僕を惑わせるのは素直な君

秋元智也

文字の大きさ
54 / 75

54話 話題の人

しおりを挟む
夕方になって、やっと部外者が帰るとクラス毎に
集まって片付けに入る。

慌ただしく、劇が終わってからは郁也に連れ回さ
れたせいでクラスに顔を出したのが、ホームルー
ムの時くらいだった。

「水城~、お前の兄ちゃん話題になってるぞ?」

「だろうね……」

うんざりした顔で言うと、綾野は声のトーンを
下げた。

「まさか何かされたのか?」

「いや、大丈夫。なにもされてないけど…ちょ
 っとね」

郁也の歩夢への気持ちのあり方を知って、自分
とは違うのだと知った。

抱きしめるとは、言葉のままで理解していた。
が、郁也のは違った。

口に出せないような行為を想像してしまうと、
恥ずかしくて他人に相談出来るものではなかっ
た。

「卒業までは手を出さないから。それまでに
 返事をしてって言われてもな~……」

「そんなのNOだろ?」

「うん……そうだね…」

どうしても自分の中で、ノーとはっきり言え
なかった。
歩夢自身、本当はどう思っているのだろう。

郁也とのキスは嫌ではなかった。
むしろ………。

こんな事、言えるはずもない。
だから、誰にも相談できない案件なのだ。

言葉を濁すと、舞台セットを解体して衣装は
演劇部へと回す事が決まっていた。

「ねぇ、水城くん、さっき一緒にいた男性って
 知りあいなの?ちょっと紹介してくれない?」

「ちょっと抜け駆けしないでよ?私が狙ってた
 のよ?」

「あんな人達どうでもいいわ。私に紹介してよ?
 同じクラスじゃない?」

全く話もしない女子からのアピールにうんざり
する。

「知らない…僕も連れ回されていい迷惑だから」

「えぇ~知り合いでしょ?仲良さそうだったし?」

「そうよ、そうよ!紹介くらいいいじゃない」

多分何を言っても聞かないだろう。
女子とはそんな自分勝手な生き物なのだ。

心の中はドス黒く、野心や嫉妬が渦巻いている。
こんなだから関わりたくなかったのだった。

綾野のように、単純で裏表なく人当たりがいい
人は実は稀なのだろうと、思う。

振り向かず、その場を去ろうとしたが、追い縋
る彼女達を睨みつけたのだった。

口に出していない声をも丸聞こえなせいか、い
い気はしなかった。

「よっ!大変だったな?」

「うん、ほんとだよ…。家族なんて絶対に言え
 ない…」

「あぁ~、だろうな。歩夢と親しくなれば兄ち
 ゃんとの接点を作るのも楽だと考える女子が
 いてもおかしくないな~」

「ほんと、そんなのばっかだよ」

「せっかくのモテ期だと思ったのに、残念だっ
 たな?」

「別に…そんな事望んでないし…」

歩夢は強がっていっているわけではない。
本気で興味がないのだ。
今は大学受験の勉強に必死で人に構っている余裕
なんてない。

それに、毎日勉強後の郁也からのキス……。
今日もそれを考えると、憂鬱になる。

あんな画像見た後でのキスは、いつもと全く別の
感情が頭を駆け巡ってしまいそうだったからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

【完結】幼馴染に告白されたけれど、実は俺の方がずっと前から好きだったんです 〜初恋のあわい~

上杉
BL
ずっとお前のことが好きだったんだ。 ある日、突然告白された西脇新汰(にしわきあらた)は驚いた。何故ならその相手は幼馴染の清宮理久(きよみやりく)だったから。思わずパニックになり新汰が返答できずにいると、理久はこう続ける。 「驚いていると思う。だけど少しずつ意識してほしい」 そう言って普段から次々とアプローチを繰り返してくるようになったが、実は新汰の方が昔から理久のことが好きで、それは今も続いている初恋だった。 完全に返答のタイミングを失ってしまった新汰が、気持ちを伝え完全な両想いになる日はやって来るのか? 初めから好き同士の高校生が送る青春小説です!お楽しみ下さい。

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

裏乙女ゲー?モブですよね? いいえ主人公です。

みーやん
BL
何日の時をこのソファーと過ごしただろう。 愛してやまない我が妹に頼まれた乙女ゲーの攻略は終わりを迎えようとしていた。 「私の青春学園生活⭐︎星蒼山学園」というこのタイトルの通り、女の子の主人公が学園生活を送りながら攻略対象に擦り寄り青春という名の恋愛を繰り広げるゲームだ。ちなみに女子生徒は全校生徒約900人のうち主人公1人というハーレム設定である。 あと1ヶ月後に30歳の誕生日を迎える俺には厳しすぎるゲームではあるが可愛い妹の為、精神と睡眠を削りながらやっとの思いで最後の攻略対象を攻略し見事クリアした。 最後のエンドロールまで見た後に 「裏乙女ゲームを開始しますか?」 という文字が出てきたと思ったら目の視界がだんだんと狭まってくる感覚に襲われた。  あ。俺3日寝てなかったんだ… そんなことにふと気がついた時には視界は完全に奪われていた。 次に目が覚めると目の前には見覚えのあるゲームならではのウィンドウ。 「星蒼山学園へようこそ!攻略対象を攻略し青春を掴み取ろう!」 何度見たかわからないほど見たこの文字。そして気づく現実味のある体感。そこは3日徹夜してクリアしたゲームの世界でした。 え?意味わかんないけどとりあえず俺はもちろんモブだよね? これはモブだと勘違いしている男が実は主人公だと気付かないまま学園生活を送る話です。

処理中です...