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第15話
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翌朝にはルーン王国に向けてラセツと遥は旅立つことになった。
「そうそう、これからはスズシロと呼んでくれるかな?」
「スズシロさん?」
ラセツはにっこりと微笑むと魔法で人の姿に変化した。
白髪の老人の姿だ。
もとの若々しいエルフの姿に慣れているためどうしても違和感しかない。
それに、遥には二人の姿がダブって見えているため、苦笑いがもれた。
「わかりました。俺はこのままでもいいですか?」
ラセツは首を振ると変化の指輪を渡した。
「それをはめている間はずっと姿が変わる事ができるでな?」
「へー。マナはどこから供給されてるんですか?」
「遥、お主のマナをもらっておるのじゃよ?他の人でやると危険じゃが、お主なら大丈夫じゃろう。」
「えー。この前はマナ切れ起こしたばかりじゃ・・・」
「あれはマナ切れじゃないぞ?一気に供給しすぎて倒れただけじゃ。じゃからすぐに目が覚めて動けていたじゃろう?ほんとにマナが切れていたら2日は目が覚めんよ。動くこともできんしのう」
そう言って鏡を見るように促した。
遥は指輪をつけると鏡を覗き込んだ。
するとそこにいたのは遥の知らない女性の姿だった。
勿論少しぼやけて見えるが、れっきとした女性だった。
胸も膨らんで見えていたのでビックリして自分の胸を触ってみた。
するとぺったんこだった胸が膨れているではないか!
「どうなってるんですか!女性に見えます。それも、見えるだけじゃなく・・・」
ラセツはニヤリと笑いながらいった。
「成功したようだのう?」
「なっ。試作だったんですか?」
「まぁ、のう。体も女性のものになっておるようじゃな?これからは小春と名乗ることになるからのう。冴島遥には死んでもらわんといかんからのう。死体のダミーはこちらで作っておくので気にすることはない。しかし、ほんとに女性の姿になったといっても姿だけじゃからのう。トイレとかは気をつけるんじゃよ?」
「あぁ、それは了解した。しかし、この前の事があったからなのか?」
「それもあるが、これからは自由に動くためには仮の姿がいるじゃろ?」
「確かに、、、でも、助かるかも。この顔も嫌気が差していたしな、、、」
そうそう、悪い訳ではないのだ。
ただ、周りに執着するような女達がいたってだけである。
人であるなかではなかなか整った顔立ちではあるがエルフのラセツからすれば、いたって普通レベルと言えた。
エルフは元々美しい顔立ちの者ばかりであるため見慣れているのだ。
「人族とは難儀なものだのう」
「そうですね。スズシロさんにとってはそう思えるでしょうね?」
「スズシロでいい。」
「でも、小春って、いつの時代ですか!」
「いいじゃろう?昔の文献で読んだのじゃ異世界から召喚されたっていう勇者の名前辞典じゃ」
「どこにそんなものが有るんですか!?」
「ほっほっほっ。秘密じゃよ!」
皆に別れを告げるとルーン王国に向けて歩きだした。
休憩はお互いにこまめにとる方だったので気兼ねかく休めた。
「カースには半日は歩き続けろって言われたけど、さすがに無理だっていっててさ~」
「そりゃそうじゃな。わたしたちにはそんな体力はありゃせんよ。休憩はこまめにとらんとのう?」
そう言うとポットに魔法で水をすすぐとお湯を一瞬で沸かすと茶葉を入れてコップに注いだ。
ラセツといると勉強になる。
「それ、次は俺がやってみても?」
「おお、そうじゃな。なんでも実践あるのみじゃ。次の休憩は頼もうかのう?」
「はい。」
3日をかけてルーン王国に一番近い砦までたどり着いた。
国王の親書の中に入っていた手形を見せると難なく入ることができた。
