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第16話
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ハウザーに案内され玉座の間へ通されると中央の奥に大きな台座があってそこには綺麗な女性が鎮座していた。
恰幅のいい男性やら色々と気難しいそうな男性やらが両脇に立っていた。
きっと大臣やそういったお偉いさんか、貴族の面々なのであろうことが伺えた。
ラセツの後ろについてそろそろと歩いていった。
決して玉座の間では口を聞かないことを徹底された。
礼儀作法も分かっていないため、終止ただ黙ってラセツの側についていればいいと。
貴族からも声をかけられないためにもラセツからは離れない方が安全であることもハウザーが教えてくれた。
ハウザーは遥に礼をいわれ微笑まれるとなんだかぎくしゃくとした雰囲気を醸し出した。
それを見て呆れるラセツとそんなに似合ってないのかと不安になる遥かだった。
小春といっても、姿は多少遥に似せてはあるが別人だった。
ほんとなら遥自信が女装でもした方が明らかに女性が羨む色気があったが、あえてそうはしなかった。
遥の顔を知っている人間がどこにいるか、把握できていないからだった。
きっと、ルーン王国にも他の国の密偵はいるだろう。
そうなると、顔を覚えられている可能性があるのだ。
「良く来てくれた、スズシロ。顔を上げよ。」
「はっ、陛下もおかわりなく。此度はこの老体にどのような用件でございましょうか?」
「ふふふ、謙遜をするでない。まだまだ現役でいけることは知っておるぞ?」
笑顔で探るようなルーン王国のロザリア陛下はまるでラセツと戯れているように思えた。
ちらっと二人を覗き見るとお互いに楽しんでいるようだった。
するとロザリア陛下と目があってしまい、慌てて下を向きなおした。
「時にスズシロ。そなたの連れている従者はなんだ?嫁でも貰う年ではなかろうに・・・?」
一回遥を振り向くと向き直ってからはっきりと断言した。
「これなるは、不祥愛弟子でございます。わたしと同等。いや、すぐにでもわたしを抜いていくほどの実力でございます。」
「ほぅ、なんともうすか。そのような者を育てておったとは初耳じゃ。名を何と申すのじゃ?」
「陛下、我弟子は小春と申します。これからまだまだ教えることも多いので連れだつ事をお許しください。」
「構わない。スズシロが連れているのだからな。悪い人ではあるまい。しばし、ゆっくりとしていくがいい。」
簡単な挨拶と口上が続くと一旦下がってから、側近のフリーゼという女性に案内されて客室に案内された。
「ここでお待ち下さい。もうすぐ陛下も参りますゆえ。」
そう言うと奥へと下がっていった。
すぐあとに扉をバーン。と勢い良く入ってきた少女が目の前の椅子に腰かけた。
遥は唖然としてしまい、ラセツは苦笑いを浮かべていた。
「陛下・・・」
「ん?なんじゃ。スズシロ、もうばらしてしまったのか?面白くない奴じゃ」
少女はさっき玉座に座っていた女王陛下とは似ても似つかないほど違っていた。
態度も、仕草も。見て目までも違いすぎた。
しかし、遥にはそれがさっき見た陛下であると即座にわかった。
ちらっと顔を上げたときに見たまんまだったからだ。
「陛下、わたしは何も話していませんよ。遥、いや、今は小春と名乗りますが、この者の能力なのです。」
「そうなのか?私の幻惑が効かんのか?申してみよ。あと、この部屋では元の姿でいよ。命令じゃ!」
「はぁ。」
遥は指輪を外すと鞄にしまった。
ラセツは元のエルフの姿に戻っていた。
「堅苦しいのは抜きじゃ。ラセツには勇者の召喚の儀式をしてもらいたい。若手に任せておったのだが如何様にもいかんくてなぁ。」
「それは無理がございますよ。勇者の召喚は4人が限度。今、この世界にすでに4人揃っているからのぅ」
少女の姿のロザリア陛下は身を乗り出すと机に突っ伏した。
「にゃんじゃと!それはまことか!先を越されてしまったか~どうにかならんかのう?スズシローこのままでは国の威厳が問われるのじゃ。そうじゃなくても私は先祖帰りで人族出はないというのに・・・」
「そこで、こちらにもお話がございます。この者はエスタニア王国で召喚された勇者です。しかし、ある事情から命を狙われております。ですからこちらで保護をしていただきたい。勿論、わたしもその見返りにこの国の為なら微力ながら力を貸しますぞ?」
「詳しく話せ。」
それから今まであったことを話し出した。
ラセツが順序よく時系列に並べて話すので分かりやすく伝わっていた。
「それはまことの事か?嘘いつわりないと言えるのか?」
「はい。事実です。」
全てを聞き終わったあとでロザリア陛下は考え込んでいた。
それもそうだろう、今から他の国を騙すのだから・・・。
「魔法の誓いを立てられるか?」
いきなり聞いてきた事に迷いながら真意を聞いてみた。
「魔法の誓いとは?」
横でラセツが言葉を付け加えた。
「魔法の誓いとは、お互いに嘘偽りが無いことを証明するために契約を結ぶ魔法じゃ。発動した状態で偽りを述べると心臓に杭が刺さるというシンプルな魔法じゃ。お互いが同意していないと発動できない魔法だから大事な契約などで用いられるんじゃが。」
「そういうことですか。では、なおのこと魔法の誓いをやってもらっても構いません。それで信じてもらえるのなら!」
まっすぐに見つめる目を見てロザリア陛下は確信した。
そして自分の腹も決まったのである。
