君と共に在りたい

秋元智也

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憔悴

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通じたのか、近くまできたがすぐに立ち止まり警戒しだした。
「そこにいるんでしょ?笹山、これはどういうことかな?」
「気づいてらしたんですか?ただのお遊びですよ」
「遊びに拓実を連れ出すのやめてくれる?」
「僕の彼女が君に夢中なんだよ。だから君の大事なものも壊しておこうと思ったんだけど、五人では役不足だったかな?」
「そう、散々汚してくれたみたいだね」
寛貴は目を細めると段々と心のなかが冷えていくのがわかる。一発牽制のため打つと距離を詰めた。
笹山の手には筒が握られていた。筒を器用に攻撃に使いながら口元に持っていくといきなり吹き矢を放った。俺がやられたのはこれだっと思った拓実は下に転がっている缶を蹴りあげて笹山にぶつける。
そこを見逃さず寛貴は頭に一発撃ち込んだ。
その音に先程の拓実をもて玩んだ男が一人起きてきた。
「そこまでだ!!」
男は拓実を盾にしてナイフを首に押し付ける。
「動いたらこいつがどうなってもいいのか?死神にしては取り乱してるじゃねーか?この騒ぎで仲間が起きてきくるぜ。もう、お前は詰んでんだよ」
拓実は布を吐き出すと男の腕を噛みついた。驚いた隙にポンッと猫の姿に戻ると影に隠れた。
男にとっては目を離した隙に消えたかのように見えたことだろう。
その隙を見逃す寛貴ではなかった。気付いた時にはもう心臓を撃ち抜かれてその場に倒れた。
奥の部屋へと入ると寝ている男達は息を引き取っていた。
まるで生気を吸われ尽くされたかのようだった。四人共にそんな感じだった。
「拓実遅くなってごめんね。拓実?」
隠れてから全く出てこない拓実に近づくと一匹の猫がぐったりとしていた。
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