異世界で最強無双〜するのは俺じゃなかった〜

秋元智也

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2話 実は金持ち?

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じっくりと見ると短い手足がぴょこぴょこと視界の端に映った。

見慣れぬ景色の部屋に閉じ込められているのか?
ぐるりと見回すと木の格子がはまっている。

(異世界行って早々に捕まっているのか?嘘だろ?)

慌てて大声をあげると再び赤子の泣き声がうるさく耳をついた。

おぎゃぁぁーーおぎゃぁっーーおぎゃぁぁぁーーー

(ん?これは俺の声なのか?)

口をつむぐと、ピタリと声が止んだ。

この短い手足は自分のだと分かると余計に惨めになった。
立つこともできず、ただ泣き叫ぶ事しか出来ない赤子になっているの
だ。

巨人の如き大きな女性が現れると、ひょいっと抱き上げられた。
柔らかいおっぱいに顔を押し当てられると、目の前には飲めと言わん
ばかりに口元へと当てられる。

こんな羞恥プレイを大学生にもなって受けるハメになるとは…
一生の不覚…。

かっちゃんに言ったら絶対にバカにされるやつだ。
と思いながらも身体が自然とパクッと食いついた。

ちゅぅ~~~~~。

みるくは甘くて夢中になって吸ってしまった。

ゲプっ…

(こんなはずでは…)

心とは裏腹にお腹いっぱいになると自然と眠気がやって来る。
まだ、この世界の情報が欲しいところだったが、赤子には何もでき
なかった。

それから恥を忍んで5歳になるまでは我慢したが、やっと5歳の誕生
日を迎えると家の中を探索し始めたのだった。

試しに隣の部屋から。
中はガラリとしていて何もなかった。
物置きとでも言える使っていない家具が置かれているだけだった。

そしてその隣と順番に入っていくと、これまた他とは別格の大きな
扉が目に着いた。

キョロキョロと周りを見回してから、こっそりと中へと入った。

そこには大量の書庫が所狭しと並んでいた。
全部が埃を被っていて、今は誰も使っていない様だった。

この日から、この書庫室は遼馬の遊び場となった。

「ケイル様~どこにいるのですか?出てきてくださ~い」

廊下の奥からメイドの声がする。

遼馬の今の身体の名前はケイルというらしい。
ここの大きな屋敷の息子らしいのだが、親の姿が一向に現れないので、
天涯孤独のメイド育ちなのだろうか?

(そう言えば昔、赤子の時も乳母が乳を与えてくれたっけ。)

この世界には火、水、木、土、風の5つの元素の他に光と闇があるらしい。


そこで、7歳になると教会で魔法の適性を測る事になっている。
それまでは子供は魔法はおろか、生活魔法すら使えないらしい。

メイドたちがいつもやっている様にランプに手を当てると『ライト』と唱
える。
するとぽわっと光って3時間くらい光が灯る。

これは今の遼馬にもできる様になった。
あとは…この汚れた服を一気に綺麗にする魔法と薪に火を付ける魔法を今
は覚えようとしている。
そうしたらこの書庫が綺麗になるしね。

汚れた手をかざして水で覆うイメージを作る。そして『クリーン』

唱えた拍子にどこからともなく水と風が吹いてさっきまで汚れていた手が
綺麗になった。

「やった~!成功した!」

嬉しくて喜ぶと、そのタイミングで書庫の扉が開いた。

「ケイル様、またここにいたのですか?今日は大事な日だとお伝えしたは
 ずです、すぐに部屋に戻って着替えますよ」

メイドのリーさんはケイルの専属メイドだった。
この広い屋敷の中で唯一のメイドなのだ。
専属メイドといえば聞こえはいいが、一人でここを敷きっているのだ。
それは、あり得ないほど部屋もあるし、広い屋敷だった。

実はお金持ちのボンボンだったりして…?
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