「あんなに簡単に入れるんですね?」
「特別な手形じゃからなぁ」
「バルリア王国の時はめんどくさかったのに・・・」
「ほっほっほっ。役得じゃよ」
やっと、野宿じゃなく宿に泊まることが出来た。
勿論各部屋を取る資金などないので1部屋だけとっておいた。
そこに魔法で部屋の空間を広げてふかふかのベットを成形する。
「魔法って便利ですね?」
ラセツの手際の良さに感心しながらそう呟いた。
「何でも出来るように見えるがそうではないんじゃ。これにも法則があってのう、出来ることにも限度があるんじゃが・・・まぁ、ゆっくりと学べばいい。」
遥を成長させるのが生き甲斐になりつつあるせいか何事も詳しく説明してくれた。
魔法の原理や法則。
自然の摂理やら、禁じられているものまで色々な知識を学ばせた。
「弟子は取ったことがなかったが、こんなに吸収がいいと師匠として鼻が高いわい」
なんだか見た目が若いはずなのに年寄りじみた考えや口調がアンバランスだったが今の出で立ちなら納得がいった。
暫くは城に使えていたが、ある日を境に森での隠居生活を始めたそうだ。
その理由が、つまらなくなったから。だというのでなんとも自由な人だと思っていたが、老人が何十年たっても元気でピンピンしているというのもおかしな話である。
一応は人族として登録していたのであり得ない話であった。
しかし、この世界では人族以外は迫害されているというのに、このルーン王国だけは違うようだった。
街の中には活気が溢れ、人と獣人とがわけあいあいと話しているのだ。
「素敵な国王様なんですね?」
「まぁ、かわりもんじゃがな?」
「?」
「会ってみれば分かるじゃろうて。」
それから丸一日かけて王都まで馬車で向かった。
「すごいや。さっきの街と違って、賑やかですね」
身を乗り出して外を眺める遥を後ろから微笑ましく見ながらラセツは『危ないでのう』と、注意した。
王都に着くと即座に王宮へと向かった。
門兵には何事か告げると、慌てて奥に向い何やらごっつい鎧を着込んだ体格のいい男性が出てきた。
「お初にお目にかかります、スズシロ殿。私はハウザー。このルーン王国の国王軍の総司令を拝命しています。お目にかかれて光栄です。そちらのお嬢さんは?」
「おお。こやつは小春といって、わたしの弟子じゃよ」
「なんと、こんなにお若いのに素晴らしい才能をお持ちなのでしょう!羨ましい限りですなぁ。ささ、こちらへどうぞ。国王陛下がお待ちです。」
屈託もなく笑うとハウザーは奥へと案内した。
「そうそう、これからはスズシロと呼んでくれるかな?」
「スズシロさん?」
ラセツはにっこりと微笑むと魔法で人の姿に変化した。
白髪の老人の姿だ。
もとの若々しいエルフの姿に慣れているためどうしても違和感しかない。
それに、遥には二人の姿がダブって見えているため、苦笑いがもれた。
「わかりました。俺はこのままでもいいですか?」
ラセツは首を振ると変化の指輪を渡した。
「それをはめている間はずっと姿が変わる事ができるでな?」
「へー。マナはどこから供給されてるんですか?」
「遥、お主のマナをもらっておるのじゃよ?他の人でやると危険じゃが、お主なら大丈夫じゃろう。」
「えー。この前はマナ切れ起こしたばかりじゃ・・・」
「あれはマナ切れじゃないぞ?一気に供給しすぎて倒れただけじゃ。じゃからすぐに目が覚めて動けていたじゃろう?ほんとにマナが切れていたら2日は目が覚めんよ。動くこともできんしのう」
そう言って鏡を見るように促した。
遥は指輪をつけると鏡を覗き込んだ。
するとそこにいたのは遥の知らない女性の姿だった。
勿論少しぼやけて見えるが、れっきとした女性だった。
胸も膨らんで見えていたのでビックリして自分の胸を触ってみた。
するとぺったんこだった胸が膨れているではないか!
