
「それは……」
凄く気まずかった。
壱夜とて、女子に呼び出されれば期待してしまう。
だが、完全に勘違いだった。
やっぱり、お目当ては横にいつもいる陸の方なの
だと思うと、気が滅入る。
「でもさ…これは…」
「こんなところで何をしてるの?」
「瀬尾君!」
一瞬にして彼女の顔が明るくなった。
そして近寄ろうとするとひょいっと避けられ壱夜
の前まで来ていた。
「何してるの?」
「それはこっちのセリフだろ?それで呼び出され
てた子と付き合うのか?」
「それって、壱夜に関係ある?」
「それは……」
「それと、君さぁ~、余計な事しないでくれる?」
今まで教室では見せた事のない様な顔で睨みつけ
ると、彼女は走る去る様に逃げて行った。
「陸っ、何やってんだよ」
「それはこっちのセリフなんだけど…いい加減鈍感
なのもイラつくんだけど?」
「はぁ?鈍感って誰が?」
食ってかかろうとすると、いきなり腕を掴むと引き
寄せてきた。
そして、唇にあたる温かい感触。
壱夜は目を見開くと、頭の中が混乱して振り解く事
もできないくらいにパニックを起こしていた。
なんで?
これは……キスしてる?
でも、陸と……俺が?
どうして?
一番理解できない事だった。
陸の好みはショートで、元気のいい子で、それで……
俺は揶揄われてるのか?
一瞬頭を掠めた考えに纏ったのだった。
「おいっ、いい加減にしろよ!お前何をっ……んっ」
陸の胸を押すと引き剥がす。
壱夜だって怒る事もあるんだぞっと思い口を開くと、
再び塞がれてしまった。
……苦しい。
でも……舌がいきなり入ってくると、舌を絡め取られ
吸い上げられた。
頭が一瞬呆けてしまう。
「キスって、相手が男でも気持ちよかった?」
耳に入る陸の言葉に、カァッとなって殴りつけていた。
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