好きになっていいですか?

秋元智也

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45 これからの事

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撮影した日から、数日経つと三宅仁美から連絡が入った。

 ヒトミ「久しぶり~。ちょっと外で会えないかな?今って忙しい?」
 リクト「あぁ、何時?」
 ヒトミ「今からだから、いつもの喫茶店に1時間後かな?」
 リクト「おっけ。多分間に合うかな。先に席取って置いて」
 ヒトミ「分かったわ。またね」

講義が終わって、待ち合わせの喫茶店に向かった。
今日は珍しく三宅仁美が一人で待っていた。

 リクト「待たせたかな?今日は一人?」
 ヒトミ「うん、その方が話やすいでしょ?」
 リクト「まーね。話ってなに?」
 ヒトミ「これこれ、こないだの写真ね。それとね…あの後大丈夫
     だった?なんかさっ、ちょっと興奮してたでしょ?彼」
 リクト「あぁ、それなら大丈夫…な訳ねーだろ」
 ヒトミ「あ、やっぱり?」

クスクスと笑うと、写真のデータを見せてきた。

 ヒトミ「他にも撮ってみたいところがあるんだけど、いいかな?」
 リクト「しばらくは卒論もあるし、二ヶ月待ってほしいかな。」
 ヒトミ「うん、分かったわ。今度は可愛い服も用意しとくからさ、
     よろしくね」

はぁ~っと溜息をつくと了承した。
確かに撮影でいろんな衣装を着るのは嫌いではなかった。
優馬も利久斗の姿にいつも以上に興奮してた様だったし…と思い直し
たが、そのせいで外でしかも多目的トイレで行為におよんだ挙句、電車
に乗ったところまでは覚えていたが、降りた記憶がなかったのだ。
いつも使ってる電車で抱っこされたと思うと、恥ずかしくていたたまれな
かった。
三宅仁美の個展はまだ先なので、それまでに数多くのシーンを撮りたいら
しい。

(なんで僕にしたんだろう?他にも被写体いそうなのに…)

思い返すと三宅仁美に対して周りの反応はあまり良いものではなかったの
を思い出した。

卒論もあらかた書きあがり、優馬と一緒に撮影の為に三宅仁美と角谷恭子
との待ち合わせの場所に向かった。
今日は少し離れた郊外の森へと来ていた。車内でメイクを終えると、着替
えたのだが、その服の前は胸の辺りまでががっつり開いていて、後ろもそれ
以上に布がなく、大きく開いていた。
腰のところまでしかないスカートは、履くのになかなかに勇気のいる形状
だった。胸にはパットを挟むとサラシで固定した。
ウィッグとメイクでどこからどうみても、女子にしか見えない。
そんな利久斗を優馬はずっとウキウキしながら眺めていた。

 ユウマ「やっぱり、メイクってすげーな。それに…これも」

そういうとパットでできた胸を揉んだ。

 利久斗「っ…ズレるじゃん!」

それから下半身を触ろうとするのを、避けて躱した。
三宅さんにはもう見られてるけど、あえて、何度も見られる気にはなれ
なかった。
川で足をつけて水遊びする様子や、大きな岩に寄り添うなど、平和そうな
シーンを撮ると、やはりというか、際どい写真にも挑戦するらしかった。

 ヒトミ「じゃー。優馬くん、田嶋くんをロープで縛ってくれる?」
 ユウマ「りょーかい。なんか赤いロープっていやらしくて、いいよね」
 リクト「変な想像しないでよっ」
 ユウマ「分かってるって」

腕を前で軽く縛るとブーツを脱いで裸足にロープを回し、軽く止める。
自然の緑に横たわる体に巻かれた赤い紐が映えていて、髪で顔は隠れていて
角度によっては下着が見えそうで見えない位置で撮影する。
胸の膨らみは作られたものだが、そうは見えない程に自然に見える。
優馬といえば、微かに腕が写り込むくらいで、直接的に出てくる事はなかった。

キョウコ「おい!ちょっと我慢してろよ」
 リクト「へ…?」

いきなり言われた事に疑問を持つよりも早くビニールを被せられるとバケツの
水をひっくり返した様な水が上からあびせられた。

 リクト「なっ…なに!」
キョウコ「メイクを崩したくないからな」

それだけ言われるとびしょ濡れになった衣服は体にべったりとくっついて体の
ラインをもろに露出させた。
細い体は贅肉もなく、筋肉も無いせいか女性のラインとそこまで変わらない。
骨格さえ服で隠してしまえば見間違うに違いない。
仁美が撮りたい様に撮らせる、それが角谷恭子のやり方らしい。

 リクト「先に言ってからにして欲しかったけど?」
キョウコ「気を使ってやってるんだ、我慢しろ」

いつも、利久斗にだけあたりが強かった。

(完全に嫌われてる…よな?)

着替えて、逆光でのシルエットだけの写真も何枚か撮っていた。
思い通りの写真が撮れて満足そうにしている三宅仁美に、傍らでそれをよしと
している角谷恭子がいた。 

 ユウマ「お疲れ様~。今日は特に食べちゃいたいくらい可愛いかったぞ」
 リクト「ありがとう」

優馬は上着をかけると、飲み物を手渡した。
そんな二人を密かに仁美は見つめるとシャッターを切った。
ありのままの素顔ほど、人を惹きつけるものはないと思っている。
ただ彼だとわかる様な写真は出すなと言われていたので、自分だけの作品として
飾る事にした。
仁美はみんなと別れた後、スポンサーの元を訪れていた。
杉本悠星。若いがやり手の編集長だった。
今回の企画を話した時も意外性に意欲を示してくれて、はじめは男性の被写体で
というと、いい顔はしなかった。
なので女装とは言わず、素人の子を使うとだけ言った。
しかし、写真の一部を見せた事で面白いと言い出したのだ。
個展もそうだが、その一部を宣伝ポスターに使うとまで言ってきたのだ。
専属のカメラマンとして雇ってもくれるという。
仁美にとってはありがたい申し出だった。
これからは利久斗だけじゃなく、芸能人を主に撮っていく事になるのだ。

ユウセイ「どうだい?上手くいきそうかい?」
 ヒトミ「えぇ、もちろんです。編集前ですが、大まかな構図はできています。」
ユウセイ「見せてもらっても?」
 ヒトミ「いいですよ、自信作です。」
ユウセイ「それは、楽しみだ。被写体の彼女は一緒じゃないのかい?」
 ヒトミ「彼女は…ここには連れてきませんよ」
ユウセイ「残念だよ。」

不適に笑みを浮かべる悠星に仁美はハッキリと言い張った。
あなたが欲しいのは作品でしょ?っと。
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