「どうなってるんですか!女性に見えます。それも、見えるだけじゃなく・・・」
ラセツはニヤリと笑いながらいった。
「成功したようだのう?」
「なっ。試作だったんですか?」
「まぁ、のう。体も女性のものになっておるようじゃな?これからは小春と名乗ることになるからのう。冴島遥には死んでもらわんといかんからのう。死体のダミーはこちらで作っておくので気にすることはない。しかし、ほんとに女性の姿になったといっても姿だけじゃからのう。トイレとかは気をつけるんじゃよ?」
「あぁ、それは了解した。しかし、この前の事があったからなのか?」
「それもあるが、これからは自由に動くためには仮の姿がいるじゃろ?」
「確かに、、、でも、助かるかも。この顔も嫌気が差していたしな、、、」
そうそう、悪い訳ではないのだ。
ただ、周りに執着するような女達がいたってだけである。
人であるなかではなかなか整った顔立ちではあるがエルフのラセツからすれば、いたって普通レベルと言えた。
エルフは元々美しい顔立ちの者ばかりであるため見慣れているのだ。
「人族とは難儀なものだのう」
「そうですね。スズシロさんにとってはそう思えるでしょうね?」
「スズシロでいい。」
「でも、小春って、いつの時代ですか!」
「いいじゃろう?昔の文献で読んだのじゃ異世界から召喚されたっていう勇者の名前辞典じゃ」
「どこにそんなものが有るんですか!?」
「ほっほっほっ。秘密じゃよ!」
皆に別れを告げるとルーン王国に向けて歩きだした。
休憩はお互いにこまめにとる方だったので気兼ねかく休めた。
「カースには半日は歩き続けろって言われたけど、さすがに無理だっていっててさ~」
「そりゃそうじゃな。わたしたちにはそんな体力はありゃせんよ。休憩はこまめにとらんとのう?」
そう言うとポットに魔法で水をすすぐとお湯を一瞬で沸かすと茶葉を入れてコップに注いだ。
ラセツといると勉強になる。
「それ、次は俺がやってみても?」
「おお、そうじゃな。なんでも実践あるのみじゃ。次の休憩は頼もうかのう?」
「はい。」
3日をかけてルーン王国に一番近い砦までたどり着いた。
国王の親書の中に入っていた手形を見せると難なく入ることができた。
「あんなに簡単に入れるんですね?」
「特別な手形じゃからなぁ」
「バルリア王国の時はめんどくさかったのに・・・」
「ほっほっほっ。役得じゃよ」
やっと、野宿じゃなく宿に泊まることが出来た。
勿論各部屋を取る資金などないので1部屋だけとっておいた。
そこに魔法で部屋の空間を広げてふかふかのベットを成形する。
「魔法って便利ですね?」
ラセツの手際の良さに感心しながらそう呟いた。
「何でも出来るように見えるがそうではないんじゃ。これにも法則があってのう、出来ることにも限度があるんじゃが・・・まぁ、ゆっくりと学べばいい。」
遥を成長させるのが生き甲斐になりつつあるせいか何事も詳しく説明してくれた。
魔法の原理や法則。
自然の摂理やら、禁じられているものまで色々な知識を学ばせた。
「弟子は取ったことがなかったが、こんなに吸収がいいと師匠として鼻が高いわい」
なんだか見た目が若いはずなのに年寄りじみた考えや口調がアンバランスだったが今の出で立ちなら納得がいった。
暫くは城に使えていたが、ある日を境に森での隠居生活を始めたそうだ。
その理由が、つまらなくなったから。だというのでなんとも自由な人だと思っていたが、老人が何十年たっても元気でピンピンしているというのもおかしな話である。
一応は人族として登録していたのであり得ない話であった。
しかし、この世界では人族以外は迫害されているというのに、このルーン王国だけは違うようだった。
街の中には活気が溢れ、人と獣人とがわけあいあいと話しているのだ。
「素敵な国王様なんですね?」
「まぁ、かわりもんじゃがな?」
「?」
「会ってみれば分かるじゃろうて。」
それから丸一日かけて王都まで馬車で向かった。
「すごいや。さっきの街と違って、賑やかですね」
身を乗り出して外を眺める遥を後ろから微笑ましく見ながらラセツは『危ないでのう』と、注意した。
王都に着くと即座に王宮へと向かった。
門兵には何事か告げると、慌てて奥に向い何やらごっつい鎧を着込んだ体格のいい男性が出てきた。
「お初にお目にかかります、スズシロ殿。私はハウザー。このルーン王国の国王軍の総司令を拝命しています。お目にかかれて光栄です。そちらのお嬢さんは?」
「おお。こやつは小春といって、わたしの弟子じゃよ」
「なんと、こんなにお若いのに素晴らしい才能をお持ちなのでしょう!羨ましい限りですなぁ。ささ、こちらへどうぞ。国王陛下がお待ちです。」
屈託もなく笑うとハウザーは奥へと案内した。
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