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25 トラウマ
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その頃、優馬は母親を呼びに急いで階段を駆け下りていた。
ユウマ「かーさん、大変だ!いきなり利久斗が倒れて、息してねーんだ」
優馬母「待ちなさい、すぐいくわ。ちょっと診察の方よろしくね」
スタッフに任せると、すぐに上がってきた。部屋で倒れたままの利久斗に駆け寄る
と呼吸を確かめ、軌道を確保すると息を吹き込んだ。数回繰り返し、自力で息をす
るのを確認すると心拍を確認しながら優馬のベットに寝かせた。
優馬母「一体何をやったの?」
ユウマ「あー。いや。ちょっとビデオを見てただけかな?」
優馬母「どんなのよ。見せなさい」
ユウマ「嫌だ!かーさんに見せられるかよ」
優馬母「彼の原因がわからないと困るでしょ?それにこれは精神的な発作よ。
今日はなんとかなったけど、これが外で起きたら、どうなると思うの?
理解なさい」
優馬は項垂れると、さっきまで流していたビデオを母に渡した。
流しで内容を確認すると横で優馬が愚痴を漏らしていた。
ユウマ「かーちゃんとエロビデオ見るなんて、どんな拷問だよっ」
優馬母「大体の原因は分かったわ。レイプ物は見せない方がいいわね。過去に
そういう記憶があると蘇って過呼吸になる恐れがあるわ。」
ユウマ「レイプって、男だぜ?」
優馬母「最初にあった時覚えてない?誰に対しても怯えていたじゃない?でも、
あれって同級生、もしくは男の先生に対してだったでしょ?それが答え
なんじゃないかな?男子、男性が恐怖の対象って事は、そういう事が
現実に起きてるって事よ。イジメか体罰かあるいは…どちらにせよ、
無神経なんだから、気をつけなさい」
ユウマ「あぁ…」
自分の軽はずみな行動で危うく唯一の友達をなくすかも知れなかった。
それと共に、知ってはいけない何かに触れてしまった気がした。いつも普通に接し
ているが、たまに怯えたような目をする時があった。優馬に対してではないが、教師
や男子生徒に囲まれた時などは怯える節があった。その度に、その場から連れ出して
いた。屋上に来たときのホッとした顔に癒されていた。自分でも人の役に立っていると
実感できた。
いつも、優馬を見る目は迷惑そうな、汚いものを見る目でしかなかったのが、利久斗が
来てからだいぶ変わった。一人だった優馬に話せる相手ができたのだ。
喧嘩する敵ならどこにでもいる、しかし何度も喧嘩しているうちに、自分の周りには誰
も寄り付かなくなっていた。
リクト「ん…?」
ユウマ「おっ、目が覚めたか?どこか体調悪くねーか?」
リクト「体が怠いくらいかな…あれ?何があったんだっけ?」
ユウマ「悪かったな、ほら、なんかいつもヌいてなさそうだったからいいオカズに
なるかなって」
リクト「あー。そっか、息苦しくなって、倒れたんだっけ?迷惑かけちゃったんだ…」
またどこを見ているかわからないような辛い顔をする利久斗に優馬は苛立ちを感じた。
ユウマ「何かあったんなら言えよ!友達だろ?背負いきれねーんなら、俺も一緒に
背負ってやるからさ」
大声で言われた言葉に利久斗は一瞬戸惑っていたが、腹を抱えて笑い出していた。
ユウマ「なんだよ!おかしいかよ」
リクト「いや…そうじゃないけど。聞いたら軽蔑するかも…」
ユウマ「しねーよ。バーカ。俺に面と向かって話すやつなんか他にいねーんだからな!」
リクト「前の学校でさ…クラスメートに…」
辛くて、苦しくて、自由にならない手足を思い出しながらポツポツと話し始めた。その間
優馬はじっと大人しく側で聞いていた。話しながら、思い出すだけで吐き気や寒気が来る
のを我慢して、自分自身を抱きしめるようにゆっくりと語った。
リクト「軽蔑した?」
語り終わると、黙っている優馬に話しかけた。何も言わないのは肯定を指すと判断し、
立ち上がると帰ろうとした。
こんな事聞けば嫌われたって仕方ないと思っていた。
後ろからそっと抱きしめられて、一瞬体を固くしたが、ゆっくりと振り返った。
ユウマ「お前のせいじゃねーじゃん。なんで自分のせいだって思うんだよ」
リクト「学校にバレてでも言うべきだった?一人で解決しようとして呼び出しに答え
なければよかった?あの時はそれでおさまるなら、いいかなって思ってた。
まさかそのまま帰れなくなるなんて思っても見なかったから…後悔してたんだ
…薬を使われてからは完全に逃げられなくなっちゃったし……」
ユウマ「今も勃たないってのは?」
リクト「うん、全然反応しない。だから女性とも、誰とも付き合う事はできない!この
ままなら…一生」
ユウマ「直せないのか?」
頭を左右に振ると、分からない。と答えた。
今にも泣きそうな顔で無理やり笑みを作ろうとする利久斗に優馬は自分の方へ抱き寄せると
ゆっくりと背中をさすった。
ユウマ「泣きたい時は泣けよ!大きな声出して泣いた方が絶対いいから。俺がついてて
やる!」
リクト「いつもと違うし…」
ユウマ「頼りがいがあるだろ?」
リクト「はははっ…でも、しばらくこのままでもいいかな?」
ユウマ「あぁ!俺の胸でしっかり泣いていいぞ」
リクト「……////」
頬を雫が伝っていく。こんなに温かかっただろうかと人の温もりを感じながら目をそっと
閉じた。
ユウマ「かーさん、大変だ!いきなり利久斗が倒れて、息してねーんだ」
優馬母「待ちなさい、すぐいくわ。ちょっと診察の方よろしくね」
スタッフに任せると、すぐに上がってきた。部屋で倒れたままの利久斗に駆け寄る
と呼吸を確かめ、軌道を確保すると息を吹き込んだ。数回繰り返し、自力で息をす
るのを確認すると心拍を確認しながら優馬のベットに寝かせた。
優馬母「一体何をやったの?」
ユウマ「あー。いや。ちょっとビデオを見てただけかな?」
優馬母「どんなのよ。見せなさい」
ユウマ「嫌だ!かーさんに見せられるかよ」
優馬母「彼の原因がわからないと困るでしょ?それにこれは精神的な発作よ。
今日はなんとかなったけど、これが外で起きたら、どうなると思うの?