「分かった。スズシロの作戦を決行する。フリーゼ、紙とペンをもって参れ。それと牢獄の囚人も二人ほど見繕って来てくれ」
「かしこまりました」
どこにいたのかカーテンがかかっていたところに影が出来ると一瞬で消えていった。
恰幅のいい男性やら色々と気難しいそうな男性やらが両脇に立っていた。
きっと大臣やそういったお偉いさんか、貴族の面々なのであろうことが伺えた。
ラセツの後ろについてそろそろと歩いていった。
決して玉座の間では口を聞かないことを徹底された。
礼儀作法も分かっていないため、終止ただ黙ってラセツの側についていればいいと。
貴族からも声をかけられないためにもラセツからは離れない方が安全であることもハウザーが教えてくれた。
ハウザーは遥に礼をいわれ微笑まれるとなんだかぎくしゃくとした雰囲気を醸し出した。
それを見て呆れるラセツとそんなに似合ってないのかと不安になる遥かだった。
小春といっても、姿は多少遥に似せてはあるが別人だった。
ほんとなら遥自信が女装でもした方が明らかに女性が羨む色気があったが、あえてそうはしなかった。
遥の顔を知っている人間がどこにいるか、把握できていないからだった。
きっと、ルーン王国にも他の国の密偵はいるだろう。
そうなると、顔を覚えられている可能性があるのだ。
「良く来てくれた、スズシロ。顔を上げよ。」
「はっ、陛下もおかわりなく。此度はこの老体にどのような用件でございましょうか?」
「ふふふ、謙遜をするでない。まだまだ現役でいけることは知っておるぞ?」
笑顔で探るようなルーン王国のロザリア陛下はまるでラセツと戯れているように思えた。
ちらっと二人を覗き見るとお互いに楽しんでいるようだった。
するとロザリア陛下と目があってしまい、慌てて下を向きなおした。
「時にスズシロ。そなたの連れている従者はなんだ?嫁でも貰う年ではなかろうに・・・?」
一回遥を振り向くと向き直ってからはっきりと断言した。
「これなるは、不祥愛弟子でございます。わたしと同等。いや、すぐにでもわたしを抜いていくほどの実力でございます。」
「ほぅ、なんともうすか。そのような者を育てておったとは初耳じゃ。名を何と申すのじゃ?」
「陛下、我弟子は小春と申します。これからまだまだ教えることも多いので連れだつ事をお許しください。」
「構わない。スズシロが連れているのだからな。悪い人ではあるまい。しばし、ゆっくりとしていくがいい。」
簡単な挨拶と口上が続くと一旦下がってから、側近のフリーゼという女性に案内されて客室に案内された。
「ここでお待ち下さい。もうすぐ陛下も参りますゆえ。」
そう言うと奥へと下がっていった。
すぐあとに扉をバーン。と勢い良く入ってきた少女が目の前の椅子に腰かけた。
遥は唖然としてしまい、ラセツは苦笑いを浮かべていた。
「陛下・・・」
「ん?なんじゃ。スズシロ、もうばらしてしまったのか?面白くない奴じゃ」
少女はさっき玉座に座っていた女王陛下とは似ても似つかないほど違っていた。
態度も、仕草も。見て目までも違いすぎた。
しかし、遥にはそれがさっき見た陛下であると即座にわかった。
ちらっと顔を上げたときに見たまんまだったからだ。
「陛下、わたしは何も話していませんよ。遥、いや、今は小春と名乗りますが、この者の能力なのです。」
「そうなのか?私の幻惑が効かんのか?申してみよ。あと、この部屋では元の姿でいよ。命令じゃ!」
「はぁ。」
遥は指輪を外すと鞄にしまった。
ラセツは元のエルフの姿に戻っていた。
「堅苦しいのは抜きじゃ。ラセツには勇者の召喚の儀式をしてもらいたい。若手に任せておったのだが如何様にもいかんくてなぁ。」
「それは無理がございますよ。勇者の召喚は4人が限度。今、この世界にすでに4人揃っているからのぅ」
少女の姿のロザリア陛下は身を乗り出すと机に突っ伏した。
「にゃんじゃと!それはまことか!先を越されてしまったか~どうにかならんかのう?スズシローこのままでは国の威厳が問われるのじゃ。そうじゃなくても私は先祖帰りで人族出はないというのに・・・」
「そこで、こちらにもお話がございます。この者はエスタニア王国で召喚された勇者です。しかし、ある事情から命を狙われております。ですからこちらで保護をしていただきたい。勿論、わたしもその見返りにこの国の為なら微力ながら力を貸しますぞ?」
「詳しく話せ。」
それから今まであったことを話し出した。
ラセツが順序よく時系列に並べて話すので分かりやすく伝わっていた。
「それはまことの事か?嘘いつわりないと言えるのか?」
「はい。事実です。」
全てを聞き終わったあとでロザリア陛下は考え込んでいた。
それもそうだろう、今から他の国を騙すのだから・・・。
「魔法の誓いを立てられるか?」
いきなり聞いてきた事に迷いながら真意を聞いてみた。
「魔法の誓いとは?」
横でラセツが言葉を付け加えた。
「魔法の誓いとは、お互いに嘘偽りが無いことを証明するために契約を結ぶ魔法じゃ。発動した状態で偽りを述べると心臓に杭が刺さるというシンプルな魔法じゃ。お互いが同意していないと発動できない魔法だから大事な契約などで用いられるんじゃが。」
「そういうことですか。では、なおのこと魔法の誓いをやってもらっても構いません。それで信じてもらえるのなら!」
まっすぐに見つめる目を見てロザリア陛下は確信した。
そして自分の腹も決まったのである。
「分かった。スズシロの作戦を決行する。フリーゼ、紙とペンをもって参れ。それと牢獄の囚人も二人ほど見繕って来てくれ」
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