理解なさい」
優馬は項垂れると、さっきまで流していたビデオを母に渡した。
流しで内容を確認すると横で優馬が愚痴を漏らしていた。
ユウマ「かーちゃんとエロビデオ見るなんて、どんな拷問だよっ」
優馬母「大体の原因は分かったわ。レイプ物は見せない方がいいわね。過去に
そういう記憶があると蘇って過呼吸になる恐れがあるわ。」
ユウマ「レイプって、男だぜ?」
優馬母「最初にあった時覚えてない?誰に対しても怯えていたじゃない?でも、
あれって同級生、もしくは男の先生に対してだったでしょ?それが答え
なんじゃないかな?男子、男性が恐怖の対象って事は、そういう事が
現実に起きてるって事よ。イジメか体罰かあるいは…どちらにせよ、
無神経なんだから、気をつけなさい」
ユウマ「あぁ…」
自分の軽はずみな行動で危うく唯一の友達をなくすかも知れなかった。
それと共に、知ってはいけない何かに触れてしまった気がした。いつも普通に接し
ているが、たまに怯えたような目をする時があった。優馬に対してではないが、教師
や男子生徒に囲まれた時などは怯える節があった。その度に、その場から連れ出して
いた。屋上に来たときのホッとした顔に癒されていた。自分でも人の役に立っていると
実感できた。
いつも、優馬を見る目は迷惑そうな、汚いものを見る目でしかなかったのが、利久斗が
来てからだいぶ変わった。一人だった優馬に話せる相手ができたのだ。
喧嘩する敵ならどこにでもいる、しかし何度も喧嘩しているうちに、自分の周りには誰
も寄り付かなくなっていた。
リクト「ん…?」
ユウマ「おっ、目が覚めたか?どこか体調悪くねーか?」
リクト「体が怠いくらいかな…あれ?何があったんだっけ?」
ユウマ「悪かったな、ほら、なんかいつもヌいてなさそうだったからいいオカズに
なるかなって」
リクト「あー。そっか、息苦しくなって、倒れたんだっけ?迷惑かけちゃったんだ…」
またどこを見ているかわからないような辛い顔をする利久斗に優馬は苛立ちを感じた。
ユウマ「何かあったんなら言えよ!友達だろ?背負いきれねーんなら、俺も一緒に
背負ってやるからさ」
大声で言われた言葉に利久斗は一瞬戸惑っていたが、腹を抱えて笑い出していた。
ユウマ「なんだよ!おかしいかよ」
リクト「いや…そうじゃないけど。聞いたら軽蔑するかも…」
ユウマ「しねーよ。バーカ。俺に面と向かって話すやつなんか他にいねーんだからな!」
リクト「前の学校でさ…クラスメートに…」
辛くて、苦しくて、自由にならない手足を思い出しながらポツポツと話し始めた。その間
優馬はじっと大人しく側で聞いていた。話しながら、思い出すだけで吐き気や寒気が来る
のを我慢して、自分自身を抱きしめるようにゆっくりと語った。
リクト「軽蔑した?」
語り終わると、黙っている優馬に話しかけた。何も言わないのは肯定を指すと判断し、
立ち上がると帰ろうとした。
こんな事聞けば嫌われたって仕方ないと思っていた。
後ろからそっと抱きしめられて、一瞬体を固くしたが、ゆっくりと振り返った。
ユウマ「お前のせいじゃねーじゃん。なんで自分のせいだって思うんだよ」
リクト「学校にバレてでも言うべきだった?一人で解決しようとして呼び出しに答え
なければよかった?あの時はそれでおさまるなら、いいかなって思ってた。
まさかそのまま帰れなくなるなんて思っても見なかったから…後悔してたんだ
…薬を使われてからは完全に逃げられなくなっちゃったし……」
ユウマ「今も勃たないってのは?」
リクト「うん、全然反応しない。だから女性とも、誰とも付き合う事はできない!この
ままなら…一生」
ユウマ「直せないのか?」
頭を左右に振ると、分からない。と答えた。
今にも泣きそうな顔で無理やり笑みを作ろうとする利久斗に優馬は自分の方へ抱き寄せると
ゆっくりと背中をさすった。
ユウマ「泣きたい時は泣けよ!大きな声出して泣いた方が絶対いいから。俺がついてて
やる!」
リクト「いつもと違うし…」
ユウマ「頼りがいがあるだろ?」
リクト「はははっ…でも、しばらくこのままでもいいかな?」
ユウマ「あぁ!俺の胸でしっかり泣いていいぞ」
リクト「……////」
頬を雫が伝っていく。こんなに温かかっただろうかと人の温もりを感じながら目をそっと
閉じた。
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